第201話 神守聖王国オリュンポス パート10
「アレス、地下三階の三層には何があるの」
ソールがアレスに問いかける。
「ソール、このアトランティスの地下遺跡がどんなところか知っているのか?」
「知っているわ。確か・・・150年前に魔獣王に殺された人達を祀った遺跡と聞いているわ」
「その通りだ。この地下遺跡には魔王によって殺された何千という神守王国オリュンポスの人民達が眠る墓地であり祭壇である。だからこの地下遺跡にはたくさんの遺品や装飾品などが死体と共に埋葬されている。その遺品や装飾品が地下一階の一層に展示されて、観光名所となっている。そして地下二階の二層は大きな墓地になっていて、魔王によって殺された人民達の墓になっているのである。そして地下三層は、魔王を倒した英雄ユーピテル様のお墓になっているのだ」
ソールは聖魔教会側の人間なので150年前に現れたのは魔獣王だと認識している。
アレスは神守教会側の人間なので150年前に現れたのは魔王だと認識している。
「ユーピテルが地下三階にいてるの?」
ソールの顔が青ざめている。
「そうだ。ユーピテル様はハデスに魂を与えられて、ゾンビとして150年ぶりに復活をした。しかし、骨しかない状態での復活だったので、元の力を取り戻すのにたくさんの死体を食べているのだ」
「ユーピテルに死体を与えるために、ネプチューン公爵様は冒険者を派遣させていたのね」
「そうだ!以前は神光教団に刃向かった者を生贄として与えていたらしいしが、ユーピテル様の力がなかなか戻らなかった。しかし、偶然ネプチューン様にはむかった冒険者を与えたら、ユーピテル様に力がみるみると回復していったのだ。このことから、神技を極めた冒険者を与えると、ユーピテル様の力が戻ると判断したのだ。だから、ネプチューンはこの地下遺跡に冒険者を送り込むようになったのだ」
「それで『雲朕』が呼ばれたのね」
「そうだ。しかし『雲朕』は現れなかった」
「どういうことなの?」
「そのままだ。『雲朕』はこの地下遺跡には来なかったのだ。だから、お前達を連れてきたのだ」
『雲鎮』は危険を察知したのかこの地下遺跡にはきていないのであった。
「本当なら、3日前に『雲朕』がこの遺跡に訪れて、俺が『雲朕』を倒してユーピテル様に献上する予定だったのだが予定が変更されたのだ。でもそのおかげで俺はジュノに会えることができたのだ」
アレスは顔を赤くして言った。
「キャーーーー、運命よ。これは絶対に運命なのよ。ジュノ、アレスと付き合いなさいよ」
マーニが嬉しそうに言う。
「ジュノ・・・」
アレスはジュノを見つめる。
「その件はこの地下遺跡を出てからにしましょう」
ソールが慌てて言った。
ジュノはホッとした。
「ユーピテルを倒すのか」
アレスが言う。
「ユーピテルが完全復活する前に倒さないとネテア王妃様が危険だわ」
「そうだな。ネプチューンは俺とユーピテル様を使って、オリュンポス城に乗り込んで、デレク王とネテア王妃様を殺して神光教団の国を作ろうと考えているからな」
「デレク王を裏切るつもりだったのね」
「そうだ。ネプチューンは5年前の神守教会大会議にて、アポロと勢力争いに敗れてから、着々とこの計画の練っていたみたいだ」
「そうなのね。ネプチューン侯爵様の野望は絶対に阻止しないとね。アレスも協力してくれるのかしら」
「ジュノが望む方に俺は従うだけだ」
「キャーーーー、アレス、素敵だわ。愛する人のためなら仲間も裏切るのね」
マーニが嬉しそうに言った。
「ジュノ、俺はどうしたらいいのだ」
アレスがジュノに問う。
「アレス、協力してくれ。お前の力が必要だ。そして・・・ユーピテルを倒したら一緒に過ごそうではないか」
とマーニがジュノの声をマネて言った。
「俺の気持ちをやっと理解してくれたんだな・・・嬉しい・・・」
アレスはうなだれて泣き出した。
「いや・・・俺は・・・何も言っていないぞ」
ジュノが言う。
「ジュノ、あなたの気持ちを代弁してあげたわ」
マーニが真剣な面持ちで言った。
「ジュノ、アレスの姿を見てあんなに嬉しそうに泣いているわ。いまさらあの言葉はマーニでしたなんて言えないわ」
ソールがジュノをなだめる。
「そんな・・・」
ジュノは絶望的な顔をした。
「ユーピテル様は、神守教会を信仰している者にとっては神である。しかし俺はジュノの為なら、神にすら戦いを挑むぜ」
アレスは力強く言った。
「キャーーーー、アレス、かっこいいーー」
マーニが歓声をあげる。
ジュノはもう何も言えない状況になってしまった。
「三層に降りようぜ」
アレスが力強く言う。
「行くか・・・」
ジュノが全てを諦めたかのように静かに言う。
アレスはジュノに手を差し出して、2人仲良く手を繋いで階段を降りて行った。
「お似合いのカップルですわ」
マーニは2人の姿を見てウットリとする。
「・・・」
ソールは黙って三層に降りて行くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます