第102話 武道大会パート3
ポロンさんは、武道大会の前夜祭パーティーのお食事を、ほぼ全てサラちゃんが食べ尽くしてしまい、大会の係委員に捕まって、運営事務室に連れて行かれた。
「この子は、前夜祭パーティーの食事を食べ尽くした犯人の仲間です。どうしますか」
「・・・・」
「大会委員長、どうかしましたか」
「そのお方は・・・・」
「大会委員長のお知り合いですか」
「そのお方は、ポロン王女様では?」
「・・・・あっ!!!!!大変失礼いたしました」
「かまいませんわ。食事を食べたのは私の仲間ですわ。捕まって当然でございます」
「失礼な対応誠に申し訳ございません。ポロン王女様は、いつお戻りになられたのですか。国王様のお話しでは、修行の旅に出られたと聞いております」
「今日戻りましたわ」
その時・・・
「パーティーの食事を全て食べ尽くした者の仲間を捕まえたと聞いたがどこに居る。せっかくのイベントを台無した犯人は絶対に許さないぞ!」
「あなた、そんなに怒ってはダメよ。きちんと話しを聞いてあげましょう」
アルフヘイム妖王国の国王アールヴと王妃サブリナが、運営事務室に訪れた。
「お母様、犯人は捕まったのですか」
「犯人は誰だ」
姉のヘラ王女、兄のライアー王子もやってきた。
「国王様の食事まで食べる不届き者はどこに居るのですか」
「私たちにも、犯人の意図を教えてください」
ダミアンの子のロイド、メイドーナ、レノアも急いで駆けつけてきた。
「申し訳ございません。私の仲間が大変なことをしてしまって、本当にごめんなさい」
ポロンさんの家族との感動の再会は、土下座での謝罪の再会になってしまったのであった。
「貴様、謝って許されると思っているのか」
「そうだ、こんな事をする輩の親の顔が見たいものだ」
「そうですわ。どんな家庭で育ってきたのですの」
ダミアンの子供達は、ポロンさんを罵る。
「もしかして、ポロンなのか・・・・」
最初に気づいたのは、国王アールヴであった。
「ポロンですわ。間違いないですわ」
次に王妃サブリナが気付く。
「ポロン・・・」
姉のヘラが、ポロンだと気づいてポロンに駆け寄っていく。
「戻ってきたのね・・・」
兄のライアーが困ったような顔をしている。
「本当にポロンなのか?」
「はい。今日帰ってきました」
「無事でよかったわ。すごく心配してたのよ」
「そうだぞポロン。親に何も言わずに修行に出るなんて、なんて無茶なことをしたのだ」
「あなた、ポロンにも何か理由があったのよ。せっかく戻ってきたのよ。素直に喜びましょうよ」
「そうだな。よく無事に戻ってきたなポロン。本当に無事でよかった」
ようやく感動の再会を果たしたポロンさんは、両親、姉と抱き合い、嬉しくて涙するのであった。
その感動の再会をライアーは少し離れて見ていた。
「あいつが、こんなに早く戻ってくるなんて・・・・聖霊神の加護を手に入れたのか、いや、それは無理だろう。諦めて帰ってきたのだろう。俺が修行を進めたのがばれなけばいいのだが」
ダミアンの子供達も離れて様子を伺っていた。
「ポロン王女が戻ってきたのか。でも大会には参加しないのだろ」
「登録はしていないから大丈夫だろ。ヘラに次ぐ魔力の持ち主と聞いている。参加されると困るからな」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですわ。優勝はロイドお兄様で決まりですわ」
「そんなに甘くはないぞ。ヘラはかなり強い。ライアーのクソとは比べ物にならないくらいにな」
「ポロン、本当に、お前の仲間が食事を全部食べてしまったのか」
「お父様、申し訳ございません。本当のことです」
「あの量を1人で食べ尽くすなんて、お前の仲間、どんな胃袋をしているんだ」
「詳しいことは、ここでは言えません。しかし、すごく頼りになる・・・・時が、たまにあります」
「たまに・・・・なのか?」
「はい。それも後で説明いたします」
「そうか。食事は、閉会式用の分を急いで用意させる。それでなんとかなるだろう」
国王の指示のもと、急いで前夜祭のパーティーの食事を用意された。そして、予定時刻より、2時間遅れで、前夜祭パーティーは開催されたのであった。
パーティーが終わった後、ポロンさんは両親の部屋に呼ばれたいた。
「ここなら、先程話せなかったことを話せるだろう」
ポロンさんは、両親に、これまでのことを全て話した。なぜ旅に出たのか、なぜ戻ってきたのか、そしてアビスの件についても説明したのであった。しかし、兄のライアーから旅に出ることを勧められたことは言わなかった。それは、ライアーから言わないようにお願いされていたからであった。
「・・・・」
「・・・・」
両親は、あまりの話しの内容のため呆然としていた。
「全て本当なのか」
「本当です」
「そうなのか・・・まさか聖霊神様の加護を授かるだけでなく、召喚契約までするとは、エルフ界の歴史上初の快挙になるぞ。しかし、あまりにも強大な力だから公にはできないぞ」
「そうですわ。聖霊神様を召喚できるなんて、国民が知ったら大騒ぎになりますわ。召喚契約の事は極秘にしましょう。王と私以外には言わないようにね」
「わかりました。お母様」
「聖霊神様が、食事を食べた犯人でいいのね」
「はい。お母様。サラちゃんは、食べ物のことになると制御が効かなくなるので、召喚契約をしたの失敗だったのかもしれません」
「そんなことを言ってはいけませんよ。聖霊神様は、エルフにとっては神様みたいな存在なのよ。お供物をあげたと思えばいいのよ」
ポロンさんは、精印からサラちゃんが出てこないか確認した。いつものパターンなら、「そうなのよ、私にたくさんの食事をお供えるのよー」と言って飛び出すからである。
幸いにも、サラちゃんは現れなかったので、ポロンさんはホッとした。
「アビス様の件は、アラスター様に確認して対応を考えておこう」
アラスターとは先代の王であり、アビスの兄で、アールヴの父親である。
「お父様、私は明日の武道会に参加しようと思っています。よろしいでしょうか」
「もう登録期間は過ぎているので、無理ではないか」
「バトルロワイアルに、参加しようと思っています。私の力がどこまで通用するか、試してみたいのです」
「好きにしたら良い。でもバトルロワイヤルは、お前が思っているより過酷な戦いになるぞ。それに、聖霊神様の召喚は禁止だ。国民が大混乱するからな」
「わかりました。聖霊神様の加護の力で頑張ります」
ポロンさんは、やっと両親に全てのことを話すことができてホッとしたのであった。
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