第445話 スカンディナビア帝国編 パート33


 カレン様の家は平民の家より少し大きい家だが、他の貴族の屋敷のような広さや華やかさはない。そもそもソイビーンの町に住んでいる住民達は、お世辞にも裕福とは言えない環境で過ごしているのである。しかし、カレン様の人柄に心を打たれている住人達ばかりなので、誰も貧しい生活に文句を言うものはいない。



 「これはルシス様、何かカレン様に用事でもあるのですか?」



 カレン様の家を訪れると、家の前に護衛の兵士が2名在住していた。



 「カレン様に、お願いしたいことがあるので、家まで来てしまいました」


 「ルシス様は丁重に扱うようにカレン様から伺っていますので、今すぐカレン様を呼んで参ります」





 「あら、ルシスちゃんどうしたのかしら?何か急用でもできたのかしら?」


  

 カレン様はすぐに家の門まで来てくださった。



 「実は・・・申し上げにくいのですが、2号ちゃんがどうしてもお風呂に入りたいと言っているので、家に泊めてもらってもよろしいでしょうか?」


 「もちろん大歓迎よ!主人も息子2人も灌漑工事で長期間留守にしているので、私1人で寂しかったのよ」



 カレン様の夫であるジオルド・バドロット公爵は、領主として事務的な役割を全てカレン様に任せて、自分は灌漑工事の現場に立ち、息子2人を連れて緑地化計画のために死力を尽くしているのである。



 「2号ちゃんお風呂に入れるわよ!」



 小ルシス2号は、先ほど地面に潜ったので泥だらけである。



 「それは助かります。しかし、私ほどの大きさの者が入れるお風呂を、この荒屋で用意できるのでしょうか・・・」


 「2号ちゃん!失礼なことを言わないで」


 「いいのよ、ルシスちゃん。見た目はよくない家かもしれませんが、贅対品はないけど生活するには十分な設備は整っていますわ。お風呂も2号ちゃんなら快適に過ごせるだけのスペースはありますわ。質素な家ですが、今日はゆっくりと休んでいってね」



 カレン様はニコリと笑って答えた。



 「モゴ・モゴ・モゴ」



 私は何か喋ろうとしている小ルシス2号の口を塞いだ。



 「カレン様ありがとうございます。お言葉に甘えて今日は泊まらせていただきます」


 「モゴ・モゴ・モゴ」



 必死で小ルシス2号は喋ろうとするが、私は必死に口を抑え余計な事を喋らさせないようにした。


 私はカレン様に案内されて家の中にお邪魔した。確かに、必要最低限な物しか置いていなくて、シンプルな家であった。家は二階建てで一階にはキッチンと少し広めのリビング、お風呂、そして部屋が1つあった。2階には3つ部屋がり寝室と兄弟の部屋らしい。私は1階の部屋を使用しても良いとのことだった。私は小ルシス2号を連れてすぐに部屋に入った。



 「2号ちゃん!失礼なことを言ってはいけません」



 私は小ルシス2号を説教する。



 「私は失礼なことなど言ってはいません。自分の思ったことを素直に述べただけです」


 

 小ルシス2号には悪意はない。ただ思ったことを素直に言っただけである。しかし、思ったことをそのまま述べるのは、悪意はなくても人を傷つける恐れがあるので、慎重に言葉を選ばないといけないと、私は小ルシス2号に説明した。



 「わかりましたルシスお姉様。相手の気持ちなどを配慮して言葉を選ぶように今後気をつけます」


 「わかってくれてよかったわ」



 私は少しホッとした。



 「ルシスちゃん。お食事は済ませてきたのかな?もし何も食べていないのなら何か用意しましょうか?」


 

 カレン様は台所の方から声をかける。



 「大丈夫です。お風呂だけ使用させてもらいます」



 私は収納ボックスにたくさんの食料の保存があるので、それを食べることにした。家に泊めてもらいお風呂も利用させてもらっているので、それ以上何かをしてもらうのは悪いと思い遠慮したのである。



 「わかったわ。お風呂の準備はできたので先に入ってもらってもいいわよ」


 「はい。わかりました。お言葉に甘えて先に入らせてもらいます」



 私は泥だらけの小ルシス2号を連れてお風呂場に向かった。小ルシス2号はお風呂に入ると言っていたが、私の魔法で衣服も体を綺麗に戻るので、風呂に入る必要はないである。しかし、小ルシス2号はお風呂に興味を持ったのであろうと私は思っていた。



 「2号ちゃん、お風呂に入りましょう」


 「・・・こんな深いお湯の中に入るなんてできません」



 浴槽の深さは50cmくらいである。私からしたらそんなに深くは感じないのだが、小ルシス2号の身長は10cm程なので、自分の身長の5倍の深さがあるので、お風呂に入るの躊躇しているのである。



 「2号ちゃんがお風呂に入りたいと言うから、カレン様に無理を言って家に泊めてもらったのですよ。私が湯船に沈まないように支えてあげますから、一緒にお風呂に入りましょう」


 「嫌です。もうお風呂はいいです。魔法で汚れを落としてください」



 小ルシス2号は涙目で訴える。



 「わかったわ。私は1人で入るわね」


 


 結局小ルシス2号はお風呂に入らずに私の頭の上で寝転がっていた。


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