第104話 武道大会パート5



 「ポロンは、本当に大丈夫なの」


 「オーブリー、心配しなくて大丈夫ですわ。もしもの時は、私が大会を失格になっても構わないから助けに行くわ」


 「お姉さま、その時は私もついて行きますわ」


 「そうね。でもそうならないように、審判がすぐに止めに入ってくれること願いましょう」



 王族は、平民のエルフからは、絶大なる支持を得ているが、王族血縁者からは疎まわれている。なので、大会に乗じて何をされるのかわからないのである。しかし、それを防ぐのが審判なのだが、その審判も買収されているのかもしれないのである。なので、バトルロワイヤルに、推薦枠をもつ王族は絶対に参加しないのである。



 「もうすぐ始まりますわ。ポロンは、いつも緊張して失敗してしまうから心配ですわ」


 「そうですね、お姉様。ポロンは緊張して、体が硬くなって実力を出さずに終わってしまうかもしれませんね」


 

 「只今より、武道大会の出場を決めるバトルロワイヤルを開催します。出場者の方は入場してください」



 「いよいよね。プリストンが優勝候補ね。兄妹を含めて、20人の支持者を参加することに成功したみたいだわ。かなり数的優位なので、ポロンが勝つのは難しいわ」


 「そうですね。しかもプリストンはかなりの実力者よね。しかし、勝ち上がったとしても、武道大会の一回戦の相手はあのロイドですわ。ロイド戦の為に、プリストンは魔力温存に努めて、極力戦闘は控える作戦に出るはずね」


 「そうね。仲間に戦いは任せて、自分は安全なところで待機するはずよ」


 「クレア、ヴァル、ペイトン達が、どのような作戦に出るかがカギですね」



 プリストン以外の3名が、もし共闘したら、プリストン優位の予想も覆るのである。相手陣営の情報を集めて、できるだけ優位に戦うのが、このバトルロワイヤルの戦い方である。



 「なかなか、ポロンが出て来ませんわ」


 「もうポロン以外の選手は、みんな出て来ているのにおかしいですわ」


 「もしかしたら・・・控室で、何かあったのかもしれないわ」



 「えーーーしばらくお待ちください。出場予定のポロン選手が、まだ控室から出て来ていません。係の者が、確認に行きますのでもう少しお待ちください」


 


 「やはり・・・・何かあったのよ。だから参加は辞めて欲しかったのよ」


 「お姉様、私が見て来ますわ」


 「いえ、今から行っても手遅れですわ。もしポロンの身に何かあったのならば、私は、絶対に犯人を許さないわ」


 「当然です。首謀者はプリストンだと思います」


 

 「ポロンが、係の人に担がれて、出て来ましたわ」


 「ポロン・・・・・」



 ポロンさんは、ぐったりとして係の人に抱えられて、会場に出てきた。意識はあるみたいだが、お腹を押さえて、苦悶の表情を浮かべている。この状態では戦闘など不可能である。



 



 係の人は、ポロンさんが会場に出てこないので、慌てて控え室に探しにきた。そこで、係の人が見たものとは・・・・


 呻き声を上げながら、お腹をおさえているポロンさんであった。



 「大丈夫ですか?ポロン王女様。何があったのですか」


 「プ・・・プ・・・・」


 「誰かに襲われたのですか」


 「プ・・・プ・・・・プリ・・・・・」


 「プリストンに襲われたのですか・・だから、王女様の参加は取り消すように、俺は大会委員長に言ったのだ」



 ポロンさんが、参加することになって、大会関係者からも様々な意見があった。王女様の安全を確保できるのか、特別に護衛をつけるべきとか、控室は別室にすべきなど王女様の安全を最優先すべきという意見と、王女だからといって特別扱いするのは良くない。参加するのなら自己責任だとか、特別扱いすると他の参加者からクレームがくるなど優遇すべきではないとの意見も多かった。結局は大会の実行委員長がダミアンだったので、ポロンさんの特別扱いは却下されたのであった。



 「ポロン王女様、すぐに医者を呼んできます」


 「プ・・プリ・・・・プリンを食べ過ぎてしまったわ・・・」


 「・・・・・・」


 「ポロン王女様・・・プリンとは、誰のことですか」


 「プリンは、とてもおいしいデザートですわ」


 「・・・・・」


 「襲われたのではなくて、食べすぎたのですか」



 ポロンさんは、久しぶりにプリンを食べたので、私にもらったプリン20個を、1人で全て食べてしまったのであった。最初は1個だけ試合前に食べる予定が、我慢できなくなり、全て食べてしまったらしい。やらかし王女の座は安泰であった。



 「ポロン王女様、大会はどうしますか?辞退しますか?」  


 「これくらい大丈夫ですわ。でも、まだ苦しいので。私を抱えて会場まで運んでもらえるかしら」


 「わかりました。それでは、急いで会場に行きましょう」





 「係の者から連絡が入りました。今抱えながら、舞台に登場したポロン選手ですが、体調不良のため、控室で休んでいたそうです。しかし大会には参加するとのことです」



 「ポロン・・・本当に大丈夫なの・・・」


 「控室で、何か毒でも盛られたのかしら・・・ポロン無理しないで・・・」




 「あいつ、やっと出てきたな。変な食べ物をガツガツ食べて、食べ過ぎで倒れていたらしいな」


 「あんなやつを警戒するのか、プリストン」


 「そうだな・・・全員で、最初に潰す予定がもう自滅しているぜ」


 「そしたら、共闘の話しは無かったことにするか」


 「そうだな。あんなへっぽこ王女などもうどうでもいい、共闘の話しはナシだ」



 ポロンさんが食べすぎてうずくまっている姿を見て、プリストン達は共闘の作戦を辞めた。



 「それでは、参加者の皆さん広場に移動してください」



 バトルロワイヤルは、舞台から降りてすぐの大きな円形の広場で行われる。その広場を囲うように観客席がある。武道大会もこの円形の広場で行われる。



 「では、これより、バトルロワイヤルはじめます。今から、5分後に開始のベルがなります。ベルがなるまでに戦闘体制を整えてください」



 バトルロワイヤルはチーム戦である。5分の準備時間に、自分らに優位な戦闘体制を整えるのである。各チームが仲間同士集まって戦闘態勢をとる。


 やはり、優勝候補のプリストンを潰すために、クレア、ヴァル、ペイトンは共闘するみたいである。



 「プリストンどうする。あいつら、やっぱり共闘しやがったぜ」


 「これは、まずいな・・これなら、あのへっぽこ王女でも、仲間にしとけばよかったかもな」


 「それは、無いだろう。あいつ、まだあそこで寝転がってるぜ。試合がはじる前にもう終わってるぜ」




 「カラン・カラン・カラン・カラン」



 開始のベルがなった。プリストン陣営は、防御を固める作戦に出た。接近戦は不利なので、遠距離での魔法・弓での防衛に備えた。


 一方、3陣営は、プリストン陣営を取り囲むような陣形をとる。数的優位なので、3方向から一気にプリストンを仕留めるつもりだ。



 「始まりましたわ。でもポロンはまだ倒れているわ・・・そのまま倒れた状態で終わってくれたらいいのに」



 その時・・・・




 広場に大きな爆炎が現れて、広場は炎で包まれたのであった。



 「何が起こったの???」


 「ポロンは大丈夫なの・・・」


 

 広場を包み込んだ、大きな炎は、キャンプファイヤーのように燃え上がり、会場全体を熱気で覆い尽くすのであった。



 しばらくすると、炎はおさまり、広場の状態を確認することができるようになった。



 「炎がおさまりましたわ。ポロンは大丈夫なの」



 観客席では、突然広場に爆炎が現れて、広場が炎の海と化したので、何か事件が起こったのではないかと、悲鳴の声が飛んでいた。


 広場の炎がおさまり、広場を見てみると、参加者たちが全員白目をむいて気を失っていた。そして広場の中央には、お腹をおさえながら、小さな火の玉と会話をしているポロンさんがいた。



 「イフリート、少しやりすぎたのではないの」




 

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