第312話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート24
⭐️ルシス視点に戻ります
私は魔力探知でわかったことがある。この結界で守られた『ヘリオポリス島』は、直径3kmほどの大きさである。そして、『ヘリオポリス島』の上空には、直径5mくらいの結界が張られていないスペースがあることがわかったのである。この僅かな穴が『ヘリオポリス島』の出入り口になっている。
私はゲリを連れて、『ヘリオポリス島』に潜入することに成功した。
「お姉ちゃんの香りがするのだぁ」
ゲリはお姉ちゃんの香りを察知して、嬉しくて興奮してペットバックの中で暴れ回る。
「ゲリちゃん、どこにフレキさんはいるの?」
「あっちなのだぁ」
ゲリは、ペットバック中で東の方向へ走り出した。
「東の方なのね」
「うん」
私はゲリがペットバックの中で動き出す方向を頼りに、フレキの居場所を探した。
「お姉ちゃーーーーん」
地面に倒れている白い美しい狼と2人の人物を私は発見した。
ゲリの反応からして、倒れている美しい狼がフレキで、2人の人物がフレキを連れ去った竜騎士であると私は判断した。
「すぐに助けに行きます」
私は、竜騎士の前に颯爽と舞い降りた。
「お前は・・・神人かぁ!」
私の美しい白い翼と、神々しい二本のツノ、そして、天使のような可愛らしい顔を見たテフヌトは私のことを神人と勘違いした。
神人とは、天界に住む神に能力を与えられた種族である。この異世界には天界、魔界、人界という三つの世界が存在する。
「違います!!!」
天界と魔界はライバル関係である。なので、神人と間違えられて私はご立腹なのである。
「お姉ちゃーーーん」
ゲリはペットボックスから飛び出して、人型に変身してフレキの元へ駆け寄る。
「お前らはウルフキングの仲間なのか?」
ゲリの行動を見たイシスが声を荒げながら言った。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
ゲリはイシスの相手などする暇はない。必死にフレキに声をかける。
「ゲリちゃん、フレキさんは魔力を消耗して、倒れたみたいです。私が魔力を回復してあげます」
『リフレッシュ』
私は回復魔法を使った。
フレキの体が白く包まれて、みるみると魔力が戻ってくる。フレキほどの魔力の持ち主の魔力をすぐに回復させる魔法など、人界には存在しない。しかし、私には7大天使様ラファエル様から授かった『治癒の能力』がある。この『治癒の能力』を持っている私に出来ない治癒などないのである。
フレキが体がゆっくりと動き出す。
「俺たちを無視するな」
テフヌトとイシスは私たちに存在を無視されて、イラついていた。
フレキがゆっくりと立ち上がった。
「もう魔力が戻ったのですね」
フレキは静かに言った。
「お姉ちゃーーん」
ゲリはフレキに抱きついた。
「あなたは、誰なのかしら?」
フレキには以前の記憶はない。なので、ゲリが誰なのかわからない。
「こいつらは神人ではなさそうだな」
「ああ、ウルフキングの仲間であろう」
「どうやって、この結界のある『ヘリオポリス島』に忍び込めたのかわからないが、少し懲らしめてやらないとな!」
「そうだな。俺たちの無視したことを後悔させてやる」
テフヌトは光り輝く剣を抜いて、大きく振りかざした。そして、ゲリの背中を切り裂いた・・・
『ポキン』
光り輝く剣の折れる音がした。
「お姉ちゃん、ゲリだよ。妹のゲリだよ」
ゲリは必死に叫ぶ。
「ごめんなさい。私には昔の記憶がないのです。あなたは私の妹なのですか?」
「うん。妹なのだぁ」
「フレキさん、ゲリはあなたの本当の妹です」
「そうなのですか。私を探しに来てくれたのですか」
「うん」
ゲリはとても嬉しそうに笑った。
「なんだ・・・コイツは!俺のドラゴンソードが折れてしまったぞ」
「テフヌト、きちんと剣の手入れはしていたのか?」
「いや、最近疎かにしていた・・・」
「剣が錆びていたのだろう。俺が代わりにアイツを串刺しにしてやる」
イシスは大きな槍を構えて、ゲリに突き刺した。
「ポキ」
大きな槍が折れる音がした。
「ありがとうございます。私には以前の記憶はありませんが、私を探しにこんなところまで来てくれるなんて、とても嬉しいです。しかし、ここはどこなのでしょうか?」
「フレキさんは、竜騎士に連れ去られて、浮遊島『ヘリオポリス島』に連れてこられたのです。どのような理由で連れてこられたかはわかりません」
「そうなのですね。私はラードーンとの戦いで魔力を消耗しすぎて、王の森で倒れてしまったのです。もしかして、私の魔力を回復してくれたのは、あなたなのですか?」
「はいそうです。私は『ラストパサー』という冒険者をしているルシスです。詳しいことは今は言えませんが、ゲリちゃんとは友達なので、一緒にフレキさんを探していたのです。フレキさんと見つけた時、魔力不足で倒れていたので、魔力を回復しておきました」
「俺の・・・火龍のドラゴンランスが折れるなんて!」
イシスは膝をついてうなだれる。
「お前も槍の手入れを怠っていたのだな!」
ニヤニヤしながらテフヌトは言った。
「俺はお前とは違う。この大事な火龍のドラゴンランスは、毎日手入れを怠ったことはない」
イシスは地面にコブシを叩きつけながら言った。
「手入れのし過ぎで、耐久値が落ちたのではないのか?何事もほどほどにしないと、どんな優れた武器でも、肝心な時に役に立たなくなるぞ」
テフヌトは勝ち誇ったかのように述べた。
「手入れをしないよりかマシだ!」
イシスがキレた。
「お前のしょぼい槍は、結局折れているではないか!俺の手入れを非難する暇があったら、もっとマシな武器を持ってくるのだな」
テフヌトは煽るように言った。
「俺に喧嘩を売っているのか!」
イシスは声を荒げる。
「喧嘩を売っているのはお前の方だろ!」
テフヌトとイシスは険悪な雰囲気になるのであった。
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