第200話 神守聖王国オリュンポス パート9



 「お前は・・・ジュノではないか!」



 アレスがサクラの正体に気づいた。



 「何のことかしら?私はサクラよ」


 「ジュノ、俺を騙せると思っているのか!」


 「何のことかしら・・・オホホホ」



 ジュノはしらを切る。



 「ジュノ、あの時の俺の思いの答えを教えてくれ」



 アレスが真剣に言う。



 「ジュノ・・・何のことかしら」


 

 ジュノはあくまでしらを切るのであった。



 「俺は真剣なんだ。俺はお前に会いたくてハデスのゾンビとなって生き返ったのだ。俺はお前を愛しているのだ」



 「キャーーーーー、素敵」



 マーニが大声で叫んだ。


 ソールは生まれて初めてマーニの大声を聞いた。


 アレスはブラカリへ侵攻する時に、ジュノを呼び出して愛の告白をしていた。ブラカリの町を滅ぼして帰ってきた時に、その時の答えを聞く予定であった。しかし、アレスはソール・マーニ姉妹によって殺されてしまったので、ジュノの気持ちを聞けずに死んでしまったのであった。



 「ジュノ、アレスにあなたの気持ちをきちんと伝えるべきだわ」



 マーニが真剣な顔でジュノを見る。



 「いや、その、あれで・・・」



 ジュノはしどろもどろになる。



 「・・・」



 ソールは触れてはいけないと思って何も言わない。



 「ジュノ、逃げてはダメよ。ちゃんとあなたの思いもぶつけるのよ」



 マーニが大声で言う。



 「アレス、あの時も言ったよな。俺は男だし・・・それにお前には全く興味がないと」



 ジュノの言い分はこうである。



 アレスはブラカリの町を侵攻する時に、ジュノを呼び出して愛の告白をした。ジュノはアレスを傷つけないように丁重に告白を断った。しかし、アレスはジュノの断りを受け入れることができず、必要にジュノに迫ったのであった。


 聞き分けのないアレスにジュノは、遠回しに断るのをやめてはっきりとアレスに興味がないと断った。しかしそれでもアレスはジュノのことを諦めることができず、ブラカリを無事に滅ぼすことができたら、その時にもう一度答えを聞かせて欲しいと言ってブラカリの町へ向かったのである。


 ジュノは本当は今回の任務に参加したくなかったのであった。ハデスの手によってアレスが生き返っていたら、面倒なことになるがわかっていたからである。なので、髪の毛をピンク色にして女性を演じてアレスにバレないようにしていたのであった。



 「俺がゾンビだからダメなのか」



 アレスがジュノに問いかける。



 「ゾンビとかそんな問題ではない・・・」


 「ジュノ、曖昧な返答はダメよ。アレスに失礼だわ」



 マーニがジュノをせめる。



 「・・・」



 ソールは無言を貫く。



 「ジュノ、俺はお前を一目見た時から愛してしまったのだ。俺は神守教会の教えを信じて、人間以外の人種は全て滅んでしまっていいと考えていた。しかし、死を直面してわかったことがあるのだ。俺が望んでいたのは、神守教会の言う人間のみが暮らせる世界を目指すのでなく、ジュノと共に過ごす世界だと・・・ジュノと一緒に過ごせるのならそれで幸せだと気づいたのだ」


 「アレス・・・素敵だわ」



 マーニが涙を流しながらアレスを称える。



 「気持ちは嬉しいのだが、俺はお前の気持ちにこたえることはできない」


 「そんな・・・」



 マーニが悲しげに言った。



 「どこがダメなの」



 とマーニが言った。



 「愛に性別は関係ないわ」



 とマーニが言った。



 「きちんとした答えを示して」



 とマーニが言った。



 「・・・」



 ソールは無言で3人を見守っている。



 「俺には好きな人がいるのだ」



 ジュノが答えた。



 「誰なのよ」



 マーニが言った。



 「俺は、フレイヤ団長を愛しているのだ」


 

「キャーーーーー、王国騎士団内での恋のトライアングルよ」



 マーニは顔を赤くして嬉しそうに叫んだ。



 「俺より団長を選ぶのか!」



 アレスが叫ぶ。



 「それが俺の気持ちだ。だからアレスとは付き合うことはできない」


 「そんな・・・・」



 アレスがうなだれる。



 「アレス、しっかりしなさい。そんな腑抜けた態度だから、フレイヤにジュノを取られるのよ」



 マーニはアレスを励ます。



 「しかし、俺は・・・」


 「アレス、まだフレイヤにジュノを取られたわけじゃないわ」



 マーニが言う。



 「どういうことだ」


 「ジュノ、フレイヤの気持ちは確認したのかしら?」


 「まだに決まっているだろう」



 ジュノはアタフタしてこたえる。



 「アレス、ジュノはまだ答えを出せていないのよ。だからまだチャンスは残っているわ」


 「本当か!」


 「本当ですわ」



 マーニが力強く答えた。


 ジュノは首を横に振りながら、『ない、ない』と意思表示をした。



 「そうだな。一度フラれたくらいで、諦めるのも男じゃないよな」


 「そうですわ、アレス。一度の失敗で諦めてはダメよ。あなたの思いは必ずジュノに届くはずよ」



 ジュノは大きく首を横に振って、『絶対にない』と意思表示をしたが2人には届かなかった。



 「アレス、これからどうするの」


 「ジュノと一緒にフレイヤ団長に会いに行くぞ」


 「それがいいわね。私もついて行ってあげるわ」


 「すまない」



 アレスはマーニに頭を下げた。



 「えーと、その、アレスは私達と戦っていたのじゃないのかな・・・」



 ついにソールが口を開いた。



 「ジュノの答えが出るまでは一時休戦だ」



 アレスが答える。



 こうして、アレスが一時的だが仲間に加わったのであった。

 

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