第254話 ホロスコープ星国 パート31


 私は試行錯誤しながらも、炎の翼をうまく操作することできるようになった。空を飛ぶ練習をしながら、そのままアダラの村の方面へ飛んで行った。


 空を飛べるのはとても快適である。地上から見る景色と空から見える景色は全く別物であった。地上から見る景色は、全てが私よりも大きく感じるが、空から見える景色は、全てが私よりも小さく見えるのである。大きな木も、岩も、人も魔獣も私より小さく見えて、とても面白かったのであった。


 そして、移動速度も全く違うのであった。空には私のいく手を遮る物は何もない。私の進みたい方向を自由に選択できるのである。空は自由でとても快適であった。


 地上の道を使えば、王都からアダラの村に行くのには、丸一日かかるのだが、空を飛んでいけば、2時間もあれば、アダラの村に着く事ができるのである。


 私は、空からアダラの村へ入るのも失礼にあたると思って、アダラの村の近くで地上に降りて、アダラの村の門に向かった。



 「ごきげんよう」



 私は、空の旅を満喫して上機嫌だったので、普段はしないような挨拶をした。



 「貴様は何者だ!」



 私の淑女な挨拶に対して門番は乱暴な言葉で返してきた。



 「フェニちゃんです」



 私は機嫌がいいので、失礼な門番の対応に怒ることもなく笑顔で自己紹介をした。



 「名前を聞いているわけではない!何にしこの村に来たのかと言っているのだ!」



 私の爽やか自己紹介を無視して、横暴な言い方をする門番に対して、私は怒りを感じることない。それほど私は空の旅を楽しんだのである。



 「村長さんに用事あるのです」


 「村長に会いに来ただと・・・お前みたいなガキがなんのようだ」



 私は、淑女な対応をしているのに、門番の横暴な態度は変わらない。



 「レオ、こんなガキがレジスタンスなわけないだろ!村に入れてやったらどうだ」



 アダラの村の門番は『星の使徒』のレオとキャンサーであった。レオは190cmと大きな体格をした、いかつい顔をした男である。キャンサーは175cmの細身の男である。2人は黒い鎧を着ている。黒い鎧は王の精鋭部隊の証である。


 レオとキャンサーは、アダラの村に住み着いて、レジスタンスのアジトを見つけるために、アダラの村の門で、出入りする人を一人一人チェックしていたのであった。なので、レジンスタンスはアダラの村から出入りできなくなっていた。


 アダラの村は、岩山に面した小さな村である。その岩山の洞穴にレジスタンスのアジトがある。そのアジトに行くには、アダラの村の村長の家にある隠し通路を通らないと行けない。レオとキャンサーはその事をまだ掴めていないようだ。



 「確かにこのガキは、レジスタンスではないかもしられない。しかし、ガキに手紙をよこして、レジスタンスに情報を伝えるかもしれないぞ」



 レオは、鋭い視線で私を睨みつけながら言った。そして、レオの推測はズバリ的中していた。



 「持ち物検査をしろ」



 レオはキャンサーに命じた。しかし、大事なものは収納ボックスに入れている私の持ち物を、いくら検査しても何も出てこない。



 「何も持っていません。お金すらない貧しいガキですぜ」



 キャンサーは笑いながら言った。


 私は大事なものは収納ボックスにしまっている。なのでポルックスからもらった大金は収納ボックスに入れてある。



 「女は、収納ボックスという便利な魔法を使える者がいるはずだ。収納ボックスも調べろ」



 レオは少しの油断もしない完璧主義者である。



 「こんなガキが収納ボックスなんて使えるわけないだろぜ」



 キャンサーは笑いながら言った。キャンサーはレオと違って面倒くさいことは嫌いなのである。



 「使えるもん!」



 私はリプロ様に収納ボックスの魔法を教えてもらった。収納ボックスが使えないと言われた私は、リプロ様の教えをバカにされた思って怒りが込み上げてきた。



 「なら、見せてみろよ。どうせしょぼい収納ボックスだろ」



 挑発するようにキャンサーが言った。



 「違うもん!!!私の収納ボックスは、その辺の魔法士が使ってるしょぼい収納ボックスとはケタが違います」



 私は簡単に挑発に乗ってしまった。そして、私は収納ボックスを開いて、収納ボックスに入っていた食べ物、大金、大事な手紙、服、など下着以外は全て出してしまった。



 「こんなにたくさん入るのですぅ〜。焼き立てのパンを食べてみてよ!全く腐ることもなく、素材に適した適温で管理できるのですぅ〜」



 私は自慢げに言った。


 キャンサーは私の言われた通りにパンを食べた。



 「これは、本当に出来たてホヤホヤのパンではないか!!!」



 キャンサーは驚愕していた。一般の魔法士が使う収納ボックスは保温冷蔵効果はない。なので、出来たてホヤホヤのまま収納するなんてあり得ないのである。



 「すごいでしょう」



 私は自慢げに言った。



 「しかも・・・大金を持っているのではないか!」



 キャンサーは、ホカホカのパンよりもお金のが気になるようである。



 「この村に入りたいなら、通行料を差し出すのだな」



 キャンサーの目は大金に釘付けであった。



 「キャンサー!何を言っているのだ。ガキが収納ボックスから出した物をよく見てみろ」



 レオが大声で怒鳴り上げる。



 「大金があるぜ」



 キャンサーはウハウハな気分で言う。



 「違うだろ。怪しい手紙があるだろ」



 レオは、私が収納ボックスから出した村長宛の手紙を見つけたのであった。私は、村長宛の手紙を何の手紙か忘れないように、大きな字で手紙入った封筒の上に、大事な手紙ですと書いていたのであった。なので、それを見たレオは、明らかにおかしいと感じたのであった。


 私は、ポルックスの依頼でアダラの村に着たことがバレたと思って、すぐに全ての物を収納ボックスに収めた。



 「手紙を出しやがれ」



 レオが大声で叫ぶ。



 「お金だ。お金をよこせ」



 キャンサーも大声で怒鳴り上げるのであった。



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