第195話 神守聖王国オリュンポス パート4



 「俺のファンだと」


 「そうです。お会いできてうれしいです」



 サクラは可愛く微笑んだ。



 「今は食事中だ。サインなら後にしてくれ」



 ジュピターはカッコつけて言うが内心は大喜びである



 「ごめんなさい。ついジュピター様にお会いできて嬉しくてお声をかけてしまいました」


 「いや、気にするな。お前の気持ちは当然の事であろう。そんなことで怒るほど俺の器は小さくないからな」



 嬉しそうにジュピターは言う。



 「ジュピター様はお強い上に優しいのですね。ますますファンになってしまいますわ」



 ニッコと微笑みながらサクラは言う。



 「立っているのも辛かろう俺の横に座るがいい」


 「本当によろしいのでしょうか」


 「構わない。女性を立たせたままにするのもよくないからな」



 カッコつけてジュピターは言う。



 「ジュピター様は噂通りの紳士なのですね」



 そう言うとサクラはジュピターの真横に密着するくらい側に座る。


 ジュピターは密着するくらい近くにサクラが座って鼻の下を伸ばして喜んでいる。



 「俺の噂だと」


 「そうですわ。女性達の間ではジュピター様はとても強くて、優しくてカッコいいと言われていますわ」



 実際のジュピターの噂は傲慢で態度が悪く、実力もないのに王族であるという事でC1ランクに上がったとボロクソ言われているのである。



 「そ・そ・そうなのか。それは知らなかったぞ」



 ジュピターはとても嬉しそうだ。



 「ジュピター様は、この村に何しにきたのですか?」


 「国王からの極秘任務だ」


 「そうなんですね。国王様から1番の信頼を受けているジュピター様だからこそできる任務なのですね」


 「その通りだ。お前はよくわかっているな」


 「当然ですわ。ジュピター様のことならなんでも知っていますわ」


 「ガハハハハ、それは嬉しいぞ」



 ジュピターは初めて他人から褒められてとても気分が良くなっている。



 「確かパースリの町を占拠していたジャイアントゴブリンを殲滅したのもジュピター様と聞いていますわ」



 もちろん嘘である。パースリの町のジャイアントゴブリンを倒したのは『ラスパ』である。しかし、王都内では『珍宝』が倒したとジュピターが吹聴しているのであった。



 「その話しは内密だけどな。母が自分の勢力を広げるために、亜人がいる『ラスパ』が倒したと嘘の情報を流しているからあまり公にはできないのだ。母の嘘がバレないように、俺は黙って見過ごしてやっているぜ」


 「ジュピター様は心も広いのですね」


 「当然だ。俺は影響力のある男だ。俺の発言で世界が動くので慎重に言葉を選んで発言するようにしている。なので、母の嘘の言動も見逃してあげてるのだ」


 「素晴らしいですわ」


 「当然のことだ」



 ジュピターは誇らしげに言う。



 「今回の国王様の任務もかなりの重要な任務なのですね。どんな任務か知りたいけど我慢しますわ」


 「そんなに知りたいのか」


 「もちろんですわ。次はジュピター様がどんなご活躍をするか知りたいのは、ファンとして当然ですわ」


 「そうか・・・仕方がない。お前にだけ教えてやろう」


 「よろしいのですか?」


 「俺のファンなら問題はない。しかし誰にも言うなよ」


 「もちろんです」


 「ジュピター様、おやめ下さい。素性もわからない者に極秘任務を教えるのは問題があります」



 ヴェスタが言う。



 「お前は黙っていろ。この女は信頼に値すると俺が判断したから問題はない」


 

 ジュピターはヴィスタを怒鳴りつける。



 「口出して申し訳ありませんでした」



 ヴィスタが謝罪する。



 「今回の俺の任務は雷霆をネプチューンに届けることだ」


 「雷霆?」


 「雷霆とは神剣だ」


 「そんな重大な任務をされているのですね」


 「当然だ。俺はC1ランクの冒険者だからな」


 「素敵ですわ。でも神剣をネプチューン侯爵様に、お渡しするのはもったいないですね」


 「どういことだ」


 「だって、ネプチューン侯爵様にお渡しするよりも、ジュピター様がお使いになった方が、神剣も喜んでくれると思いますわ」


 「確かにそうだな。ネプチューンよりも俺の方が神剣にふさわしいな」



 ジュピターは満更でもない感じである。



 「そうですわ。神剣は扱う人を選ぶと言われています。神剣もネプチューン侯爵様に使われるのは嫌だと言っていますわ」


 「ヘルメスはどう思う」



 ジュピターは迷っていた。なので信頼できるヘルメスにアドバイスを求めた。



 「確かに、ジュピター王子様が使用された方が良いと思います」


 「ヘルメス、何を言っているのだ。デレク国王様の指示に反くのか」



 ヴィスタは声を荒げて言う。



 「ヴィスタは黙っていろ。俺はヘルメスに聞いているのだ」


 「申し訳ありません」



 ヴィスタが謝罪する。



 「雷霆は俺がもらうか。だが、ネプチューンに渡す武器はどうしたらいい」



 ジュピターがヘルメスに問う。



 「ブラカリの町にあるグラムを奪ってグラムを渡せばよろしいかと思います。私の情報では、ネプチューン侯爵様はグラムの代わりになる神剣を探していると聞いています。それにデレク王様も何度もグラムを返すようにリッチモンド侯爵に要請していますが要請に従いません。なので、ジュピター様がグラムを奪い返せば全てが上手くいくと思います」


 「ヘルメス、ブラカリの町は神守教会の勢力を持ってしても倒せなかったのだぞ。それを『珍宝』だけでグラムを奪取するなんて不可能だ」



 ヴィスタが慌てて言う。



 「お前は黙っていろ」



 ジュピターがヴィスタを怒鳴る。



 「申し訳ございません」



 ヴィスタが謝罪する。



 「ヘルメス、名案だぞ。俺はお前の案を採用する。予定を変更してブラカリの町へ向かうぞ」


 「了解です」



 ヘルメスはニヤリと笑う・・・


 

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