第447話 スカンディナビア帝国編 パート35


 翌朝。



 「ルシスちゃん!ルシスちゃん!起きて」



 私はカレン様の慌てふためいた声で目を覚ました。



 「カレン様。おはようございます」


 「おはよう。ルシスちゃん・・・って、挨拶をしているどころじゃないのよ」



 カレン様はかなり慌てている様子である。



 「カレン様、そんなに慌ててどうしたのですか?巨人族でも襲ってきたのですか?」


 「そんなレベルじゃないことが起こっているのよ!町の近くに突然湖が出来ているのよ」


 「そんなことですか・・・」


 「そんなこと・・・て・・・やっぱりあの湖はルシスちゃんが作ってくれたのですか?」

 

 「もちろんです。あの程度の湖などルシスお姉様にかかればお茶の子さいさいです。あなた方はルシスお姉様を過小評価しすぎだと思います」



 小ルシス2号は腕を組んで少しキツ目の口調で言い放った。



 「2号ちゃん・・・」


 「いいのよ。2号ちゃんの言う通りだと思います。私たちはルシスちゃんのことを過小評価していたのだと思います。私たちが何年かけてもできなかったことを一夜で成し遂げてしまうなんて、ルシスちゃんは私たちにとっては神様のような存在ですわ」



 カレン様はとても嬉しい表情で言った。



 「違います。私は魔王様のような慈悲深い方に憧れているのです。決して神のような存在ではないのです」



 私は激しい口調で言ってしまった。



 「・・・そうですね。魔王様のような存在ですわ」




 私が怒っているのを察知したカレン様は少し戸惑っていたが、すぐに神から魔王様に訂正した。



 「はい。そう言ってもらえると嬉しいです」



 私はとてもにこやかな顔になり、満面の笑みを浮かべていた。



 「ルシスちゃん、本当にありがとうございます。これで、この町の住人達も貧しい暮らしから抜け出すことができます。今まで住人達には苦しい思いばかりさせていたので本当に嬉しいです」



 カレン様は、自分が苦労したことよりも、住人達に苦労をかけたことを本当に申し訳なく思っていたのである。



 「カレン様、誰も苦労をしたとは思っていません。私も含めてこの町に住む者達は、みんなパドロット家の崇高なる思いに感銘を受けて、移住をして来た者も多いのです。みんなカレン様と一緒にこの町を豊かにしたいと望んでいるのです」



 カレン様の護衛の兵士の頬に涙をスッと浮かべながら言った。



 「ありがとう。その様に言ってもらえたら私は嬉しいですわ」


 「この町はとてもいい町ですね。皆さんの気持ちが一つになっています」


 「そうですね。私もこの町が大好きですわ。ルシスちゃんが作ってくれた湖で、さらに緑地化を進めて行くわ!」


 「頑張ってください」

 

 

 こうして、水源が確保されたことにより、町での水利用の制限は無くなった。しかし、完全な緑地化をするには、まだまだ時間はかかりそうである。私が手助けをすればすぐに解決するのだが、今回の手助けはここまでにすることにした。



 「私は、王都パステックに戻ります。もし何か協力して欲しいことがあれば言ってください」


 「ありがとう。ルシスちゃん。でも、私たちの力でできることは私たちがやるべきことだと思うわ。でも、どうしても、できないことがあればルシスちゃんの力を借りることにするわ」



 私はカレン様に別れを告げて王都パステックに向かった。




 ⭐️ロキさん達に場面は変わります。




 「サラちゃん、お願いできるかしら?」


 「ルシスちゃんはいないのね?」


 「ルシスお姉ちゃんはソイビーンの町へ行っています。何かルシスお姉ちゃんに用があるのでしたら、私が連絡を取ることができます」



 小ルシス1号がサラちゃんに声をかける。



 「それは助かるわ。チョコチップメロンパンを用意するように言ってくれるかしら?チョコチップメロンパンを用意してくれるなら、どこでも運んであげるわ」


 「わかりました。すぐに連絡を取ります」


 「待ってください。私のお酒も用意してくださるように伝えてください」



 イフリートは便乗を図る。



 「イフリートのお酒なんてどうでもいいわ」



 サラちゃんが冷たい言葉で言い放った。



 「そんな・・・」



 イフリートがそんなの虜になる。



 「イフリートさんの要望を伝えておきます」


 

 イフリートはそんなの虜にならずに済んだ。




 「サラ様、イフリートさん、ルシスお姉ちゃんの許可を取ることができました。ルシスお姉ちゃんも王都パステックに向かっているので、王都で約束の品を渡すと言うことです。それと、カレン様も無事で問題はないとこです」



 私は当初の目的を忘れて、カレン様の安否報告を怠っていた。お風呂の件で夢中ですっかりと忘れていたのである。小ルシス1号からサラちゃんの件で連絡があって、そこでやっと思い出したのである。


 ロキさん達はサラちゃんに乗せてもらって王都へ向かった。サラちゃんに乗せてもらえないビューレストと兵士たちは、馬を走らせて王都へ向かうのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る