第450話 スカンディナビア帝国編 パート38


 「チョコチップメロパンをどこにあるのよ」



 サラちゃんを止めに入る兵士をサラちゃんは次々と放り投げて行く。



 「誰かあの子を止めてくれ!このままだとモージ様に危険が及ぶぞ!」



 これまでにいろんなことが起こっているで城の兵士は最小限しかいない。なので、城内はかなり混乱している。中にはまた争いが起こると感じて逃げ出す者もいる。



 「サラちゃん!チョコチップメロンパンならここにあるわよ」



 私はサラちゃんを見つけ出して、サラちゃん目掛けてチョコチップメロンパンを投げつけた。



 「愛しのチョコチップメロンパンだわ」



 サラちゃんは勢いよくジャンプして、チョコチップメロンパンにかぶりついた。



 「これよ。このサクサクした食感の中から、時折顔を出す甘いチョコチップが絶品なのよ」



 サラちゃんはニコニコと嬉しそうに笑いながらチョコチップメロンパンを食べている。



 「チョコチップメロンパンとはパンのことでしかた・・・」



 私の後をつけてきたモージがつぶやいた。



 「ルシスちゃん。今回は4人も運んできたのよ。チョコチップメロンパン一個では納得がいきませんわ」



 サラちゃんの瞳は燃え上がる炎のように赤く輝いている。もし私がここでチョコチップメロンパンの追加を拒めば、『スカンディナビア城』は炎の海に飲み込まれてしまうだろう。



 「サラちゃん、残りのチョコチップメロンパンは3つしかないのでこれで我慢してください」


 「3つしかないのね・・・」



 サラちゃんの燃え上がるような赤い瞳は、今にも鎮火しそうな弱々しい炎に変わった。


 

 「サラちゃん、メロンパン屋『ソンナ』に行けば、チョコチップメロンパンをもっと食べれると思います。サラちゃん用に、チョコチップメロンパンを用意するようにメロに連絡を入れておきますので元気を出してください」



 私は意気消沈したサラちゃんが、どのような行動に出るのか不安になったので、メロンパン屋『ソンナ』に行くことを勧めた。



 「『ソンナ』に行けばいいのね!すぐに向かうわよ」



 サラちゃんの瞳は太陽にように燃え上がり、『スカディナイビア城』の天井を突き破って、サラちゃんは空高く消えて行ってしまった。



 「後で魔法で修復しておきます」



 私はモージに頭を下げる。



 「修復できるのであればお願いします」



 流石にお城に穴を開けたままでは、何かと不便であり危険でもあるので、モージは遠慮なく私の好意を受け入れた。



 「おい!なんだ今の衝撃は!!!」



 トールさんの荒々しい声が響いた。トールさんがスカンディナビア城に戻ってきたみたいである。



 「あら、『スカンディナビア城』には大きな吹き抜けがあるのね。夜になったらお星様が見える素敵な作りになっているのね」



 ポロンさんが、サラちゃんが突き破って出来た吹き抜けを見て、目を輝かせながら言った。



 「革新的なデザインね。『オリュンポス城』に採用するようにネテア王に提案してみるわ」



 薄らと笑みを浮かべながらフレイヤが言った。



 「2人とも冗談はよしてほしいわ。私が城にいた時はこんな吹き抜けなかったわよ。さっきの激しいい衝撃音と何か関係があるはずよ」



 ロキさんが冷静に答える。



 「トール、ロキ、戻ってきたのか・・・」



 モージが2人に声をかける。



 「お!兄貴じゃないか?牢屋に閉じ込められていたのではないのか」


 「お前の冒険者仲間に助けてもらったのだよ」


 「・・・ルシスのことか?そういえばルシスはどこにいるのだ?」



 私は、サラちゃんが『スカンディナビア城』の天井を突き破った原因を作ってしまったので、ロキさん達に怒られると思って、サッと物陰に隠れたのである。



 「さっきまで、そこにいたはずなのだが・・・」



 モージは辺りをキョロキョロを見渡すが、私を見つけ出すことはできない。



 「兄貴、さっきの激しい衝撃音は何だったのだ?」


 「あれは、紫色の髪をした亜人のような子供が、天井を突き破ってこの城から出て行った時の衝撃音だ。ルシスさんといい、あの子供といい、お前の仲間は桁外れの強さを持っているな」


 「紫色の髪の亜人の子供・・・サラのことか!あいつが天井を突き破って出て行ったってことは・・・原因はルシスにあるってことだな」

 「ルシス!何があったのだ。隠れていないで出てこい」



 トールさんが大声で叫ぶ。



 「ルシスお姉様に向かって、なんたる失礼な態度ですか?誰のおかげで無事に解決した思っているのですか?もっとルシスお姉様に敬ってもらわない困ります」



 トールさんの頭の上に小ルシス2号が降りてきた。



 「2号、ルシスはどこに行ったのだ?」


 「底なしご飯おばけ、ルシスではなくルシス大魔王様とお呼びなさい」


 「何をふざけたこと言っているのだ」



 トールさんの頭の上で、腕組みをしている小ルシス2号を、トールさんは捕まえた。



 「無礼者!すぐに離すのです」



 小ルシス2号はバタバタとトールさんの手の中で暴れる。



 「ルシスちゃんどこに行ったの?私たちは別に怒っていませんわ。どうせ、サラちゃんが暴走してお城に穴を開けたのはわかっているのよ。だから、ルシスちゃんは何も悪くないのよ。2号ちゃんの言う通り私たちはルシスちゃんのおかげで、無事にクーデターを解決できたのよ」


 「そうだぜ。俺たちは怒っていないぞ!」


 「本当ですか・・・」




 私は物陰からソッと姿を見せた。



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