第360話 魔石国家ケルト王国編 パート30
「これで終わりか・・・しかし、まだここから出ることができないぞ」
プロメーテウスは周りを見渡すが『アナザータイム』の世界の風景は変わらない。
「困ったものだ。『アナザータイム』の僕は全然やる気がないみたいだね」
『アナザータイム』の世界の上空からひょっこり僕が顔を出す。
「まだ居たのか・・・お前が何人居ようが結果は同じだ。潔く降参しろ!そうすれば、俺の配下として使ってやるぞ」
レクイエムアックを僕に向けて、プロメーテウスは偉そうに言い放つ。
「二人の僕の死体があるね」
別の『アナザータイム』の世界からきた僕が呟く。
「戦うのは面倒だなぁ」
さらに別の僕が呟く。
「僕は死んでいないよ」
胴体が半分になった僕が立ち上がる。
「死んだふりだよ」
もう一体の死体の僕も起き上がる。
「うっとしい奴らだ!」
プロメーテウスはレイクイムアックスを振りかざして、僕に目掛けて振り落とす。僕の体はレクイエムアックスに吸い寄せられるようにその場を動くことができない。僕の頭上にレクイエムアックスが落ちてくる。
『ガチャン』
激しい金属音が鳴り響いた。
「そんなバカな・・・」
プロメーテウスは、目を見開いて驚いている。
レクイエムアックスは僕の体を引き裂くことができず、レクイエムアックスが折れてしまった。
「もっと素材の強度を上げたほうが良いよ!」
僕はプロメーテウスにアドバイスをする。
「これは天界の秘宝オリハルコンでできているのだ。折れるなんてありえない」
プロメーテウスはレクイエムアックスが折れたことに動揺して、体がかたまって動けない。
「オリハルコンかぁ・・・確かにいい素材だね。でも、僕が少し魔力で体を強化したらオリハルコンでは無理だよ」
「なぜだ!さっきまでは真っ二つに切り裂いたはずだ・・・」
プロメーテウスは動揺して頭を掻きむしっている。
「『アナザータイム』の僕は遊んでいたのだよ。君が勝ち誇って嬉しそうにする顔を見たかったのだよ」
「俺は遊ばれていたのか・・・」
「そうだね。君の魔力量を見たら雑魚鑑定だったからね。これで実力差はわかったよね。僕の話を聞いてくるかな?」
「報告書のことか?」
「そうだよ。ケルト王国に渡した全ての魔石具を回収して、報告書を出してくれたら命だけは助けてあげるよ」
「断ったらどうなるのだ」
「この世界から出られないだけだよ。しばらく時間をあげるから考えてね」
僕はそう告げると『アナザータイム』から元の世界に戻った。そして、さまざまな『アナザータイム』の世界からきた僕たちも帰って行った。
「早く連れて行くのですぅ」
クーフーリンに、美味しいパン屋さんに連れて行くようにせがむフェニ。
「俺はお前を倒しにきたのだ」
職務を全うしよとするクーフーリン。
「クーフーリン、その子の願いを叶えた方がいいと思う」
ダグザはフェニの力を知っているので、無用な戦いを避けたいのである。
「しかし、テウス様の指示が・・・」
クーフーリンは困惑している。
「クーフーリンさん、テウスはもう人界には戻ってこないよ」
『アナザータイム』の世界から帰ってきた僕はクーフーリンに告げた。
「どういうことだ」
「テウスは2度と人界には来れなくなるのだよ。彼はあまりにも人界に関与し過ぎたので、罰を受けることになる。そして、君たちの魔石具も没収するよ」
「テウス様が負けるがはずがない」
「その子の言っていることは本当ですわ」
僕はずっと気になる気配を感じていた。プロメーテウスとは比べ物にならないくらいの魔力を持つ女性の存在を。
「やっと姿を現したのだね」
「そうね。君は私を警戒していたみたいだね」
「そうだね。でも殺気を感じなかったので問題はないと思ったけどね」
「私は気づけなかったですぅ」
フェニは寂しそうに言った。
「彼女の魔力偽装は完璧だから、フェニはまだ気づけなくて当然だよ」
「もっと修行をしないとダメですぅ」
フェニはしょんぼりする。
「プロメーテウスの処罰しにきたのですが、あなたに任せるわ。彼を捕らえるつもりだったけど、あなたの好きにするといいわ。それに私たちが関わるのは危険でしょ」
「そうだね。僕もそれでいいと思うよ。彼の処分は後で決めるよ」
アプロスはそう告げると上空に消えて行った。
「クーフーリン、敗北を認めよう。もう、テウス様は戻ってこない。これ以上戦う意味はないのだよ」
「そうだな」
クーフーリンはアプロスの言葉を聞いて、全てを悟ったのである。
「クーちゃん!早くパン屋に行くのですぅ」
フェニはクーフーリンに鎧を掴み急かすのである。
「わかった。すぐに案内する。だからおとなしくしてくれ」
激しく鎧を引っ張るフェニに、クーフーリンは困惑していたのである。
「ダグザさん、テウスがケルト王国に持ってきた軍事目的の魔石具を全て回収して下さい。そうしないと僕がこの国を滅ぼさないといけなくなります」
「わかりました。私が全ての魔石具を回収してきます」
ダグザは素直に僕の言ったことを了承した。
「クーちゃん、すぐに私を美味しいパン屋に連れて行くのですぅ」
「わかっています」
クーフーリンは巨人化して、フェニを肩に乗せて急いでケルト城にあるパン屋さんに向かった。
「フェニちゃんのパン好きには困ったものですね」
リヴァイアサンが優しく微笑んで言う。
「そうですね。私たちも急いで向かいましょう」
レオは『ライオンモード』能力を発動して、ライオンに変してリヴァイアサンをエスコートする。
「僕も行くよ」
僕はアバオシャを呼び出して、フェニの後を追うのであった。
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