第107話 武道大会パート8

 


 サラちゃんは、その後もブドウと答え続けたが、もちろん当たることはなく、イフリートが全て答えを当てた。


 「イフリートやるわね。でも最終問題はポイントは10点ですわ。私の逆転のチャンスはありますわ」


 「えっ・・・そんな予定は・・・・」



 司会者は困惑する。



「最終問題は10点ですわーーーーーーーーーー」



 サラちゃんのただならぬ迫力に司会者は、恐れを感じ予定を変更して、最終問題は10点にすることにした。



 「えーーー、最終問題は、皆さんに逆転のチャンスを与えるために、ポイントが10点入ります。では、最終問題です。丸い実がたくさんついています。ジュースやお酒にもなる果物は何」


 「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい」


 「サラ選手答えてください」


 「ブドウですわ。たくさん実があるのはブドウしかありませんわ」


 「正解です。クイズ大会優勝者はサラ選手です」


 「わーーーーい。わーーーーーい。わーーーーーい」


 

 サラちゃんは見事優勝を勝ち取った。そう強引に勝ち取ったのであった。司会者は、サラちゃんがもし優勝しなかったら、とんでもないことになるような気がしたのであった。なので、問題を変更して答えがブドウになるようにしたのであった。


 もちろん観客もそれを瞬時に理解した。なので、盛大な拍手でサラちゃんを褒め称えたのであった。


 サラちゃんは、商品の雷光石を受け取り満足げにしていた。



 「さすが、サラマンダー様です。私が勝つのは無理でした」



 イフリートはとても悔しそうであった。




 サラちゃんが、クイズ大会に出場していた頃、ポロンさんは姉のヘラと一緒に武道大会の控え室にいた。



 「これを食べすぎて、昨日は倒れ込んでいたのね」


 「はい、お姉様、プルプルの食感がたまらないのですわ」


 「本当にすごく美味しいわ。どこで買うことができるのかしら」


 「このプリンは売っていないのです。私の冒険仲間が作ってくれたのです」


 「そうなの。ポロンの仲間には料理人もいるのね」


 「料理人ではないのですが、いろんな料理を作れるうえに、魔法にも詳しい、とても頼りになる仲間です」


 「そうなのね。いい仲間と出会えてよかったね」


 「はい、仲間のおかげで私は強くなることができました」


 「でも、無理はしないでね。ロイドはかなり強いわ。無理だと思ったら棄権するのよ」


 「はい。お姉様」


  

 「ポロン選手試合が始まります。舞台へお越しください」


 「ポロン、頑張ってね」

 

 「はい。お姉様。がんばります」



 ポロンさんの対戦相手は、ダミアンの長男のロイドである。ロイドは、この大会の優勝候補である。姉のヘラと同い年の25歳で、学生時代からその強さは有名であった。


 姉のヘラでさえ、妖精の召喚はまだできないのに、ロイドは、妖精の召喚契約を結ぶことに成功している。妖精の召喚は、かなりの魔力を消費するので1日1回が限度である。


 ポロンさんが、何度もイフリートを召喚しているのは、実は召喚ではない。イフリートが、お酒を貰う為に、自分の意思で現れているので、魔力の消費はないのである。



 「只今より、武道大会1回戦を始めます。第1試合はロイド選手対ポロン選手になります」



 武道大会は、どちらかが降参するか、審判が止めに入るかで勝敗が決まる。会場は、バトルロワイヤルでも使われた円形の広場で行われる。円形の広場には、いくつもの障害物の岩が置かれているので、それを利用して戦闘を有利に進めるのである。


 エルフは、弓が得意な者が多いので接近戦よりも中距離戦がメインの戦いになる。



 「俺は、エルフの王になる男だ。俺の妖精の力でお前を叩き潰す」



 ロイドがポロンさんを挑発する。観客席からは盛大な拍手が起こる。エルフは、美男美女が多いが、ロイドは、その中でもずば抜けて男前なので人気は高い。しかも実力も折り紙付きだ。次の王にはロイドを進める者も多い。



 「カエルの妖精なんて、気持ち悪いので出さないでほしいですわ」



 ロイドの妖精は、カエルの姿をした妖精ウォーターリーパーである。見た目の気持ち悪さは、折り紙付きである。姉のヘラから聞いていたポロンさんは、妖精の能力よりも見た目の気持ち悪さの方が、気になっていたのである。



 「ポロンさん、ウォーターリーパーなど、一瞬で丸焼きにしてあげます。カエルの丸焼きは酒のあてになります」



 ポロンさんの横で小さな火の玉が答える。もちろんイフリートである。大抵の者は、この小さな火の玉が、妖精だとは気づかない。火の魔法を発動しているのと勘違いするのである。


 ロイドも、この小さな火の玉が、妖精だとは気づいていない。



 「第1回戦を開始いたします。両者戦闘態勢に入ってください」



 観客席からは歓声が鳴り響く。ほとんどがロイドの応援である。ポロンさんを応援する者はほとんどいない。それほどロイドが人気があるのである。



 ポロンさんは、舞台から広場に降りる。そして、広場に中央にのほほんと立つ。一方ロイドは、広場に降りて、すぐに障害物の岩に隠れて姿を隠す。


 ロイドは、絶対に負けるわけにはいかない。なので、慎重にポロンさんの出方を見るのであった。ポロンさんは全身にシールドを張ってロイドの攻撃に備える。そして、弓を構えて岩に隠れているロイドに向けて炎の矢を連射した。


 イフリートの力を借りているポロンさんの矢は強大な炎になり、ロイドの隠れている岩を焼き尽くす。



 「なんだ、あの巨大な炎は・・・幻影なのか。いや違うぞ」



 ロイドは瞬時に避けた。避けなけらば、試合は一瞬で終わっていただろう。



 「魔力はまだ残っているのか。午前中にあれほどの魔法を使ったはずなのに・・・仕方がない。ウォーターリーパーを使うか」



 ロイドはウォーターリーパーを召喚した。体長2mほどのヒキガエルが羽をバタつかせて、ロイドの頭上を飛んでいる。


 

 「気持ち悪いのが出てきましたわ」



 ポロンさんは、ウォーターリーパーを見てゾッとしている。



 「美味しそうです」



 一方、イフリートは、ヨダレを垂らしながら見ている。



 「あれ、カエルさんがいなくなりましたわ。姿を消すことができるのかしら」


 「そんな能力はないと思います」


 「ならどこへ行ったの?辺りを見渡してもどこにも見当たらないわ」



 ウォーターリーパーは消えたのではなかった。イフリート見てビビって逃げたのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る