第93話 鬼の島パート1
鬼の島へ渡るには一つしか方法はない。それは、鬼の島へ通じる大きな橋を渡っていくことだ。船を用意して渡ることもできるのだが、あいにく船は用意してないのである。
「橋を渡りましょう」
「ルシス、正面から行くのは危険じゃないか」
「確かにそうかもしれない。でもトール他に方法がないわ」
「簡単じゃないか。海の上を渡ればいいじゃないか」
「トール、そんなことができるの?」
「簡単さ。まず右足を海に入れる。そして、右足が海に沈む前に左足を海に入れるんだよ。それを繰り返せば、海に沈む前に海を渡り切ることができるぜ」
「それは・・・無理でしょう」
「俺が手本を見せてやるぜ」
そういうと、トールさんは海に向かって走り出した。
「ジャボーン」
当然の結果であった。そんな方法で、海を渡れることはできるはずはなかった。しかし、私は、異世界ならそんな方法で渡ることができるのかと少し信じてしまっていた。期待外れの結果であった。
「おかしいなぁ。俺の化学的理論だと渡れるはずなんだけどな」
「・・・・橋を渡ることしましょう」
ロキさんは、呆れて怒る気力もない。
私たちは、鬼の島へ向かって橋を渡る事にした。鬼の島は、オーガの住処なので私たち以外に、橋を渡っているものは当然いない。橋の先の方にも魔獣などの姿は見えない・・・が私にはわかっていた。この橋を守る魔獣がすぐ近くにいることを。
「ロキお姉ちゃん、トールお姉ちゃん、魔獣がもうすぐ上から降りてきます。戦闘の準備をしてください」
「わかったぜ」
「了解よ」
「お前達ここに何しにきた」
雲に乗ったオーガがあらわれた。そのオーガは、黄色の燃える髪を持ち背中には小さなたくさんの太鼓が円形になって連なっている。このオーガは雷神オーガである。
「雷光石を取りに来ました。通っても良いですか」
私は真摯に答えた。
「そうか。そうか。雷光石を取りに来たのか。それなら通ってよし・・・とでも言うと思ったか。雷光石は貴重な石だ。お前らに渡すわけにはいかない。ここから立ち去れ」
「わかりました。立ち去ります・・・というと思いましたか。私たちは、どうしても雷光石が必要なのです。ここを通らせてもらいます」
「今日のルシスは強気だな」
「ルシスちゃんの言う通りよ。ここを通らせてもらうわ」
「ならば、俺を倒していくがよい」
「俺が倒す」
「私が倒すわ」
「久しぶりに戦いたいです」
私たち3人が誰が戦うか揉めていると、雷神オーガが怒って太鼓をドンドンと叩き出した。太鼓を一回叩くと、大きな稲妻が私たち目掛けて飛んでくる。雷神オーガは二本のバチを使って、リズミカルに太鼓を叩き続ける。無数の稲妻が私たちを襲う。
しかし、無数の稲妻は、私の張っているライトシールドに全て弾き返される。弾き返された稲妻が、雷神オーガを襲う。予想だにしないことが起こり、雷神オーガは稲妻を避けることができず黒焦げになって倒れてしまった。
「よし、じゃんけんで、決めるぞ」
「わかったわ」
「わかりました」
「じゃんけん、ほい」
「やったぁーー。私が勝ちました」
私じゃんけんで勝ったので、私が戦うことが決定した。久しぶりの戦闘でワクワクしている。相手はあの伝説の雷神だ。雷の攻撃には気をつけないといけない。でも私にはライトシールドがあるので大丈夫であろう。
「さぁ、雷神オーガさん。私が戦います・・・・・あれ・・・・雷神さんが見当たらないです」
「ルシス、そこで黒焦げになっているのが雷神オーガじゃないのか」
「ガーーーン」
いつの間にか、雷神オーガを倒していたのであった。せっかくの私の出番が何もすることなく終わったのであった。
「この雲は俺らでも乗れるのか」
トールさんは、雷神オーガの乗っていた雲に乗ろうとした。
「おお、これは面白いぜ」
トールさんが、雷神オーガの乗っていた雲に乗っている。とても楽しそうである。私も乗ってみたい。
雷神オーガの乗っていた雲は、雷・風属性の魔石の持ち主なら操縦することが可能みたいである。なので、ロキさんは操縦することはできなかった。私は全属性持ちなのでもちろん操縦することはできるのである。
「ルシスは、空が飛べるから雲は必要ないだろ。これは俺がもらっていくぜ」
トールさんに、雲の運転をさせてもらえなくて、私はとても悲しかった。私も雲を必ずゲットしてやると心に誓うのであった。
このまま、橋を渡って鬼の島に入るのは危険だと判断して、ロキさんはトールさんの雲に乗り、私は空を飛んで上空から鬼の島へ侵入する事にした。
橋を進むと大きな門があり、そこには体長10mもある3体のジャイアントトロールが門を守っていた。ジャイアントトロールは、毛むくじゃらの大きな巨人であり頭には三つのツノがある。そして、一つ目で鼻と耳が異様に長くとても醜い顔をしている。ジャイアントトロールは、再生可能な細胞を持っているために不死の巨人とも言われている。
私たちは、ジャイアントトロールが、守る門を避けて鬼の島に入る事にした。
鬼の島は、至る所から熱湯や水蒸気が吹き出している。おそらく間欠泉がたくさんあるのであろう。妖精が嫌がる正気とは、もしかしたら硫黄の匂いのことかもしれない。あのどくどくな卵が腐ったかのような匂いを瘴気と呼んでいるのだろう。
私は、温泉に入れるかもしれないと思いワクワクしてきたのであった。
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