第359話 魔石国家ケルト王国編 パート29
クーフーリンは僕たちの目の前に降りたきた。
「君がダグザを倒したのか?」
「そうですぅ。でも、そんなことよりも、テウちゃんにケルト城にあるパン屋に行く許可をもらって欲しいのです」
「フェニ、パン屋を紹介してもらうのは後にしたほうがいいよ」
「そうですよ。あの神人は、私たちの話になんて聞く耳を持たないと思うわよ」
僕とリヴァイアサンはフェニを説得する。
「嫌ですぅ。焼き立ての美味しいパンを食べたいのですぅ」
「さっきたくさん食べたよね?」
「パンは別腹なのですぅ。だから美味しいパンはいくらでも食べれるのですぅ」
フェニは駄々をこねる。
「クーフーリンさん。悪いけど、ガリア城にある美味しいパン屋にフェニを連れて行ってもらえるかな?」
僕はフェニのわがままを聞いてあげることにした。
「何を言っているのだ・・・俺はテウス様の命令でこの子を倒しにきたのだぞ!」
「リヴァイアサン、僕はテウスに用があるので後は任せます」
「わかったわ。でも相手は神人よ!油断しないでね」
「ありがとう。気をつけるよ」
僕は、フェニのことをリヴァイアサンに任せてプロメーテウスのいる観客席に向かった。
「何をしている!早くそのガキを殺してしまえ」
プロメーテウスはイライラして怒鳴りつける。
「テウスさん、お話があります」
僕はプロメーテウスの側にやってきた。
「お前は誰だ!俺に直接声をかけるなんて、無礼にもほどがあるぞ。ダグザ、こいつを叩きのめせ」
しかし、ダグザは返事をしない。
「ダグザ・・・」
プロメーテウスは異変に気づいた。プロメーテウスが周りを見渡すと誰もいないのであった。
「何が起こっているのだ」
「他の人がいると邪魔なので、別の時間の世界にきてもらったよ」
僕は『時の守護者』の能力の一つ『アナザータイム』を使った。『アナザータイム」とは、元の時間とは別の時間の世界を作り出す能力である。
「お前は何者だ!」
僕は、人間の姿から魔人の姿に変身した。頭からは黒い鋭い2本のツノが生えて、背中からは黒い尖った美しい翼が生えた。
「プロメーテウス、あなたは天界のルールを破りましたね」
「お・お・お前は・・・魔族なのか?!」
「そうです。ケルト王国はあまりにも魔石技術が高いので、天界の関与があると睨んでいました。生活が改善するような魔石具なら見逃すことにしていましたが、軍事目的に多量の魔石具を使っているのを確認することができました。人界のバランスを崩した罪を償ってもらいます」
「まさか腰抜けの魔族が来るとは想定してなかったわ。しかし、俺に罪を償わせるだと笑わせるな!魔族ごときが俺に勝てると思っているのか」
プロメーテウスは、自分の力に自信があるので罪を認めるどころが威嚇してきたのである。
「あなたこそ、僕に勝てると思っているのですか?あなたの配下を見て、あなたの実力はわかりました。今すぐ人界から撤退して、どのように人界に介入したか報告書を出せば、命だけは助けてあげます」
僕の目的の一つは、ケルト王国に視察に行ったナレッジの嘘の報告の立証である。プロメーテウスが素直に人界への過度な介入を認めて報告書を出せば、ナレッジの嘘を証明できるのである。
「残念だが、俺はアトラースとの賭けがあるだ。だから、今人界から撤退することはできない。それに、魔族にビビって撤退したと神人たちに知られると俺の威厳がなくなるのも困るのだ」
「過度な人界への介入は神も許さないはずです」
「魔族のお前が何を知っているというのだ。神は俺が人界で何をしようが許してくれるのだ」
「そうですか・・・それなら仕方ありませんね。力ずくて反省してもらいます」
「ハハハハハ・・・面白い。俺を力ずくで倒すつもりなのか?神人の恐ろしさを教えてやるぞ」
プロメーテウスは、能力を使い5mの大きな巨人になった。そして、大きな斧を取り出して僕に斧を振りかざしてきた。
「ティターン様から授かった巨人族の力と、俺が作った最強の魔石具を埋め込んだレクイエムアックスの威力を己の体で体感するがいい」
と能書を垂れながら僕の頭にレクイエムアックスを叩きつけた。
レクイエムアックスは僕の体を真っ二つ切り裂いた。
「たわいもない奴め!力の差を見せつけられて、ビビって動くこともできなかったみたいだな」
プロメーテウスは、僕の真っ二つ切り裂かれた体を見て、ニヤニヤと笑いながら勝利を確信した。
「戻るとするか」
プロメーテウスは、『アナザータイム』の世界から出よとするが出ることができない。
「あいつは死んだはずだ。なぜこの世界は壊れないのだ」
基本、術者が死ねば術は解除されるのが普通である。
「ここから出せ」
プロメーテウスはレクイエムアックスを振りかざして暴れ回るが、『アナザータイム』の世界からは出ることはできない。
その時、『アナザータイム』の世界の上空から一人の少年が顔出した。
「この世界の僕は死んだのかな?」
その少年は、先ほどプロメーテウスに殺されたはずの僕であった。
「お前は死んだのではないのか・・・」
「そうみたいだね。でも、僕は生きているよ」
「どうなっているのだ」
「この世界は僕が作ったもう一つの世界なのだよ。君は僕を倒すことができたみたいだね。僕に勝つことができておめでとう」
「何を言っているのだ。意味はわからないが、お前を倒せばここから出ることができるのだな」
上空を浮遊する僕に向かってプロメーテウスが、レクイエムアックスを振りかざす。僕は避けよとするが体が動かない。
「俺のレクイエムアックスからは逃れることはできないぜ。レクイエムアックスに埋め込まれている魔石具は、魔石を磁力のように引き寄せるのだ。魔力が強いほど引き寄せる力は強大になる。魔族のお前の強い魔力が仇になったのだな」
レクイエムアックスから逃げることができない僕は真っ二つに引き裂かれるのであった。
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