第253話 ホロスコープ星国 パート30


 「フェニ様、起きてくだい」



  私を激しく揺さぶって私の眠りを妨げる人がいる。



 「まだ眠いです」



 私は大声で叫ぶ。



 「ヴァンピー様から、朝6時に起こすように言われています。なので早く起きてください」



 ヴァンピーは私が寝坊しないように、メイドに私を起こすように頼んでくれていた。



 「もう少しだけ寝たいです」



 私は寝起きの悪さはには自信がある。



 「フェニ様、起きてください」



 メイドは、責務を全うするために必死に私をふさぶって起こす努力を怠らない。



 『ライトシールド』



 私は安眠を妨げられたくないので、本能的に私を全てのモノから守る『ライトシールド』を張った。私の体の周りを光の膜が包み込む。



 「フェニ様、起きください」



 メイドが大声で叫ぶが、私の耳にはもう届かない・・・



 数時間後。



 「はぁ〜よく眠れたよ。今日もたくさん寝れて幸せですぅ〜」



 私は目覚めの良さで気分爽快である。



 「フェニちゃん!なんでシールドなんて張っているの!」



 鬼のような形相のヴァンピーが私の目の前に立っていた。


 ヴァンピーは、メイドから連絡を受けてすぐに王都の門から自宅へ戻ってきて、必死に私を起こそうと努力をしたが、私の張った『ライトシールド』を壊すことができなかった。



 「あれ〜なんでかな?」



 私はとぼけてみせた。



 「フェニちゃんは、アダラの村に行かないといけないのでしょ!私が門を警護しているうちに、王都を出ないと行けないと言ったでしょ」



 ヴァンピーは大声で私を説教する。



 「そんな事言ってたかしら???」



 私は全く思い出せない。それもそのはず私はヴァンピーの話を聞かずに美味しいパンを貪っていたからである。



 「今から行けば大丈夫です〜」



 私は笑顔で誤魔化す。



 「フェニちゃん、昨日言ったよね!アリエルが警護しているときは、王都から出るのは難しいと!!!」



 ヴァンピーが鋭い目つきで私を睨みつける。



 「記憶にございません・・・」


 

 これは事実であるので嘘ではない。ただ話を聞いていなかっただけである。



 「はぁ〜」



 ヴァンピーは深いため息をつく。



 「元気を出してください」



 私はにこやかにヴァンピーを慰める。



 「フェニちゃんのせいでしょ!私が安全に王都から出れるように準備していたのに、フェニちゃんがのんびり寝ているから、私はため息をついているのよ」



 ヴァンピーは、捲し立てるように言った。



 「ごめんなさいです」



 私は、なんでヴァンピーが怒っているのか理解していないが、とりあえず謝った方が良いと思って謝ることにした。



 「もういいわ。アダラの村へ行くのは明日にしましょう」



 ヴァンピーは諦めた。



 「いやですぅ〜。今日行きたいです」



 私はわがままを言う。



 「フェニちゃん?私の話を聞いてなかったのかしら?今から王都を出るには危険すぎるのよ」



 ヴァンピーが呆れている。



 「大丈夫ですよ」


 「フェニちゃん、何度も言ってるけど、アリエルはフェニちゃんを王都から出すことはしないのよ。それどころか、フェニちゃんを不審者だと認定してお城に幽閉するかもしれないのよ」



 ヴァンピーは、私の目を見て真剣に語りかける。



 「アリエルなんて怖くないのです」


 「フェニちゃん!もしアリエルに勝てたとして、王都中の兵士を相手しないといけないのよ!そんな無謀なことはしないで」



 ヴァンピーは必死に私を説得する。



 「でも・・・早くアダラの村に行かないと行けないのです〜」



 私は意外と責任感が強いのである。



 「レジスタンスのことは気になるけど・・・今日は諦めるのよ。空でも飛べない限り王都からは出れないのよ」



ヴァンピーは、私をなだめるように言った。



 「空を飛べたら、王都から出ることができるのですか」


 「そうね。人気のないところなら、空を飛べれば王都から抜けることは可能よ。でもよほどの風魔法の使い手じゃないと、王都を囲う塀を超えて、さらに王都を守る水路を越えるのは難しいわ」



 王都シリウスは、周りを水路と城壁に囲まれた鉄壁の守りを敷いている。王都を抜けるには、門を通る以外はないのである。


 

 「空を飛べたらいいのになぁ〜」



 私は小さくつぶやいた・・・・


 そういえば、リプロ様は黒くてカッコイイ翼を持っていた。リプロ様は、その翼で自由に空を飛ぶことができた。私もリプロ様のような翼があれば、空を自由に飛べることができるのになぁと、私は考えていた。



 「そうだ。試しみよう」



 私はボソッとつぶやいた。



 「フェニちゃん?何か言った」



 ヴァンピーが不思議そうに私を見ている。



 「なんでもないです。少しお散歩をしてきます」



 私は王都の広場に行くことにした。



 「あんまり遠くへ行ったらダメよ」


 「わかりました」



 私は王都にある大きな公園の広場にきて、人気のいないところで、翼が生えるように祈りを捧げた。



 「私に翼をください。私にリプロ様のようなかっこいい翼をください」



 しかし、いくら神様にお願いしても神様に無視されるのであった。



 「神様のばかーー」



 私は翼をくれない神様にイライラしていた。



 「リプロ様・・・どうしたら翼が生えるのですか?」



 私は神様よりリプロ様を頼ることにした。



 「フェニには、フェニックスの翼があるじゃないか!」



 私の問いかけに答えるようにリプロ様が言ってくれた気がした・・・



 「そうだ・・・リプロ様は私に不死鳥フェニックスの能力を授けてくれた。もしかしたら、私はフェニックスのような炎の翼も手に入れているのかもしれない」


 

 と私は考えた。しかし、どうやったら炎の翼を使えるようになるのでだろうか?



 「魔力操作かな?」



 リプロ様は、魔力を操作することによって、いろんなことができると私に教えてくれた。『ライトシールド』もその一つである。



 「炎の翼をイメージして、魔力を背中に流したらいいのかもしれない」



 私はそう思ったので早速試してみた。私は、背中にリプロ様のようにカッコいい翼をイメージして、魔力を流してみた。



 『バサ、バサ』



 なんと私の背中から炎の翼生えてきたのであった。



 「しゅごい・・・」



 私は自分の炎の翼を見て驚いてしまった。そして、炎の翼を鳥をイメージして、バタつかせてみた。


 すると、私の体は宙に浮いて空を飛ぶことができた。しかし、バランスを取るのが難してくて、近くの木にすぐにぶつかってしまった。



 「イテテテテ」



 私は、懲りずにもう一度、炎の翼をバタつかせて空を飛んでみた。次は先ほどよりうまく真上に飛び上がることできた。そして、翼を慎重に操作してそのまま王都の塀を越えたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る