第252話 ホロスコープ星国 パート29
「私の家まで案内するわ」
ヴァンピーは笑顔で言った。
私とベガちゃんはヴァンピーの後ろをパカパカと歩いて行った。
「ヴァンピー様、その女の子は誰なのですか」
門を守る兵士が私たちを止める。
「私の知り合いよ」
ヴァンピーは兵士の瞳を見つめながら言った。
「そ・そ・そうなんですか。身分証の確認をされたのでしょうか」
ヴァンピーに見つめられて兵士は緊張している。
「もちろんよ。この子が手配書の子供なわけないでしょ」
ヴァンピーは兵士に近寄って肩に手を回す。兵士の顔は真っ赤になりさらに緊張する。
「そ・そうですよね。お嬢さんにお馬さん、王都シリウスにようこそ」
ヴァンピーに肩を触れられて、兵士の興奮状態はマックスであった。兵士は私を全く調べることなく門を通してくれた。
「あいつ、ヴァンピー様にボディタッチしてもらってやがるぜ」
悔しそうにする兵士が続出する。
「俺もヴァンピー様に触れてもらいたいぜ」
唇を噛み締めながら別の兵士が言った。
「ヴァンピー様は、なんであんなにお美しいのだろう」
兵士たちはヴァンピーの姿を見てウットリとしている。
ヴァンピーのカリスマ的な美貌の効果もあり、私のことは誰も見ていないので、私は疑われることなく無事に王都シリウスに入ることができた。
私とベガちゃんは、ヴァンピーに連れられて、ヴァンピーの大きな屋敷に案内された。
屋敷には、大きな厩舎がありベガちゃんは喜んで厩舎に入り、美味しい人参、バナナ、リンゴをご馳走になっていた。
ベガちゃんの悲鳴のような喜びの声が厩舎中に轟く。
次は私の番である。私は屋敷の中に入ると、可愛いメイドが私を地下の部屋に案内してくれた。
「えっ!地下室に行くの?」
私は一瞬戸惑った。なぜならば、私は地下室には悪い思い出しかないのである。パースリの町では、地下の部屋に連れて行かれて、奴隷のように働かさせられていたからである。
「ヴァンピー様が、大事な話があるということなので、地下の部屋に案内するように言われました」
メイドはにこやかに言った。
ヴァンピーは、屋敷に着くと準備があるとすぐに屋敷を出た。なので、私は王都で1番おいしいパンを買ってきてくれると思って笑顔で見送ったが、まさか地下の部屋に連れて行かれるとは思わなかったので、少し不安になっているのであった。
「私を監禁するのですか」
私は率直に言った。
「大丈夫ですよ。私もヴァンパイアなので信じてください」
メイドはそういうと、鋭い二本の牙を見せた。
私は一瞬ドキッとしたが、ドラキュンの仲間に悪い人はいないと自分にいい聞かせて、メイドの案内する地下室に向かった。
屋敷の地下室は、とても大きくて綺麗なお部屋だった。私は大きなソファーに座って、ヴァンピーが戻ってくるのを待つことにした。
しばらくすると、焼き立てのパンの美味しい匂いがした。
「パンがきたわ!」
私は思わず大声を出した。
「お待たせ!美味しいパンを買ってきたわよ」
ヴァンピーの姿が見えないほど、たくさんのパンをヴァンピーは抱えていた。
「ありがとうございます」
私は少しでもヴァンピーを疑ったことを深く後悔する。
「では、パンを食べながら、あなたのこと聞かせてくれるかしら?」
ヴァンピーは瞳を輝かせながら言った。
私は、こんなにたくさんパンをくれる人は、絶対にいい人に違いないと判断して、今までのことをヴァンピーに説明した。しかし、私が以前男の子だったこと、リプロ様のこと、不死鳥フェニックスの能力は秘密にしておいた。
「あなたが手配書の女の子だったのね」
ヴァンピーは少し驚いているみたいであった。
「レジスタンスのことは私も心配していたのよ。『星の使徒』のレオ、キャンサーが、アダラの村で必死にレジスタンスのアジトを探しているみたいなのよ。いつアジトが見つかるかは時間の問題よ。私は表立ってレジンスタンスを助けることはできないから、どうしたらいいのか迷っていたのよ」
ヴァンピーは、王国の魔法師団であるが、レジスタンスとも繋げっているみたいである。
「私がレオとキャンサーを倒してあげます」
私は美味しいパンを食べて、とても気分がいいのであった。
「1人で大丈夫なの」
ヴァンピーは、心配そうに私をじっと見つめている。
「なんとかなると思います」
私は基本無計画である。なので、なんとかなる精神で行動するのである。
「ライブラを倒した実力があるのなら、なんとかなるかもしれないけど、気をつけるのよ。レオは『大きな虎』になる能力を持っているし、キャンサーは『高速横走り』の能力があるわ。特にキャンサーの『高速横走り』は、予測不能な動きをするので、厄介だと聞いたことがあるわ」
『高速横走り』とても興味深い能力である。
「わかりました。無茶はしないようにします」
「明日は、9時までに王都シリウスの門を出るのよ。9時になるとアリエルが門の監視業務に着くわ。アリエルはとても用心深いので、フェニちゃんのことを疑うかもしれないから、必ず9時まで出発するのよ」
ヴァンピーはかたく念を押して私に言うのであった。
「はーーーい」
しかし私は、パンを食べるのに夢中で、きちんと話を聞かずに返事をしていた。
「私は門の警護業務に戻るわね。何かあったらメイドに言ってくれたらいいわ」
ヴァンピーはそう言うと王都シリウスの門に戻って行った。
私は、途中からヴァンピーの話をそっちのけでパンを食べまくっていた。
「美味しぃーーーですぅーー」
私の美味しいですぅコールが、地下の部屋から鳴り響くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます