第251話 ホロスコープ星国 パート28
★フェニ視点に戻ります
私は、たくさんの兵士がいるが気にせずに王都シリウスの門に近付いて行った。しかし、私が門番のところへ行く前に、目の前にとても美しい女性が現れたのであった。
「王都へようこそ」
女性は笑顔で私に声をかけてきた。
「???」
私は急に女性が話しかけてきたのでキョトンとしていた。
「とても可愛いい女の子ね。私のタイプだわ!今日は王都に泊まる予定なの?」
女性は、私がキョトンとしているのにマイペースで私に話しかけてくる。
「宿屋に泊まるよりも、私の家に来ないかしら?とても大きな屋敷に住んでいるので、宿屋よりも快適よ」
女性はグイグイと私を誘ってくる。
私は突然の出来事でキョトンとしていたが、女性が話している内容をようやく理解してきた。この女性は私を誘拐しようとしているのだと思った。
私はまだ親が生きていた時に、よく親に言われていたことがある。それは、知らない人が優しく声をかけて、どこかへ連れ出そうとする時は、危険なので付いて行ってはいけないと。
魔法を使える女の子はこの世界では重宝されるので、女の子を誘拐して、売り飛ばそうとする悪い人がいると親からは散々言われてきた。しかし、以前は私は男の子だったので、そんな危険な目に会うことはなかったのだが、今は私は女の子である。早速、私を誘拐する悪いヤツに遭遇したのだと思った。
「結構です。私は王都の宿屋に泊まります」
私はキッパリと断った。私はリプロ様に教えてもらった魔法の力がある。この美人のお姉さんが強引に私を連れ去ろうとしても、やっつけてやる自信はある。
「美味しい手料理も用意するわよ」
女性は屈託のない笑みで私を誘惑するように微笑んだ。
私は、関所を通過してから軽く食事を済ませたが、またお腹が減ってきている。しかし、ポルックスにもらった大金があるので、食事の誘惑に負ける私ではない。
「結構です。私は知らない人の家になんか行きません」
私は堂々と言った。私の堂々たる態度には、争いに巻き込まれて亡くなった両親も誇らしげに見てくれているだろう。
「可愛らしいお馬さんも連れているのね」
女性はベガちゃんを撫でる。
「可愛いでしょう!」
私は大好きなベガちゃんを褒められて嬉しい。
「私の家には大きな厩舎があって、お馬さんもゆっくりと休めることができるのよ。それに人参だけでなくリンゴ、バナナもたくさんあるので、お馬さんと一緒に私の家に来ないかしら」
「ヒヒーーン・ヒヒーーン」
ベガちゃんは尻尾を振りながら、「行きます。行きます」と言いたげに叫んでいるのであった。
ベガちゃんを誘惑するなんて、この女性は大悪党に違いないと私は思った。
「ベガちゃん、騙されてはいけません。この女性は大悪党です」
私はベガちゃんを説得した。
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。私を信じて」
女性は、私にウインクをして思わせぶりな仕草をした。
「でも、知らない人についていくのは危険です」
私の意思は揺るがない。
「そうだわ!王都で1番美味しいパンとリンゴジュースも用意するわ」
女性は、最後の手段とばかりに、私の大好きなパンとリンゴジュースを用意すると言ったのであった。
「王都で1番美味しい・・・パン・・・。それにリンゴジュース・・・」
私にはポルックスからもらった大金がある。これを使えば美味しいパンもリンゴジュースもすぐに手に入るだろう・・・しかし、王都で1番美味しいと言うフレーズはとても気になるのである。私はすぐに王都を出てアダラの村に行かないといけない。王都で1番美味しいパン屋さんなど探している余裕はないのであった。
「・・・」
私は葛藤している。急に目の前に現れた綺麗な女性は信じてもいいのだろうか?悪い人には見えないが、初対面の人が宿を提供して、美味しい食事まで用意してくれるなんてありえないのである。しかもベガちゃんの寝床と食事付きである。こんな上手い話などないのである。
私は10秒ほど葛藤し答えを出した。
「わかりました。あなたのお誘いを受けましょう」
私は王都で1番美味しいパンを食べたいという気持ちを抑えることができなかった。
「本当!よかったわ。あなたはドラキュンの知り合いみたいだから、ぜひ家に招待したかったのよ」
女性は私に近づいて小声で言った。
「ドラキュンさんを知っているのですか?」
私も女性に合わして小声で言った。
「ええ、私はドラキュンの姉のヴァンピーよ。このことは内緒だけどね」
「どうして、ドラキュンさんと知り合いだと分かったのですか」
「その十字のペンダントよ。それはドラキュンが気に入った子にしか渡さないのよ」
そういえば、ドラキュンはこのペンダントがあれば、ドラキュンの一族が私を助けてくれると言っていた。ヴァンピーは私のペンダントに気づいて私を助けるために、1番に私に駆け寄ってくれたのであった。そして、王都で安全に過ごせるように家に招待しようとしたのであった。しかし、それなら最初に言ってくれたらこんなに悩むことはなかったのであった。
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