第100話 武道大会パート1



 「サラちゃん、ここからは歩いていきましょう。サラマンダーの姿では目立ってしまうわ」


 「えーーーー、歩くのは面倒よ。私は、人型でも飛べるのでおぶって連れて行ってあげるわ」


 「ほんとに。サラちゃんありがとう」


 「当然よ。早く美味しい食事をご馳走してもらわないといけないからね」



 通常運転のサラちゃんであった。



 「この森を抜けたら、エルフの町ゴールウェイよ」


 「一気に突き抜けるわよ」



 サラちゃんは、目立たないように、森の上を低空飛行でぶっ飛ばす。ポロンさんは、吹き飛ばされないように、サラちゃんにしがみついている。少しでも力を緩めると、風圧で吹き飛ばされるからである。



 「やっと、町が見えてきたわよ」


 「ついに、私は帰ってきたのですわ。もう2度と戻って来れないと思った時もありましたわ。私が聖霊神様の加護を授かる力があるのかとても不安でしたわ。でも、こうして、故郷に戻ることができましたわ。これもラスパのメンバーの協力のおかげですわ」



 ポロンさんは、故郷の町を見て感傷にふけっていた。思い起こすことがいろいろとあるのだろう。



 「そんなことは、どうでもよいのですわ。早く美味しい食事を食べに行くのよ」



 サラちゃんは通常運転である。最優先事項はもちろん美味しい食事である。



 「少しくらい、感傷にふけさせてよ。ここは感動的な場面なのよ」


 「私も早くお城へ行ってお酒が欲しいです」



 イフリートもポロンさんを催促する。多数決により感傷にふけることは却下された。



 「わかりましたわ。町へは入りましょう。まずは門で手続きをするわ」


 「手続きですって・・・もう待てませんわ」



 サラちゃんは、ポロンさんを抱き抱えて、猛スピードで、町の中央にある大きなエルフのお城へ飛んで行ったのであった。



 「やっと着きましたわ」


 「サラちゃん飛ばし過ぎですわ。あまりの速さで、私は目が回ってクラクラですわ」



 サラちゃんの高速スピードで、ポロンさんは目が回ってフラフラとしている。しかも、サラちゃんが、ポロンさんをおろした場所はお城のてっぺんであった。幸いにも、城の警護兵には見つからずに済んだのは幸いであった。



 「さぁ、のんびりとしてられないわ。お食事を盗みにいきましょう」


 「サラちゃん、このお城は私の実家です。きちんと門から入って、みんなと感動の再会をしてから、お食事に招待してあげたったのに・・・これでは泥棒ではありませんか」


 「美味し物が食べれたらそのような細かい事は問題ないのですわ。さぁ、早く食堂に案内してよ」


 「サラマンダー様の言う通りです。ポロンさん早くお酒を用意してくだい」



 多数決により、ポロンさんの家族との感動の再会は後回しになってしまったのであった。



 「1階が食堂になっていますわ。地下にお酒の貯蔵庫がありますわ」



 「ガーーーーーン」



 「せっかく頂上から潜入したのに、一階にあるなんて、この城の危機管理能力はかなり高いですわ」


 「サラマンダー様のおっしゃる通りでございます。地下にお酒を隠すなんてエルフの知恵には脱帽します」


 「ここは、私が住んでいたお城なのですから、初めからわかっていたことですわ」


 「なんで早く言ってくれないのよ」


 「その通りでございます。反省してくだい。ポロンさん」



 多数決により、ポロンさんは無理矢理謝罪をさせられたのであった。



 「許してあげますわ。急いで1階へ行きましょう」


 

 納得いかないポロンさんであったが、サラちゃんを連れて食堂へ向かった。


 今日は、なぜか、お城の警護も手薄であり、お城の中にはほとんど人がいないのであった。



 「おかしいわ。メイド達が全然見当たらないわ」


 「メイド???美味しいのですか」


 「お酒の種類なのですか」


 「メイドとは、家庭内の労働を行う人ですわ」


 「食べれないのなら、どうでも良いですわ」


 「ポロンさん、なぜこのお城に来たのか、もう一度しっかりとお考えください。このお城に来たのはお酒を飲むためです」


 「イフリートの言う通りですわ、美味しい食事をするために、わざわざエルフの国へ来たのですわ」



 ポロンさんは、呆れて何も言えなかった。こんな聖霊神と契約し、そして、召喚契約をして良かったのだろうかと考えるのであった。



 「急ぎましょう。ポロンさん」



 ポロンさんは、頭を切り替えて食堂へ向かった。



 「ここが食堂ですわ。調理場に誰かいていないか見てきますわ」


 「お願いしまーーーーす」


 「お酒も忘れないでください」



 サラちゃんは、食堂の席に座ってニコニコしている。そして、その横でイフリートもニヤニヤしていた。



 「誰かいてますか」


 「・・・・・ポロン王女様ですか」


 「サンディー料理長、お久しぶりですわ」


 「今日お城に戻られたのですか」


 「そうですわ」


 「ライアー王子様から、ポロン王女様は修行の旅に出かけられたと聞いていました。しかし、王様は、何かあったのではないかと心配していました。ご無事にお帰りになられて、私はとても嬉しいです」


 「ありがとう。今日は、このお城には人がいないようですが、何かあったのですか?」


 「明日は、30年ぶりに武闘大会が行われます。今日はその前夜祭パティーが行われていますので、皆さんは、その会場に出席しています。私は留守番として残っています」


 「そうなのね。武道大会・・・私も出て見たかったわ」


 「ブドウですって。早くブドウを出しなさいよ」


 

 お腹を空かした、サラちゃんが、武道とブドウを勘違いして調理場に入ってきた。



 「ブドウ酒もあるのですか」


 

 もちろんイフリートもやってきた。



 「ポロンお嬢様、そちらの方はどなたですか」


 「私の冒険者仲間ですわ。お腹を空かしているので、何か料理を出してもらえないかしら」


 「わかりました。すぐにご用意いたしますが、前夜祭の為に食材はほぼ使い果たので、簡単なものになりますが、よろしいでしょうか」


 「ブドウ大会・・・たくさんブドウが食べれる大会ね。後で、そちらの会場にもいきますわ」


 「料理長殿、お酒の準備もお忘れなくお願いします」



 料理長は、サラちゃんために急いで料理を準備したのであった。



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