第92話 エルフの国へ
「サラちゃん。エルフの国へ連れて行ってください」
「行きたくありませんわ」
「なぜなの?」
「それは・・・・」
いつものサラちゃんと雰囲気が違う・・・もしかしたら、何か行くことのできない原因があるのでは・・・
「サラ、お願いだ。俺たちをエルフの国へ連れて行ってくれ」
サラちゃんの様子が、いつもと違うと感じたトールさんが、真剣にお願いしている。とても珍しい光景だ。
「しかし・・・あの国には・・・」
「サラマンダー様は、妖精の王オーベロンに・・・」
「イフリート余計なことは言わないでよ」
これは、エルフの国へ行けないただならぬ原因があるに違いないと私は感じた。
「しかし、サラマンダー様。いつまでも逃げているわけにいきません。これを機会に、オーベロン王に会いに行くのも良いかと思います」
「でも・・・・」
「サラちゃん・・何か事情があるのね。私でいいなら力になってあげるわ」
ポロンさんが、心配そうに声をかける。
「俺も力になるぜ」
「私もよ」
「私もです」
「でも・・・」
サラちゃんは真剣に考え込んでいる。
「サラマンダー様覚悟を決めましょう。皆さんも同行してくれると思います。全員で謝れば許してもらえると思います」
「あ・や・ま・れ・ば・・・だと。サラ、いったい何をしたんだ」
「実はサラマンダー様は、数十年前に行われた妖精大会議に出席した時の会食にて、オーベロン王が、最後に食べようと大事に残していた雷光石を勝手に食べてしまったのです。雷光石を食べられたオーベロン王は、怒涛のように怒りサラマンダー様と一週間にも及ぶ戦闘をしたのです。他の聖霊神の仲裁で、なんとか怒りを鎮めたオーベロン王は、サラマンダー様の妖精の山への出入り禁止を言い渡したのです」
「くだらん。サラ、エルフの国へ行くぞ」
心配した私たちがバカであった。たぶん、こんなことだろうと思っていたが、本当にそうだとは思わなかった。
「いえ、大問題です。サラマンダー様が出禁になっているので、ポロンさんも妖精の山に入る事はできないのです」
「そうですわ。あの山に入りたいのなら、食いしん坊王のオーベロンに出禁を解いてもらわないといけないわ」
「サラが謝ればいいじゃないか」
「それは、できませんわ。私は何も悪いことはしていませんわ」
「サラが、雷光石を勝手に食べたのが悪いのだろう」
「私は悪くないわ。オーベロンは、妖精王のくせに1人1個しか雷光石を用意できなかったのよ。なので無能の王が悪いのですわ。雷光石一個では、私は満足できませんわ」
「確かにそうだな」
トールさんは納得した。
トールさんが納得したのは当然である。妖精王は、王たる器の大きさを他の4大精霊神に示さなければいけない。会食を開くなら、雷光石を1人1個なんて少なすぎるのである。これはサラちゃんが言っていることが正しいのである。
と言うことは絶対にない。トールさんは、サラちゃんと食いしん坊仲間なので、サラちゃんの意見に同意をしたみたいであるが・・・
「しかし、妖精の山に入れないのは問題です。それに、オーベロン王と不仲なら魔石の覚醒をお願いすることはできません」
「それならば、オーベロン王との和解が最優先でしょう」
ロキさんの言う通りである。なんとかオーベロン王と和解したいが、肝心のサラちゃんは謝る気が全くないのである。
「雷光石を、オーベロン王に献上すれば許してもらえるはずです」
イフリートが、解決策を出してくれた。
「それがいいと思いますわ」
「そうしようぜ」
「そうしましょう」
「私の分もお願いしまーーーす」
1人を除いて、みんなの意見は一致したので雷光石を探すことにした。
「イフリート、雷光石はどこにあるのだ」
「雷光石は、エルフの国に近くにある鬼の島に生息するフラッシュフライを、倒せば手に入ります」
「鬼の島はオーガという魔獣の住処ですわ。島からは、妖精が嫌がる瘴気が噴き出ていて、妖精族は、近寄るこができないところですわ」
「それで、なかなか入手できないのだな」
「そうなのよ。あの瘴気を吸うと気分が悪くなって暴れ倒してしまうので、鬼の島には入らないように、オーベロン王にも言われているわ」
「エルフも、あの島の瘴気は苦手ですわ」
「そうなのか。それなら、ポロンとサラ抜きで鬼の島に行く事になるな」
「そうね。ポロンはエルフの城に戻ってアビスの件を任せるわね」
「わかりましたわ。アビスの件は私にお任せあれ」
「ポロンさん。美味しい料理を、期待していますわ」
「私は、美味しいお酒をお願いする」
今回の旅は二手に分かれることになった。私とロキさん・トールさんで鬼の島へ。ポロンさん・イフリート・サラちゃんはエルフの国へ。
私たちは、サラちゃんに運んでもらって、エルフの国アルフヘイム妖王国へ向かった。
エルフの王の住む王都はゴールウェイという。私たちが目指す鬼の島は、ゴールウェイの東にある海に浮かぶ島である。
サラちゃんには、私たち3人を鬼の島の近くに降ろしてもらった。私たちを降ろしたサラちゃんは、ゴールウェイに向かって飛んでいった。
「雷光石を、期待してるからねーーー」
これは、オーベロン王にだけじゃなく、サラちゃんの分も必要であると思った。
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