第148話

「ど、如何するだぎゃー?」

「藤吉郎様、山科様に頼んでみられては?」

「半兵衛には何か良い案を出して欲しいがー」

「無理言いますね・・・訛ってますよ」

「・・・半兵衛には良い案を出して欲しい・・・で御座る?」

「はぁ~・・・いい案も何も山科様にお願いするより無いのでは?」

「そ、それは・・・」


雲の上の様な人物にお願い?・・・無理じゃ・・・半兵衛に代理で山科様に願い出て貰おうとしたが、「それこそご自分でお願いしないと失礼に当たりますよ」と諭された・・・

そうよな~お願いするより無いが・・・改めて考えると長さんを訪ねる際は平気だったのに、山科様を訪ねるとなると恐れ多い。

しかし、主からの命じゃし・・・

諦めて山科様にお会いする為に使者を出すと、快くお受け頂けた。


「お、お初にお目に、か、か、か、かかり、ます・・・」

「おほほほほ~良い良い、堅苦しくしなくても良いでおじゃるぞ」

「ははー!!せ、せ、せ、拙者、お、お、お、織田、かずちゃの介・・・」


あ・・・噛んでしもうた・・・


「おほほほほ~織田殿の所の木下殿でおじゃろう?」

「え?オラの事をお知りぎゃー?」


近衛関白様はオラの事をお知りであったがー。

山科様のお宅に伺うと、直ぐに例の庵に通された。

山科様は前回、オラが庵を大層褒めてお茶もうみゃ~うみゃ~言うたことを大層喜ばれ、またここに連れて来て下された。

中に入れば・・・偉そうなお方が・・・多分、お偉い方だろうが、初めてお会いするので何方どなたか知らぬ。

それを察した山科様が近衛関白様だと教えてくださった。

近衛関白様は近衛殿下とお呼びすることを赦された。

恐れ多いと思うたが、「長の友ならばよいでおじゃる」と言われた。


「して、今回は何か願いがあると?」

「実は・・・」


主、上総介様が話題のこの庵で茶を飲みたいと希望している旨を伝えた。

この庵での茶をどれだけ渇望しているかを大げさに伝えたのは仕方ないこと・・・

上総介様がどれ程の気持ちで所望されたかは知らぬが、少し大げさに言い過ぎたか?

言ってしまったものは仕方なし・・・

山科様は大層嬉しそうじゃ。

近衛殿下も「ここは良いでおじゃるからの~」と頷かれる。

かくして、山科様から了承を頂いた!!


「猿(藤吉郎)でかした!!」

「上総介様の為で御座います。この藤吉郎、火の中水の中、どんな困難であろうと乗り越えてご覧に入れます!!」

「ぐわはははは~言いよるの~猿(藤吉郎)」


願いの叶った上総介様は上機嫌である。

しかし、ここから続く波乱の出来事が待っていようとは・・・


★~~~~~~★


長より便りが届いた。

内容は父親の隠居を機に家督を相続したので相良家に仕えることとなったそうな。

大社の創建には京に戻って来れぬので全ての事を儂に任せると言う委任状であった。


「残念なことじゃ・・・」


もしもの時の為にと真里皇女様の御髪を一束預かっている。

何でも真里皇女様の亡くなられた際に長の夢枕に摩利支天様が現れて色々ご指示されたとの事じゃ。

その一つが、御髪を摩利支天様の像の中に封ずるようにとの事じゃ。


「来れぬ理由は相分かった」

「はっ!」

「長たちには暇を見てまた京に来るように伝えておくれ」

「はい、蔵人様にお伝えさせて頂きますが、文を預かる事も出来ますが?」

「そうよな~・・・今回は良い」

「では、早速、戻りましてお伝えさせて頂きます」


長の使いの藤林の者は急ぎまた長の下に戻ると言う。

近衛殿下にも・・・いや、主上にもお伝えせねばならぬな。

残念ではあるが、仕えたばかりでまた国元を離れるのはの~

長の文には向こうにも大社が建ち並び、その一つの社に真里皇女様を安置したと言う。

来年の創建を目指して、今、造営中との事じゃ。

そして、創建後に直ぐに春麗たちと夫婦になることを神前にて誓うと言う。

う~む・・・義理とは言え娘とした春麗や他の娘たち、また、長の祝いに駆け付けたいものじゃが・・・

何か良い案を考えようぞ。

しかし、来年か・・・こちらの創建も来年となる予定じゃ・・・うまく時期が被らねば下向するもありじゃな。

近衛殿下にもお伝えしておかねばなるまいて。

そんな折に先日訪ねて来た織田の木下殿が「お願いの儀がありお会いしたし」とのこと・・・何であろうか?

近衛殿下にお話しすると詳しく聞きたいと言われ、また我が宅に来られると言う。

お目当ては「真里支天庵」での茶であろう。

しかし、今日は織田の木下殿が来訪するのでお断りを入れたが、「麿の事は床の間の掛け軸とでも思うて話しておじゃれ」と言って聞く耳を持って頂けぬ・・・諦めて木下殿を待つ・・・

木下殿に殿下を紹介する。


「こちら近衛関白殿下じゃ」

「麿の事は気にせずと良いと言うたでおじゃろう?」

「殿下・・・そう言う訳には・・・」

「そう言う者でおじゃる」


可哀想に、木下殿は岩の様に固まり、慌てておる・・・


「お、お初にお目に、か、か、か、かかり、ます・・・」

「おほほほほ~良い良い、堅苦しくしなくても良いでおじゃるぞ」

「ははー!!せ、せ、せ、拙者、お、お、お、織田、かずちゃの介・・・」


可哀想に・・・殿下を咎めるように見やると、殿下も悪いと思われたようで、話を進める為にも木下殿を落ち着かせるようにゆっきりとお話になった。


「おほほほほ~織田殿の所の木下殿でおじゃろう?」

「え?オラの事をお知りぎゃー?」


少しすると木下殿も落ち着いた様で、普通に話すことが出来るようになった。

聞けば、織田殿もこの庵のことを聞き、是非とも伺いたいと言う。

木下殿曰く、織田殿のこの庵に対する並々ならぬ入れ込み具合は相当なものであるようだ。

悪い気はせぬな。

自慢の我が庵にておもてなしをしようぞ!!


〇~~~~~~〇


信長の無理難題をお猿(藤吉郎)さんはなんとか解決しました!!

さて、以前から語っておりましたが、次なる主要人物は木下藤吉郎こと秀吉です。

秀吉とはどんな人物と言われるか?

秀吉の人物評でよく耳にするのはではないでしょうか?

江戸時代の庶民には「太閤記」や「絵本太閤記」で陽気な人・忠義の人というイメージが浸透していたようですが、幕府側は秀吉のことをあまりよく思っていなかったようです。

まぁ事実として徳川家康は最終的に下剋上をした上に元主である主家の豊臣家を滅ぼした訳ですから色々と幕府側の事情があるのでしょう。

幕府側の学者として有名な新井白石の「読史余論」という書物があります。

その中では秀吉が出世して天下人になれたのは単に運がよかっただけだと書かれているそうです。

そう、運が良いのは間違いありません!!

運が無いと武士でも無かった者が関白になど成れません!!

しかし、で天下人・・・それは無いですね~

また、幕府の公式書の書物でも秀吉の人たらしで陽気な性格は全て計算で、上司に取り入るために陽気なキャラクターを演じていたと批判しているそうです。

まぁ天下取った人物だから裏の顔もあるし馬鹿ではないでしょうから頷けますけど・・・運だけじゃなかったの?本当に露骨ですね~

しかし、幕末になると尊王攘夷思想の原点と言われる水戸学と呼ばれるものがありますが、その中で秀吉が勤王家として称賛されるようになったそうです。

日本帝国時代も秀吉の朝鮮出兵が明と言う大国に喧嘩を売り海外に日本の武威を見せつけたとしてさらに評価を上げたそうです。

しかし、しかし、現代になって来ると「侵略戦争は駄目」とか言う論調が強いので秀吉への評価としては褒められなくなったようです。

本当に時代が変わると評価ってコロコロ変わるな~と言う一例ですね。

大河ドラマ『軍師〇兵衛』・『真〇丸』・『麒〇が来る』などの作品の中では秀吉は悪人の様な表現がなされています。

さて、某放送局が今度は豊臣兄弟を主人公の作品を手掛けるそうですが・・・

主役だから悪くは描かないのかな?

出来れば何度もやっている秀吉でなく立花宗茂とか加藤清正とか島津兄弟とかして欲しいのですが、朝鮮半島で大暴れした人々は本当に大河ドラマとはご縁がないようですね。

日本の公共放送局なのに変に他国に遠慮するってのが・・・特に批判したい訳では無いですが、歴史好きな者として、「解せぬ!!」です。

変な脚色しなければ、事実を事実として描けば批判されないんじゃないの?と思いますけどね。

事実を変に批判すること自体がおかしいんですがする人もいますから・・・難しいのかな?

まぁ何にしても時代で評価基準がここまで大きく変わる天下人は本当に珍しいので実に面白い人物の一人ですね。

今回はバリバリの私見全開のうんちくコーナーでした。

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