第446話 スカンディナビア帝国編 パート34


 私はカレン様の家のお風呂でのんびりして時間を過ごした。小ルシス2号は、私の頭の上で湯船を睨みつけながらオドオドとしていた。




 「さっぱりしました」



 私は、収納ボックスからコーヒー牛乳を出して、風呂上がりの一杯を飲みながらいい気分に浸っていた。



 「私にもコーヒー牛乳をください」


 「2号ちゃん。コーヒー牛乳はお風呂上がりに飲むからとても美味しいのです。2号ちゃんはお風呂に入らなかったから、コーヒー牛乳をあげるわけにはいきせん」


 「私も欲しいです。欲しいです」


 

 小ルシス2号は私の頭の上でくるくると回りながら駄々をこねる。小ルシス2号はゴーレムなので水分補給する必要もないが、私と同じことをしたいのである。



 「お風呂に入ったらコーヒー牛乳をあげます」



 小ルシス2号がお風呂に入りたいと駄々をこねたから宿屋での宿泊を諦めて、夜分遅くに無理を言ってカレン様の家に泊めてもらうことになったのである。なので、小ルシス2号がお風呂に入らないとコーヒー牛乳をあげないと私は硬く決心をしたのである。



 「ルシスお姉様の意地悪!」



 小ルシス2号は私の頭をポコポコと殴りつける。



 「2号ちゃん。やめなさい」


 「コーヒー牛乳を下さるまでやめません」



 私と小ルシス2号のくだらない争いが勃発してしまった。



 「ルシスちゃん!?何があったのですか?」



 私と小ルシス2号のいい争いを聞いて、何が起こったのか気になったカレン様が脱衣所までやってきた。



 「2号ちゃんがわがままばかり言うので、説教をしているのです」



 私は頬を膨らませて顔を真っ赤にしてプンプン顔になっている。



 「ルシスお姉様が私に意地悪をするのです。カレン様助けてください」



 小ルシス2号は涙を流しながらカレン様の胸元に飛んで行った。



 「ルシスちゃん・・・何があったのかわかりませんが、こんな小さな子を泣かしたらダメでしょ。ルシスちゃんはお姉さんなのだから、2号ちゃんのわがままも少しは大目見てあげるのもいいかもしれませんわ」



 小ルシス2号は、カレン様に抱かれながら、私の方を見て舌をぺろっと出した。私はその姿を見て、ついカッとなってカレン様に言い訳をする。



 「でも、2号ちゃんはお風呂に入りたいと言ったのに、いざ、カレン様の家のお風呂に入ろとしたら、湯船が深すぎるから嫌だとわがままを言うのです」


 「確かに2号ちゃんの身長では深すぎるかもしれませんわ。2号ちゃん用にタライか何か用意すればよかったわね。私の配慮が欠けていましたわ。2号ちゃん、ごめんなさいね!」



 カレン様は小ルシス2号の頭を撫でながら謝った。



 「気にしてないのでいいのです。ルシスお姉様にもそのくらいの配慮を持ってくれたらよかったのです」



 小ルシス2号はニヤニヤとニヤけながら私を見ている。



 「2号ちゃん!なんですかその態度は」



 私は少し冷静さが欠けて怒鳴ってしまった。



 「エーーン・エーーン。ルシスお姉様が怖いです」


 「ルシスちゃん。2号ちゃんの態度もよろしくはないと思いますが、あまり怒鳴りつけるようなことはしないほうがいいと思いますわ。2号ちゃんが怖がっていますわ」



 小ルシス2号は明らかに嘘泣きをしている。しかし、なんで小ルシス2号はこんなわがままになったのだろう・・・あ・・・これは私が前世でお姉ちゃんと喧嘩した時に構図に似ている。


 私はこの異世界に転移する前は3つ上の姉がいた。姉とは子供頃はよく喧嘩をしたが、3歳離れた姉に喧嘩で勝てることはなく、いつもお母さんに泣きついて助けてもらっていた。姉との喧嘩の原因は些細なことが多かったが、大抵は私がわがままを言って姉を困らせて怒らせていたのである。



 「ルシスちゃん・・・どうしたの?」



 私は前世での家族のことを思い出して、少し寂しくなった。私は異世界に転生して、いろいろと忙しかったので、前世のことを思い出すことは全然なかったのである。



 「なんでもないです。カレン様の言う通り私はお姉さんなのに、しかっりとしていないのがいけなかったのです。2号ちゃん、意地悪をしてごめんなさい。コーヒー牛乳を一緒に飲みましょう」


 「ルシスお姉様は悪くないのです。私がわがままを言って困らせたのです。ルシスお姉様ごめんなさい」



 小ルシス2号は私のそばに飛んできて涙を流しながら謝った。



 「2号ちゃん・・・気にしなくてもいいのよ。私はお姉さんだからしっかりとしないといけないのよ。だからわがままを言っても構わないのよ」



 私は泣いている小ルシス2号は強く抱きしめた。私はお姉ちゃんとたくさん喧嘩もしたけど、とても仲の良い姉妹だった。私は少しお姉ちゃんの気持ちがわかったような気がした。



 「仲直りでできてよかったわね。もう時間も遅いし寝たらいいと思うわ」



その夜は、私は小ルシス2号と手を繋いで一緒に寝ることにした。小ルシス2号には睡眠は必要ないが、私の横で嬉しそうな笑顔を浮かべて眠るのであった。


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