第391話 ボルの人界征服編 パート4

 

 サラちゃんが王都シリウスの門の前に籠を下ろしてくれた。



 「ポロン、3人の護送を頼むぞ」


 「わかったわ」



 私とポロンさんそしてサラちゃんの3人は、ジェミ達をシリウス城にいるポルックスのところへ連れて行くことになった。そして、ロキさんとトールさんそして小ルシスの3人が謎の魔力の持ち主を待ち受けることにした。


 トールさんとロキさんの2人でも私の感じた魔力の持ち主に勝てるか不安であったが、小ルシスがいれば問題ないと思ったのである。それに私もジェミニ達をポルックスの元に届けたらすぐに戻るつもりでいた。



 「ポルックスさんに依頼されたジェミニ達を連れてきましたわ」


 「ご苦労様です。どうぞ中へお入りください」



 シリウスの門兵は私たちを丁重にで迎えてくれた。



 「ジェミニ様、ご無事で何よりです。私もお供させてもらってよろしいでしょうか?」



 今は王都の門の護衛を担当しているアリエルがジェミニに頭を下げる。



 「俺の姿を笑いに来たのか・・・」


 「そんなことはありません。私はまたみんなと一緒にやり直せたらと思っています」



 アリエルは、これまでの行いを反省して真面目に『ホロスコープ星国』のために生きようと思っているのである。そして、本当は選挙に出て王になりたいと思っていたが、ポルックスの提案で『星の使徒』は王になれないのである。



 「卑屈にならないでくださいジェミニ様。みんなで一からやり直しましょう」



 カプリコーンが優しく声をかける。



 「そうだな・・・少し卑屈になっていたな」


 「さぁ、ポルックス様のところへ行きましょう」


 「おい!そこのちっこいの。この町に何か美味しい食べ物はないのかしら?」



 アリエルは『星の使徒』の中では1番の小柄な体格をしているが、さらに小柄なサラちゃんが偉そうにアリエルに声をかけた。



 「これは可愛らしいお嬢様。あなたがジェミ王様を運んでくれたのですか?」


 「そうよ。私がはるばる『オリュンポス国』から連れてきてやったのよ。だから、何か美味しい食べ物を私に用意するのが礼儀ってものよ!」


 「はいはい。わかりました。すごく頑張ったんですね」



 アリエルは子供を諭すかのように言った。



 「アリエル、そのお方は精霊神のサラマンダー様だぞ。失礼な態度は命取りになるから気をつけろよ」


 「ほ・ほ・本当・・・なのか!?」


 「アリエル・・・本当だ。俺たちがおとなしくしているのは、改心しただけではないのだ。俺は『オリュンポス国』でコテンパにやられた上に、精霊神サラマンダー様とその召喚者様と同行しているのだ。少しでも失礼な態度を取るとどうなるかわかったものではないぞ。人を見た目で判断すると大変なことになるぞ」



 ジェミニはアリエルに忠告する。



 「失礼しましたサラマンダー様、実は最近王都のパン屋が改装して、かなりパンが美味しくなったと評判になっています。あそこのパン屋は以前から美味しいパン屋で有名でしたがさらに美味しくなったので、毎日長い行列ができるほどの人気となっています」


 「それは、気になるわ。ルシスちゃんあとのことは任せるわよ」



 サラちゃんは、アリエルを連れて颯爽と町の中へ消えていった。



 「ポロンお姉ちゃんは、ついて行かないでくださいね」



 私はポロンさんに釘を刺すのである。


 しかし、ポロンさんの体はブルブルと震えている。パン好きのポロンさんにとって、美味しいパン屋があると聞いて黙っていることはできないである。



 「ポロンお姉ちゃん、せめてジェミニをポルックスさんのところへ連れて行ってからにしてくだい」


 「もちろんよ」



 ポロンさんは、ジェミニ達に全力で走れと命令して急いでシリウス城へ向かう。



 「ポロンお姉ちゃん待ってください」



 私も慌ててポロンさんを追いかけた。





 「ロキ、なんだか寒気がしないか・・・」


 「そうね。この寒気は、あのおぞましい魔力のせいだと思うわ」



 ロキさんとトールさんも感じ取っていた。王都シリウスに向かってくる強大な魔力を。



 「やっとミョルニルの力を発揮できる時がきたが・・・体の震えが止まらないぜ」


 「トール、あなたでも緊張することがあるのね」


 「ロキ、お前は冷静だな。こんな化け物みたいな魔力を感じているのに冷静でいれるわけがないぜ」



 トールさんはビビっていた。トールさんは今まで自分より格上の相手と何度も戦ってきた、そんな時でもトールさんは格上の相手との戦いを楽しんでした。しかし、今回は違うのである。今までに感じたことのない禍々しい魔力を感じていたからである。



 「トール来ましたわ」



 ロキさん達の上空を銀髪の男が、ものすごいスピードで通り過ぎようとした。



 「そこの化け物!止まりやがれ」



 トールさんは、震える体を無理やり抑え込んで大声で怒鳴り上げた。



 銀髪の男は急停止した。



 「俺に言ったのか?」



 銀髪の男は翼を大きく広げながら空中で静止している。



 「お前意外に誰がいるのだ。お前は何しにここへ来たのだ!」



 トールさんは虚勢を張るように大声を出す。



 「矮小な生き物よ。俺のありがたい話を聞かせてあげよう。俺は表天界の『一天四神』の1人である神人のムーンだ。お前達のようなゴミ虫をこの人界から消滅させるために、表天界からきてあげたのだ。感謝して死んで行くがよい」


 『クレセントムーン』



 ムーンは、手のひらから三日月の形をしたブーメランのような鋭い刃物を出して、トールさんの体を引き裂こうとした。


 『クレセントムーン』はものすごい速さでトールさん目掛けて飛んでくる。



 『メガトンハンマー』



 トールさんは、ミョルニルに魔力を込めて自分の背丈くらいにミョルニルを大きくして、『クレセントムーン』を叩き潰す。




 「ゴミ虫が俺の『クレセントムーン』を叩き潰すだと・・・生意気な奴らだ。もう少し力を出すか」



 『フルムーン』



 ムーンは先ほどよりも大きな満月のような光の球を出して、トールさんに目掛けて投げつけた。



 「これで終わりだ」



 ムーンは勝利を確信した。



 



 

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