第448話 スカンディナビア帝国編 パート36
⭐️ルシス視線に戻ります。
私が王都パステックの門の前に着くと、ヘカトンケイルが門の前で仁王立ちしていた。
「魔王様のお帰りを心よりお待ちしておりました」
ヘカトンケイルは一礼をする。
「ヘカさん、ヴァリは拘束することはできたのですか?」
「はい。魔王様のご命令通りにヴァリは私の手の中で拘束をしております。そして、地下牢に閉じ込められていたアーサソール家の者達を解放いたしました」
「ルシスお姉様の指示通りの役割をこなしたことを褒めて遣わします。今後もルシスお姉様のご指示に歯向かうことなく忠実に動くのです」
小ルシス2号は、腕を組んで上から視線でヘカトンケイルに言い放つ。
「仰せおままに」
ヘカトンケイルは小ルシス2号に向かって跪いた。
「2号ちゃん、勝手なことを言わないの!ヘカさんも私への協力は今回だけでいいのですよ」
「いえ、私は魔王様と共に行動し、魔王様の役に立てるように精進するつもりです」
「そのお気持ちは嬉しいのですが、私は魔王様のような崇高なる人物ではありません。それに私は『ラスパ』の一員であり、あなたを連れて行くことはできません」
「いえ、あなた様は魔王様で間違いありません。私は少しでも魔王様の役に立ちたいと思っていますが、私がついて行くのが邪魔になるのなら同行は諦めますが、私はこれからどうすればよいのでしょうか?」
「うーーーん・・・・うーーーーん」
私は頭を抱えて悩み込む。
「あなたは、辺境の地ソイビーンの町に行って灌漑工事の手伝いをするのです。灌漑工事の下地はルシスお姉様がしてくださったので、後はあなたが完成させるのです」
私が頭を抱えて悩んでいる隙に小ルシス2号がヘカトンケイルに指示を出した。
「仰せのままに」
「あっ・・ヘカさん。灌漑工事を手伝ってくださるならジャイアントさんも一緒に連れて行ってもらえないでしょうか?ジャイアントさんの処分に困っていたのですが、灌漑工事をしてもらうことにしました」
私は、小ルシス2号の案に便乗することにした。ジャイアントをどう処分するか迷っていたので、一石二鳥である。
「魔王様はジャイアントも倒したのですね。流石です!しかし、ジャイアントはわがままで自己中なうえに巨人族で最強の力と体を持っています。私にジャイアントの管理は難しいと思います」
「問題ありません。『ディメンション』の魔法で異空間に閉じ込めて反省させているので、以前のような横暴さはないと思います」
『ディメンションリバース』
空から巨大な黒い手が現れて、ジャイアントをパステックの門の前に放り投げた。『ドスン』という大きな音が町の中心部まで響き渡った。
「・・・」
ジャイアントは借りてきた猫のように大人しく地面に倒れ込んでいる。
「ジャイアントさん、あなたを異空間から解放します」
「あ・・・あ・ああああ」
ジャイアントは上手く言葉を発することができないほど、異空間で教育的指導を受けて、怯えているみたいである。
「ジャイアントさん、あなたの処遇が決まりました。あなたには辺境の地ソイビーンの町で、灌漑工事を任せることにします。あなたは今までにいろんな悪さをしてきたのかもしれませんが、人の役に立ってこれまで行いを反省してください。そして、あなたが持つ強い力をみんなのために奮ってくだい」
「あ・あああ・あああ」
「ルシスお姉様の寛大なる処置に感謝するのです。本来ならあなたは殺されても文句を言える立場ではないのです。さあ!ルシスお姉様への感謝の言葉を述べるのです。それとも、ルシスお姉様の判断に文句でもあるのですか」
小ルシス2号は捲し立てるように早口で言った。
「あ・・ありが・・と・・うございます」
ジャイアントは振り絞るように言葉を発した。
「ジャイアント、今までのお前の身勝手な振る舞いを許してやる。俺たちは魔王様のご指示に従って灌漑工事の手助けをするぞ」
「わ・・・かりました」
ジャイアントはか細い声で答えた。
「魔王様、私はジャイアントを連れて辺境の地ソイビーンの町へ向かいます。少しでも魔王様の力になれるように全力を尽くします。ところで魔王様、私の願いを一つ申し上げてもよいでしょうか?」
「ヘカさん、何か私にして欲しいことがあるのですか?」
「はい。私たち巨人族は神に裏天界から追放され、なおかつ特殊能力も奪われてしまいました。私の悲願は私たちを裏天界から追放したウーラノスへ復讐です。私がウーラノスと戦う時にご協力をお願いしたいのです」
「ウーラノス?」
「はい。ウーラノスは裏天界の王であり、全てを超越した力を持つ最強の神です。ウーラノスと対等に戦えるのは魔王様しかいません。なので、ご協力をお願いしたいのです」
「残念ながら協力することはできません。私はウーラノスがどのような人物か自分の目で判断するまでは協力を約束することはできません。しかし、ウーラノスという神が、処罰に値すると判断した時は喜んで協力をいたします」
「わかりました。魔王様の判断にお任せいたします。では私たちはソイビーン町へ行ってきます」
ヘカトンケイルは、ヴァリを私の前に下ろして、ジャイアントを引き連れてソイビーンの町へ向かった。
ヴァリは、ずっとヘカトンケイルに握りしめられていて、恐怖のあまりに気を失っていた。
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