第101話 武道大会パート2
「美味しですわ。さすがエルフのお城の料理長ですわ」
「お酒も最高です」
2人は非常に満足していた。
「ありがとうございます。武道大会の前夜祭の会場には、もっとたくさんの料理・お酒をご用意しています」
「そうなのね。それなら、早くブドウ大会の会場に行きましょう。早く行かないと私のブドウがなくなってしまいますわ」
「ポロンさん急ぎましょう」
ポロンさんは、料理長にお礼を言って前夜祭の会場へ向かった。
アルフエイム妖王国では、30年に1度王族の血を引く者が武道大会に参加して、エルフ最強の座をかけて戦うのである。参加資格は、王族の血を引く者で、過去に武道大会に参加したことのない者である。
なので、一生に一度のみの参加が許されるのである。前回の覇者は、現在の国王アールヴである。この大会は、次期国王を決めるときに大きく左右することがあるので、参加するエルフは本気で勝負してくるのである。
アールヴの兄ダミアンは、この大会で負けた為に、王位を決めるときに、アールヴに多くの票が流れて、国王になることできなかったのであった。
またこの大会で、惨敗するような王子は、王位に就くことは難しく、王妃が王位に就くことや、遠縁の者が王位を就くこともあるらしい。なので、武道大会は王族にとってとても大事な大会なのである。
今回の大会は、ダミアンの子供のリベンジマッチとなっているので、非常に盛り上がっているのであった。
「サラちゃん、町の中が騒ぎになるので、飛ぶのだけはやめてね」
「それくらいのことは、わかっていますわ」
そう言うと、サラちゃんは、ポロンさんを背中に乗せてもうダッシュをしたのであった。サラちゃんは、会場の場所は知らなかったが、自慢の嗅覚で美味しい匂いのする方へ、向かっていったのであった。
「ポロンさん着きましたわ。ここは美味しい匂いがするので、ブドウ大会の会場に間違いありませんわ」
サラちゃんは、よだれを垂らしながら嬉しそうに言った。
「サラちゃん・・・・・ここは飲食街ですわ。美味しい食べ物はありますけど、武道大会の会場ではありませんわ」
「そんなバカな!!!、美味しい匂いがするので、来たのに・・・・でも、せっかく来たので、お食事をしていきましょう」
ポロンさんは、早く会場に行きたかったが、サラちゃんをお店の中へ案内した。
「私が注文するから、少し待っていてね」
「はーーーい」
「お酒もお忘れなく」
ポロンさんは、適当に10品ほど注文した。
「まだなの。もうお腹がペコペコよ」
「お酒は、すぐに持ってくるようにしてください」
さっき食べたばかりなのに、サラちゃんのお腹はもうペコペコである。しかし、食べ出すと止まらないのはいつもことである。ポロンさんは、サラちゃんに食事をたくさん食べさして、大人しくなったら、イフリートに頼んでイディ山に戻してもらおうと考えていた。
サラちゃんを、武闘会場に連れて行くと大混乱が起きそうな気がしたのであった。
「やっときましたわ。とてもいい匂いがするわ。これは、絶対に美味しい料理に間違いありませんわ」
サラちゃんは、出てきた食事を瞬時に食べてしまった。
「サラちゃん、追加注文しますわ」
「ポロンさん、もう大丈夫ですわ。早くブトウ会場に行きましょう。こんなところで油を売っている場合ではありませんわ」
「私もです。ブドウ大会の会場に行きましょう。そこにたくさんのお酒があるはずです」
作戦は失敗であった。サラちゃんは、どうしてもブドウが食べたいのであった。しかし、武道大会の会場に、ブドウが用意されているか不安になったポロンさんであった。
「ポロンさん、ブドウの場所を教えてください。次は間違えませんわ」
1番大事なところが間違っていますよ・・・と言えないポロンさんであった。
ポロンさんは、サラちゃんに武道大会の会場の場所を説明した。
「ここからは、そんなに遠くはないのでおぶらないでも大丈夫ですわ」
「当然ですわ」
そういうと、サラちゃんはポロンさんを担いで、もうダッシュするのであった。ポロンさんの話しなど、全く耳に入っていなかったのであった。
「やっと着きましたわ」
武道大会の会場は、町でイベントなど行われる大きな広場に、臨時で観客席や特別のステージが作られている。大会前夜祭なので、特設ステージでは、王様、王妃が来賓して、武道大会の歴史、出場者の紹介などを行う予定になっている。
大会前日イベントは、もう終盤に入っていて出場選手の紹介をしていた。
「あそこに、ブドウの山がありますわ。イフリート行くわよ」
イベントブースには、果物もたくさん用意されていて、もちろんブドウもあった。ポロンさんは、一安心したのであった。これでサラちゃんの機嫌を悪くなることはないだろう・・・しかしポロンさんは、重大なことを見逃していた。
ポロンさんは、特設ステージの方へ向かって、武道大会の出場選手の紹介を聞きに行った。
出場選手は、以下の通りであった。第一王女のヘラ、第一王子のライアー、ダミアンの子供のロイド、レノア、メイドーナ、オーロラの子供、シャノン、ザックの7名であった。
ダミアンはアールヴ王の一番上の兄であり、オーロラは2番目の兄である。
「以上の7名が、武道大会の出場者になります。みなさんは、王家の血を引く正当な王位後継者です。この大会は、今後の王位継承に大きく左右されますので、日頃の鍛錬の成果を、国民に見せてください。なお、この大会は8名で行いなす。残り1名は、明日に行われるバトルロワイヤルで、出場者を決めます。全てのエルフに参加資格はありますので、腕に自信のある方はご参加してください」
王族の血を引くものしか、妖精と契約できないので、一般市民はほとんど参加することはない。しかし、中には、格闘の優れた者、剣術に優れた者、または、遠縁の王族関係者がバトルロワイヤルに参加するのであった。
「これだわ。バトルロワイヤルに参加すれば、私も武道大会に出場できますわ」
ポロンさんは、自分の力を家族に見せれる場に参加できると思うと、とても嬉しくて涙が溢れそうであった。今までの苦労が明日むくわれるかもしれないのである。しかし、ポロンさんは、堪えていた涙は、違う形で流すことになるのであった。
「こらーーー、そこの亜人。1人でフルーツを全部食べるな」
「うるさいわね。ご自由にお食べくださいと言っていたわ」
「おい、その火の玉はなんだ。ここのお酒を、全部飲み干しているじゃないか」
「ここの、食事ももうありませんわ」
「こっちもないぞ。これは出場選手用に置いてあったご馳走だぞ」
「王様と王妃様の食事も無くなっているぞ」
「出場選手の歓迎イベントはどうするのだ!」
ポロンさんの家族への最初の挨拶は、イフリートとサラちゃんが食べ尽くした、食事とお酒の謝罪であった。ポロンさんは、涙を流しながらひたすら関係者各位に謝ったのであった。
もちろんサラちゃんは、お腹がいっぱいになりイフリートに連れられて、精印からイディ山に帰って行ったのであった。
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