第193話 神守聖王国オリュンポス パート2



 神守聖王国オリュンポス城内では・・・



 「ネテア王妃様、ジュノを『金玉』(金烏玉兎の略称)のメンバーに入れてもらいました」


 

 とフレイヤがいう。フレイヤとは王国騎士団の団長である。



 「手筈通りね。これで、デレクの手の内を探ることができるわ」


 「確かにそうですが・・・・ネテア王妃様、デレク王はネプチューン侯爵を使って、ネテア王妃様を亡き者にするはずです。オリュンポス城の守りを固めた方が良いと思います」


 「確かにその方が賢明ですわ。でも、いくら警護を固めたろころで、デレクとネプチューンの企みを防ぐことは難しいわ。だから、少しでも先手を打って、彼女達が戻ってくるまでに情報を集めておきたいのよ」


 「『ラスパ』の事ですね」


 「そうですわ。ディーバの元に寄ったら、すぐに力を貸してもらえるようにお願いしているわ」


 「『ラスパ』の皆さんは、今はエルフの国へ行っていると聞いています。すぐに戻って来られると良いのですが・・・」




 オリュンポス城内の別の部屋では・・・



 「お父様、今帰ってきました」


 「ジュピター、お前に新たな任務を与えるぞ」


 「はい。なんなりとお申し付けください」


 「この雷霆をネプチューンに届けてくれ」


 「雷霆は神剣と聞いております。本当にネプチューンにお渡しするのですか」


 「問題ない。ネプチューンには重大な任務を与えている。この雷霆の力がないと任務の遂行に支障が出るのだ」


 「わかりました。ついにお父様はご決断なされたのですね」


 「そう言うことだ。これは、お前の将来にも影響することになるのだ。この任務が成功すれば、お前の王位争いは一歩リードすることができるのだ。今のままだとエリスに王位の座を奪われてしまうぞ」


 「わかっています。今の私は王都の最強の『金玉』と並ぶC1ランク冒険者までの辿り着きました。実力ではエリスの負けるとは思っていません。後は、世論の後押しさえあれば、次の国王は私のものです。なのでネプチューンには、いい働きをしてもらいたいです」



 ジュピターは神守聖王国オリュンポスの第1王子である。王位継承権第1位であるが、現在オリュンポスの実権を握っているのはネテア王妃であり、デレク王は形だけの王である。なので、ネテア王妃の次を継ぐのは、第1王女のエリスになると誰もが思っているのである。


 しかし、デレク王がネテア王妃を暗殺してオリュンポスの王になれば、デレク王の後を継ぐのは、第1王子のジュピターになるのである。


 ジュピターは、アレスを師と崇めて剣術の訓練をつけてもらっていた。王子ということで、強引にC1ランクの冒険者になったが、実力はそこまで弱くない。王都で『七珍万宝』といえば、誰も知らない者がいないくらい有名なのであった。ちなみに『七珍万宝』と名付けたのは、世界中の宝を手に入れるくらい強い冒険者であるという意味である。略称は『珍宝』と呼ばれている。



 神守聖王国オリュンポスではブラカリ侵攻事件以後、さまざまな人物の企みが渦巻いていたのであった。



 ★金烏玉兎の話に戻ります



 「ガッリーナの町まで、どれくらいかかるのですか」


 

 ジュノがマーニに聞いた。



 「・・・」


 「3日くらいかかると思うわ」



 ソールが答える。



 「ガッリーナの町には、確か『雲湖朕鎮』がネプチューン侯爵様の依頼を受けて旅立っているはずです」



 ジュノがマーニに言った。



 「・・・」



 「そうなのね・・・何か怪しいわね。『雲鎮』はネプチューン侯爵様に利用されてそうですわ」


 

 とソールが答える。


 『雲湖朕鎮』はC2ランクの冒険者で、王都で『金玉』に継ぐ実力の冒険者と言われている。『雲鎮』はネテア王妃の考えを支持している。



 「私もそう睨んでいるのよ。このタイミングで『雲鎮』に、わざわざガッリーナの町に来てもらうのは偶然とは思えない。『雲鎮』を王都から遠ざける為か、それとも別に何か理由があるのかもしれない。マーニはどう思う」


 「・・・」


 「どちらもあり得るわね」



 とソールが答える。



 「マーニ、そろそろ休憩を取った方がいいかもね」



 「そうね。もうすぐキャロトの村に着くわ。今日はキャロトの村で泊まりましょう」



 「やっと、ゆっくりと休めるのね。マーニ、馬車の運転感謝します」



 「・・・」


 「そういえば、ジュノ、なぜ髪の色をピンクに染めたのかしら?」



 「変装よ。王国騎士団の副団長が、『金玉』のメンバーに加入した知られたらすぐに怪しまれる。なので、目立たないように逆にド派手な髪の色にしたの。これなら私だとバレることはないと思う」


 「確かにそうね。そしたら、ジュノと呼ぶのも変えた方がいいかもね」


 「そうね。それならサクラと呼んでもらっていいかしら」


 「ピンクの髪なので、サクラなのね。女性的で素敵だわ」


 「女性的って・・・私はこれでも男なのよ」



 ジュノ改めてサクラは、ピンクの長い髪の男性である。見た目も小柄で華奢なので、よく女性と間違われるのである。しかしサクラは神の子の力を持つ優秀な戦士である。そしてサクラは神技も同時に 3つ発動出来る凄腕の持ち主である。実力はアレス以上とフレイヤが言うのも当然である。


 ジュノはサクラという女性の冒険者を演じることにしたのであった。



 

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