第194話 神守聖王国オリュンポス パート3



 「キャロトの村に着いたわ」



 マーニが静かに言った。



 「小さな村だから馬車を置いて歩いて行きましょう」



 サクラがマーニに言う。



 「・・・」


 「そうね。小さな村だから馬車の通行は禁止になっているわ」



 ソールが答える。



 「私が先に行って、手続きをしてきます」



 サクラは先にキャロトの村の門へ走っていく。


 マーニは馬車を止めてソールと共にキャロトの門へ歩いていく。



 「サクラ、手続きは終わったかしら」


 「ごめんソール、サクラに変装しているから私の身分証は使えないわ。『金玉』の冒険者証を出してもらえるかしら」


 「そんな事だと思っていたわ」



 ソールは門番に冒険者証を見せて村に入る許可をもらった。



 「あなた方もガッリーナの町を目指しているのですか?」



 門番がソールに声をかけてきた。



 「どうして、そう思うのかしら」


 「 3日ほど前に『雲珍』の方がこの村を訪れました。そして、先ほど『珍宝』の冒険者が来られてたので、『金玉」の方もガッリーナの町を目指しているのかと思いました」



 キャロトの村は何もない村である。しかし、ガッリーナ町を目指す者は必ずキャロトの村を経由する必要があるのだ。



 「『珍宝』が訪れているならド派手な馬車が止めてあると思うのですが、村の入り口では見かけませんでしたわ」


 「ジュピター王子様が馬車から降りるの拒否しましたので、そのまま通行してもらいました。私たちは、王子様の意見には逆らうことはできませんので・・・」


 「そう言うことなのね。C1冒険者になったのなら、冒険者としてのマナーを身につけてほしいところですわ」


 「あのバカ王子には無理なことだわ」


 

 とサクラが呆れ顔で言う。


 ソール達はキャロトの村の門を抜けて村に入っていった。



 「マーニ、馬車の運転で疲れているだろうから、先に宿屋に行って休むといいわ」



 サクラがマーニに言った。



 「・・・」



 「マーニ、宿屋の手配は任せたわ。私とサクラで何か情報がないか聞き込みをしてくるわ」


 「わかったわ。気をつけてね」



 マーニはソールにそう言うと宿屋へ向かった。



 「サクラどう思う?」


 「私はソールに嫌われているのかしら・・・」



 悲しげな目でサクラは答えた。



 「いや、マーニのことじゃなくてジュピター王子のことよ」


 「そっちのことね。国王の指示だと思うわ」


 「私もそう思うわ。ジュピター王子がなぜ?ガッリーナの町を目指しているのか調べて見ましょう」


 「そうね。あのバカ王子なら居酒屋でお酒を飲んでいると思うわ」


 


 ソール達は村で1番豪華そうな居酒屋に向かった。





 「もっとお酒を持ってこい。俺を誰だと思っているのだ」


 「もしわけありません。順番がありますので。もう少しだけお待ちください」


 「今なんと言ったのだ」


 「順番があり・・・」


 「俺が最優先だ!他の客など後回しにしろ。同じ事を何度も言わせるな。俺はこの国の王子だぞ」



 ジュピターが偉そうに居酒屋の店員に吠えている。



 「この店の店員は何もわかっていないぞ」



 ジュピターが怒りをあらわにする。



 「そうでございます。王子様を最優先するのは、国民の義務であります」



 ヴェスタが答える。ヴァスタは『珍宝』のメンバーの1人でありヴェスタも神の子である。ヴェスタは高身長の細身のイケメンであり、女性から人気があるのでジュピターからは嫌われている。



 「当たり前だ。お前が言わなくてもわかっている」



 ジュピターの怒りはおさまらない。



 「ジュピター王子様、愚かな下民共が崇高なるジュピター王子様の意図など理解できません。下民共は王族の為に存在していることを未だ理解せずに、自由だの平等などとほざいています。下民など相手にするだけ無駄と言うものです。下民への対応は私にお任せください」


 「確かにあいつらに何を言っても無駄だな。ヘルメス、お前に任せるぞ」


 「はい、すぐに厨房に行って、ジュピター王子様を最優先するように伝えてきます」



 ヘルメスも『珍宝』のメンバーの1人であり、ヘルメスも神の子である。ヘルメスはヴィスタの双子の弟で外見はそっくりであるが、ヴェスタは短髪であるが、ヘルメスは肩まで髪が伸びているので、髪型で区別がつくのである。ヘルメスは兄のヴィスタとは違って、上手いことジュピターを操ってジュピターの信頼を勝ち取っている。


 ヘルメスが厨房に行って話しをつけてくれたので、すぐにお酒の追加が用意された。そして、その後も優先的に注文が出るのであった。



 「ガハハハハ、ガハハハハ」



 ジュピターの下品な笑い声が響く。



 「あの下品な笑い声はバカ王子よ」



 サクラが言う。



 「サクラが言った通り、この店にジュピター王子がいたわね」



 店の前に金ピカの馬車が止めてあったので、誰でもこの店にバカ王子がいるのはわかるのであった。



 「サクラこれからどうするの?」


 「私に任せて」



 そう言うと、サクラはバカ王子のテーブルに歩いていった。



 「ジュピター王子様ですか?私ジュピター王子様のファンなのです」



 サクラはとびきり可愛い声で言った。サクラは男であるが女性と間違われるくらい美形であり、髪型も長髪でピンク色で体型も小柄で華奢なので、見た目は完全に可愛い女の子であった。


 しかも、サクラの神の子の力は魅了の能力である。サクラは神の子の力を使って、魅了をしながらジュピターに声をかけたのであった。


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