第106話 武道大会パート7



 武道大会開催までの時間はまだ余裕があるので、ポロンさんはゆっくりと休むことにした。プリンを食べすぎたお腹の苦しみがまだ残っているのであった。そのため、できるだけ胃を休めて、武闘大会の一回戦に備えて、体を休めないといけないと感じていた。



 武道大会までは色々とイベントが行われていた。バトルロワイヤルが、予定より早く終わったので、いつもは、あまり人気がなかったイベントは注目を浴びているのであった。


 その中で1番注目を浴びているイベントはクイズ大会であった。そのクイズ大会のイベントの優勝者の商品はなんと雷光石であった。



 「イベントB会場のメインイベント、クイズ大会の商品はなんと雷光石です。鬼の島から手に入る貴重な石です。優勝者にはこの雷光石を差し上げます。参加希望の方はこちらへ集まりください」



 「イフリート着いてきなさい。絶対に雷光石を手に入れるのよ」


 「サラマンダー様、残念ながら共闘は無理です。雷光石は私がいただきます」


 

 サラちゃんは、今日もたくさん食べ物があると思って、ポロンさんから呼ばれてもいないのに、勝手に精印から現れたのであった。


 ポロンさんは、また大きな騒動になると思い不安になるが、サラちゃんを止めることは不可能なので諦めることにした。



 「雷光石が欲しいかーーー」


 「もちろんよーーー」



 一際大きい声でサラちゃんが叫ぶ。周りのエルフはざわめきつく。



 「あの、亜人は、昨日の前夜祭のお食事を食べ尽くした人だわ」

 「ほんとだ、なぜ、拘束されていないのだ」

 「王族の関係者らしいぜ、だから、お咎めがないらしいぜ」



 サラちゃんは、昨日の食事を食べ尽くし事件でかなり有名になっていた。アールヴ王のはからいで、罪に問われなかったが、国民たちは納得していないのであった。


 サラちゃんに対して、冷ややかな視線が向けられる。中には直接文句を言う者もいた。



 「お前のせいで、前夜祭が潰れるところだったんだぞ。わかっているのか」



 命知らずのエルフが、サラちゃんに文句を言う。



 「うるさいですわ」



 サラちゃんのワンパンチでエルフは中を舞う・・・・・それを見た他のエルフが急に大人しくなる。



 「あの亜人は、ポロン王女様の冒険者仲間らしいぞ。あのバトルロワイヤルの広場を、火の海にした実力を持っているポロン王女の仲間だからかなりの実力者のはずだ」


 

 サラちゃんが、ワンパンでエルフを吹き飛ばしたので、誰もサラちゃんに文句を言う者はいなくなった。



 「早く、始めるのよ」



 サラちゃんの雷光石に対する凄まじいオーラの前に、エルフ達は恐れおののいて逃げ出してしまい、クイズ大会の参加者は4人になってしまった。



 「他に参加者はいませんか?まだ4名しか参加者はいてません。定員は50名です。どしどし参加してください」


 「早く始めるのよ」


 「私も参加しています。なので5名です」


 「・・・そちらの、火の玉の方も参加でよろしいのでしょうか」


 「もちろんです」


 「早く雷光石を渡すのですわ」


 「優勝したらお渡ししますので・・・他に参加者はいませんか」



 いくら募集をかけても、参加者はサラちゃんにビビって参加しないのであった。



 「時間になりましたので、5名によるクイズ大会を始めたいと思います。クイズを10門お出しますので、わかった方は、手元の札をあげてください。1番早く札を上げた方に答える権利はあります。何度でも答えることができるので、間違えを恐れずに答えてください」


 「わかりましたわ」



 大声でサラちゃんが叫ぶ。イフリートを除く他の3名は、異様な雰囲気に、この場にいることを後悔している。この3名は武道大会の推薦枠に入れなかった、頭脳明晰なダミアン、オーロラの子供達である。


 バトルロワイヤルの参加は、危険なので出場は断念し、クイズ大会で知性があるところを、国民にアピールするために参加しているのである。なので、家族の代表としてクイズ大会に出ているので、逃げることができなかったのであった。



 「あの子、やばくないか」


 「普通じゃないだろ。さっきワンパンチで吹き飛ばされたのは、あのアイザックだろ。身長2m以上あるエルフの巨人と呼ばれ王族の護衛隊長候補だぜ」


 「だから、みんな怖くて参加しなかったのよね」

 

 「そうだ。そして、俺も逃げ出したい・・・」


 「私もよ」


 「俺も」


 

 サラちゃんとイフリートの2人以外は、クイズ大会が始まる前に戦意喪失していた。なので、実質は2人の対決になるのであった。



 「クイズ1問目です。1時になると食べたくなる果物は何でしょう」


 「はーーーーーーーい」



 サラちゃんは、大きな返事をしながら札をあげる。



 「サラ選手答えてください」


 「ブドウですわ。何時でも食べたくなる美味しい果物ですわ」


 「不正解です。それは、あなたが食べたい果物です」



 さっと、イフリートが札をあげる。



 「火の玉選手、答えてください」


 「イチジクです」


 「正解です」


 「おかしいですわ。ブドウだって食べたくなるはずですわ」



 サラちゃんのクレームを無視して、司会者は次の問題を出す。



 「第2問、食事の時にテーブルにお皿を置かないで、食べる物は何でしょう」


 「はーーーーーーーい」



 サラちゃんが大きな返事をしながら札をあげる。



 「サラ選手答えてください」


 「ブドウですわ。皿に置くまで待つことなんて、できませんわ」


 「不正解です。それはあなたが食べたい物です」


 

 イフリートが札をあげる。



 「火の玉選手、答えてください」


 「おかずです」


 「正解です」


 「ブドウは主食でありおかずにもなりますわ。ブドウで正解ですわ」


 司会者は、再度、サラちゃんのクレームを無視する。



 「第3問です。果物のなかで、空手を頑張っている子がいます。さて誰でしょう」


 「はーーーーーーーーい」


 「サラ選手答えてください」


 「ブドウですわ。ブドウがあんなに美味しいのは、日頃の鍛錬の成果だと思いますわ」


 「正解です」


 「当然ですわ。私にわからないことなど、ありませんわ」


 「第4問です。細い枝に、丸い顔がたくさんぶら下がっている果物は何」


 「はーーーーーーーーーーーーーーーーい」



 1問正解して、機嫌を良くしたサラちゃんが、大声で返事しながら札をあげる。



 「サラ選手、答えてください」


 「ブドウですわ。ブドウさん達はみんな仲良しファミリーだから、あんなに美味しいのですわ」


 「正解です」


 



 サラちゃんは、偶然にも2門正解してしまう。しかし他の3名は下を向いたまま一度も答えようとはしない。それは、できるだけサラちゃんに関わらないようにしたいのであった。


 そして、クイズ大会の会場もその空気を感じ取ったのか、早くクイズ大会が終わるのを静かに待つのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る