第103話 武道大会パート4



 次の日、ポロンさんは、久しぶりに家族みんなで食事をしている。



 「お母様から聞いたわ。ポロンはバトルロワイヤルに参加するのね」


 「はい、参加します」


 「この家からの推薦枠は、2つしかないので、私は参加できないかったけど、バトルロワイアルには、怖くて参加できないわ」



 2番目の姉オーブリーが言った。



 最強エルフを決める武道大会は、王族から7枠とバトルロワイヤルの勝者の1枠になっている。今回の大会の推薦枠は、アールヴの家族からは2名、ダミアンの家族からは3名、オーロラの家族からは2名になっている。


 武道大会推薦枠は、前の国王の子供である、ダミアン、アールヴ、オーロラの3名の子供らに権利が与えられる。長男であるダミアンの家は1名多く3名になっている。


 そして、バトルロワイヤル枠は、エルフなら誰でも参加可能である。しかし、王族関係者が、自分の子供を勝たすために、初めから根回しをしている。その結果、バトルロワイヤルはチーム戦になっているのである。そして、初めから枠をもらっている王族が出場すると、全員が共闘して一斉に王族を攻撃するので、勝つことは不可能である。


 

 「そうですわ。オーブリの言う通りよ。ポロン!危険だから辞めた方が良いわ」


 「心配してくれてありがとうございます。でも、私は修行の成果を試したいのです」



 両親は、ポロンさんが聖霊神の加護を授かったのを知っているが、勝つのは難しいいと思っている。それは、バトルロワイヤルの出場者は、50名くらいになる予定なので、50名相手に1人で戦うなんて無謀なのである。しかし、ポロンさんの自信に満ちた表情を見て止めることができなかったのであった。もし、ポロンさんへの殺意を感じたら、すぐに止める準備はしておこうと考えていた。


 ライアンは確信した。バトルロワイヤルに出るということは、精霊神の加護を手に入れたのに違いないと。そうでなければ無謀な挑戦である。でもポロンがバトルロワイヤルで勝ち上がれば、チャンスがあるかもと思っていた。それには理由がある。


 武道大会のトーナメントでは、一回戦で家族と当たる事はない。ライアンは優勝は無理なので2位を狙っている。ライアンの初戦相手は、オーロラの子供シャノンである。シャノンには、多額の金銭を渡して買収済みである。2回戦の相手は優勝候補のダミアンの子供ロイドになると考えている。だが、ロイドには、買収は通じなかったので、困っていた。ロイドの1回戦の相手は、バトルロワイヤル枠だ。ポロンとロイドが潰しあってくれたら、もしかしたら、決勝に行けるのではないかとライアンは思っていた。



 「ポロン、俺は応援してるぜ。修行の成果を存分の見せつけたらいいぞ」


 「あら、珍しく家族のことを応援するのね」


 「当たり前です。ポロンは俺の大事な妹です」


 「ライアンのことだから、また良からぬことでも考えてそうだわ」


 「そんなことはありません」


 「ライアンお兄様は、心から私のことを応援してくださっています」



 ポロンさんが力強くヘラに言った。ポロンさんは、ライアンのおかげで、精霊神の加護を手に入れることができたので、ライアンにはすごく感謝をしている。



 「これ、みんな仲良くするのよ。家族なのですから」


 「はい。お母様」



 ポロンさんは朝食を終えると、バトルロワイヤルの手続きに出かけた。今日の大会の日程は、午前中にバトルロワイヤルが行われて、昼からトーナメント一回戦が行われる。なので、バトルロワイヤルに勝っても、すぐに試合があるのでかなり不利なのであった。



 ポロンさんは、会場に行って手続きを済ませて、大会出場者の控え室に入った。


 控え室には、手続きを済ませた50人の参加者がいた。ポロンさんは最後の参加者であった。


 ここにいる参加者は実際は5名である。アルトワ家のクレア、カペー家のヴァル、スミュール家のプリストン、ブリエンヌ家のペイトン、そしてポロンさんである。


 残りの45名の中から支持者を20名集めたプリストンが、バトルロワイヤルの優勝候補だと予想されている。


 

 「王女が参加するのか」


 「聞いてないぞ」


 「旅から帰ってきたのか」


 「王女の仲間が、昨日の食べ尽くし事件の犯人らしいぞ」



 控室内がざわめいている。ポロンさんは、そんなことは気にせずに、ルシスに教えてもらった、小さな収納ボックスから、プリンを取り出してペロリと食べる。



 「プリンは、最高ですわ」

 

 「どうする。王女だぜ」


 「もちろん、全員で共闘して真っ先に潰そう。わざわざ1人で参加してきたのだ、かなり腕に自信があるのだろう」


 「そうですわ。推薦枠があるのに邪魔をされては困るわ」



 参加者の意見は一致した。開始と同時にポロンさんを倒すことにしたのであった。しかし、ポロンさんは、そんなことを気に留めずに、2個目のプリンを食べるのであった。



 「美味しいですわ!」



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