第361話 魔石国家ケルト王国編 パート31


 クーフーリンとダグザの紹介なので、フェニはケルト城の一角にある美味しいパン屋に入る許可をもらえた。



 「ホッカホッカでフッワフッワでとても美味しいですぅ」



 パンをほうばっって嬉しそうにフェニは言う。



 「本当ですわ。こんな美味しいパンは地底国家にもユグドラシル【竜人国家】にも存在しないわ」


 

 リヴァイアサンも嬉しそうにパンを食べている。



 「本当だね。こんな美味しいパンは初めて食べたよ」



 魔界でもこんなに美味しいパンを食べたことはない。



 「パン屋の責任者を連れてきてください」



 フェニが大声で叫んだ。



 「少々お待ちください」



 フェニは、この国で最強を誇る英雄の魔石具団の団長2人の紹介でパン屋に来ているので、店員たちは国賓級の扱いをしているのである。



 「私がこのパン屋の店主のコウボです」



 コウボはフェニに深々と頭を下げる。



 「どうしてこのお店のパンはこんなに美味しいのですぅか?」



 真剣な眼差しでフェニは問いかける。



 「炎の魔石具のおかげです。パンを美味しく焼き上げるには温度の管理が難しいのです。しかし、炎の魔石具を使えば、温度管理も簡単になるのです」


 「その魔石具を譲ってほしいですぅ。お金ならいくらでもあります」



 フェニは大金をテーブルの上に叩きつける。



 「申し訳ありません。これはテウス様から頂いた高級な魔石具です。どんなに大金を積まれてもお譲りすることはできません」



 コウボは深々と頭を下げながらフェニの申し出を断った。



 「その魔石具を見せてもらえるかな?」



 僕もこの美味しいパンを魔界でも再現したと思っていた。炎の魔石具は魔界でもあるがどのように使いこなせば、こんなに美味しいパンを焼くことが出来るのか確かめたいのである。



 「お見せする事はできますので、工房を案内します」



 僕たちはコウボに案内されて、パンをどのように作っているか説明してもらった。僕はじっくりと説明を聞いて、この美味しいパンを再現できると確信した。



 「フェニ、僕ならここで使っている5種類の炎の魔石具とパン焼き釜をを再現することが出来るよ」


 「リプロ様、本当ですぅか?」


 「本当だよ。だからホロスコープ星国でもこの店と同じ美味しいパンを食べることが出来るようになるよ」


 「嬉しいですぅ」



 フェニは店の天井を突き破る勢いでジャンプして喜んだ。



 「リプロさん、ユグドラシルにもこのパンを再現して欲しいわ」



 リヴァイアサンもかなりこのお店のパンを気に入ったみたいである。


 

 「リプロ様、私からもお願いします。ホロスコープ王国など後回しでいいので、先にユグドラシルにパン屋を作ってください」



 レオは土下座をしてお願いする。



 「ライちゃんひどいですぅ〜ホロスコープ星国の方が先ですぅ」


 「レオさんの気持ちは嬉しですけど、ホロスコープ星国の次でもいいのよ」



 リヴァイアサンは大人な対応をする。



 「僕にはあまり時間がないけど、2人のために作ってあげるよ」



 リヴァイアサンにもお世話になったので、その恩を返そうと思った。そして、フェニは僕にとって可愛い妹のような存在なので、どちらか一方というわけにはいかないのである。



 「時間がないのならすぐに向かいましょう」


 「まだ、食べてる途中ですぅ」


 「リプロさんは忙しいのですよ。美味しいパン屋をホロスコープ星国に作れなくなってもいいのですか?」



 リヴァイアサンは、僕の時間のこと気にかけてくれている。



 「どっちもいるのですぅ」



 フェニはパンを口にほうばって、店に置いてあるパンを全て買い占めた。



 「お金はここに置いていきますぅ。残ったお金はグリシャにお金を騙し取られてイベリアの村の人に渡してくださいですぅ」


 「毎度ありがとうございました」


 「残りのお金は私が責任を持ってイベリアの村人にお渡しします」


 

 ダグザが言った。



 「ダグザさん、魔石具の回収の件もお願いするね。二日後にケルト城に取りに行きます」


 「わかりました。ガリアの町にある全ての軍事目的の魔石具を回収いたします」


 「リプロさん、急ぎましょう」



 リヴァイアサンはドラゴンの姿に変身した。



 「私が、皆さんをお運びしましょう」


 「リヴァイアサン様の背中に乗るなんてできません」



 レオは顔を真っ赤にしている。



 「わーい。ドラゴンに乗れるなんて嬉しいですぅ」



 フェニは喜んでリヴァイアサンの背中に乗った。



 「僕もお言葉に甘えて乗せてもらうよ」



 僕も飛び乗った。



 「レオさん、遠慮しなくてもいいですわ」


 「わかりました。それでは、私も乗せてもらいます」


 

 レオは嬉しそうにリヴァイアサンの背中にしがみついた。



 「リヴァイアサンの温もりを感じます」



 レオは幸せそうに言った。



 数時間後。



 「着きましたわ」



 『ホロスコープ星国』の王都シリウスに着いた僕たちはフェニの案内で王都で1番美味しいパン屋に案内された。


 僕は、王都シリウスに着いた時に何か懐かしいオーラを感じた。しかし、それが何か気づくことはできなかった。



 「ここが美味しいパン屋です。このお店にケルト城の美味しいパンを再現できるようにして欲しいですぅ」



 僕はパン屋の主人に経緯を説明して、パン屋のリフォームの許可を得た。もちろん、『ホロスコープ星国』をジェミニの悪政から解放してくれたフェニの頼みなので快く了承してのである。


 僕は1時間くらいで、新たなパン焼き窯を作って炎の魔石具をセットした。そして、パン焼き窯と魔石具の使い方を説明した。



 「フェニ、僕は今からリヴァイアサンの住むユグドラシルに行くけど、着いてくるかい?」


 「もちろんですぅ。竜人国家を見てみたいですぅ」


 「リヴァイアサン様がいるところなら、私は地獄の果てでも着いていきます」



 呼んでもいないけどレオもついて来ることになった。

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