第449話 スカンディナビア帝国編 パート37
「ヴァリさん起きてくだい」
私はヴァリの体を揺すってヴァリの意識を覚まさせようとした。しかし、どんなに揺さぶってもヴァリの意識は戻らない。
「早く目を覚ますのです」
『ナックル・ピストン・グランドビンタ』
小ルシス2号は、ヴァリの頬にペチペチと往復ビンタを始めた。するとヴァリの目がうっすらと開き始めた。
「ここは・・・天国なのか?」
たくさんの悪事を起こしておきながら都合の良い発言をするヴァリ。
「やっと目を覚ましたのですね。ここは天国ではありません。ここはパステックの町の門の前です」
「へ・・へ・・ヘカトンケイルはどこにいるのだ!」
ヴァリは体を震わせながらヘカトンケイルの名を叫ぶ。
「ヘカさんはソイビーンの町へ向かいました」
「なぜ、ソイビーンの町へ行ったのだ???」
「それは、ルシスお姉様の命令に従ったのです。それよりも、あなたの先ほどからのルシスお姉様への態度は何なのですか?あなたの命はルシスお姉様の気持ち次第でどうにでもなるのです。あなたがロキさんの親でなければ、私がすぐにでもあなたをタコ殴りにしてやりたいところです。あなたはそれほどの過ちを犯したのです」
「もしかして・・・あなた様がヘカトンケイルが言っていた魔王様なのですか」
ヴァリの震えはさらに増して、まともに立つことさえできなくなっている。
「私は偉大なる魔王様ではありませんが、ヘカさんは私の指示に従ってあなたを拘束してくれました。あなたは『スカンディナビア帝国』に混乱を招き無駄な血をたくさん流させました。あなたをどのように扱うのかはロキお姉ちゃんにお任せいたしますので、しばらくはおとなしくしていてください」
「あなたが、ヘカトンケイルを更生させて私たちを救ってくれたのですか」
パステックの町の門からトールさんの兄であるモージが姿を見せた。髪の色は栗色でトールさんとは違うが、顔達はそっくりなのですぐにトールさん兄であることはわかった。
「そうです。私がヘカさんに指示を出しました」
「ありがとうございます。あなたのおかげで私たちは殺されずにすみました」
「いえ、気にしないでください。あなたはトールお姉ちゃんのお兄様のモージさんですか?」
「はいそうです。私はトールの兄のモージです。トールは無事なのですか?」
「トールお姉ちゃんは無事です。もう時期パステックの町へ訪れる予定です」
「それはよかったです。ところで、あなた様は何者なのですか?巨人族を従えるなんて只者ではないと思いますが・・・」
「私はただの冒険者です」
「そうですか・・・。あなた様がそうおっしゃるのならばそれ以上は聞かないことにしておきます。トールが戻ってくるまでお城でお待ちいただくと良いと思います。ヴァリもお城の地下牢に閉じ込めておきましょう」
「お願いします」
私は、モージに案内されてスカンディナビア城に向かった。ヴァリはモージと共に来ていた兵士に連行されて地下牢に閉じ込められた。
数時間後・・・
「着きましたわ!」
「サラ、ありがとう」
「サラちゃん。ありがとうね」
「お礼の言葉などいりません。早くチョコチップメロンパンをよこすのよ!」
サラちゃんはお腹が減って少しイライラしている。
「サラ様、ルシスお姉ちゃんは先にスカンディナビア城でお待ちになっています。なのでお城に行けば、すぐにでもチョコチップメロンパンは頂けると思います」
「それを早く言うのよ!」
サラちゃんは人型に変身して、スカンディナビア城に向かって飛んでいった!
「サラ!ちゃんと手続きをしてから町に入れーー」
トールさんは大声で叫ぶがサラちゃんは気にせずに上空から町へ入って行った。
「モージ様!緊急事態です」
顔面蒼白の兵士がモージの元へ駆けつける。
「どうしたのだ!何があったのだ?」
「何者かが、町の門での入場許可を取らずに、この町に潜入して、城内に入らせろと城の前で大暴れしているのです」
「そうか・・・仕方がない私が行って対処しよう」
モージは席から立ち上がり城の門へ向かう準備をする。
「モージ様!大変です。子供の亜人が城の警護兵を薙ぎ倒して城内に侵入しました。『チョコチップメロンパンはどこにあるの』とわけのわからないこと言いながら暴れ回っています。早く逃げたほうが良いかと思います」
「チョコチップメロンパン・・・一体何のことだ?もしかしてヴァリを救出しに来たのか・・」
モージは考えるが答えは出てこない。
「モージさん!申し訳ありません。今お城で騒ぎを起こしているのは私たちの仲間です」
私は小ルシス1号からの報告でサラちゃんがこの城に向かっていることを聞いて、騒ぎが起きないように急いでサラちゃんのところへ駆けつけるつもりが、少し出遅れてしまったみたいである。
「チョコチップメロンパンとはルシス様のことだったのですね」
少し間違った解釈をしているモージであるが、今はサラちゃんを止めることが先決である。
「詳しいことは後で説明します」
私は急いでサラちゃんの元へ走って行った。
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