第250話 ホロスコープ星国 パート27
★フェニ視点に戻ります
ベガちゃんの体調も万全になったので、私はベガちゃんに乗り王都シリウスに向かってパカパカと走り出した。ベガちゃんが頑張ってくれたので、日が暮れる少し前に王都シリウスへ入る門まで辿り着くことができた。
王都シリウスの門には、黄色の鎧を着た兵士たちが、門を守るように取り囲んでいた。
★ホロスコープ視点になります
「アリエル団長、今日もウルフキングは姿を見せませんでしたね」
王都シリウスの門を守る兵士が言った。
「そうですね。でも油断は禁物です。ライブラからウルフキングを討伐したとの連絡があるまでは、安心はできません」
緊張した面持ちでアリエルが言う。
「ライブラ様が、ウルフキングの討伐に出てもう1週間を過ぎています。もしかしたら、ウルフキングに殺されたのではないかと王都では噂になっています」
兵士が怯えている。
「それはないでしょう。ライブラの『ゾディアックサイン』の能力は最強です。ライブラが負けるとは思いません」
「私もそう思います。ライブラ様がたかがウルフの魔獣に殺されるなんてありえません。平民どもはライブラ様の強さを知らないのだと思います」
兵士は震える体を抑えながらアリエルの意見に賛同する。
「スコーピオが、大袈裟にウルフキングの強さを説明したので、ウルフキングが魔獣王並みに強いという嘘の情報が王都の市民に伝わっているのが原因だと思います」
アリエルは黄色い髪をかき上げながらイライラしている様子である。
「確か・・・ウルフキングの討伐難度はC3ランクのはずです。それがいつの間にか、魔獣王クラスの強さだと嘘の情報にすり替わっています。誰がこんな嘘の情報を流したのでしょうか」
「それはレジスタンスでしょう。ウルフキングが北の森から姿を現して、南下していると情報を聞きつけて、ホロスコープ星国を混乱させるために、嘘の情報を王都に流したのだと私は思っています」
アリエルは、スコーピオから直接ウルフキングの強さを聞いている。しかし、アリエルは、スコーピオを信用していない。それは、スコーピオがポルックスを敬愛していることを知っているからである。
アリエルもポルックスに、『ゾディアックサイン』の能力は、国民を守る為に使うべきであり、己の力を誇示するためではないと何度も注意されていた。しかし、アリエルは、『ゾディアックサイン』の能力は、選ばれしエリートの証だと思っているので、ポルックスの教えには賛同できないのであった。
そんなポルックスを敬愛しているスコーピオの情報を、そのまま信用するわけにはいかないなので、アリエルはカプリコーンにウルフキングの強さを再度確認したのであった。
「ウルフキングの強さだと・・・大したことないわ。ガハハハハ」
とカプリコーンが言ったので、アリエルはウルフキングはC3ランクの魔獣だと思っているのであった。
「一緒にいる子供はどう思われますか?」
「なぜウルフキングと共にいるのかわからないですが、ただの子供だと思います。しかし、油断してはいけません。ウルフキングは、人間に化けることができると聞いています。なので、その子供も魔獣である可能性があります」
アリエルは淡々と言った。しかし、アリエルは、とてもイライラしている。C3ランクのウルフキング、ただの子供の女の子に対して、『星の使徒』である自分が、門番という下等な仕事をしないといけないことに。門番など高貴な身分である『星の使徒』がするべき仕事ではないと思っているのであった。
「17時になりましたので私はシリウス城に戻ります。夜勤はヴァンピーが担当です」
そういうと、アリエルはすぐに門を離れて行った。
「皆さん、お疲れならもう帰ってもいいのですよ」
黒い長い髪の美し女性が門を守る黄騎士団の兵士に言った。
「いえ、自分はまだ働けます」
「私もです」
「もちろん私もです」
門を守る全ての黄騎士団の兵士が言った。
「そうなのね。それならお願いするわ」
この美しい女性が王都シリウスで1番の魔法士のヴァンピーである。ヴァンピーと少しでも一緒にいたい黄騎士団の兵士は、勤務時間外なのに誰も帰ろうとしない。
ウルフキングが攻めて来るかもしれないので、王都の門は17時までは黄騎士団が守り、17時になるとヴァンピーが率いる魔法士団が門を守っているのであった。
しかし、ヴァンピーの率いる魔法士団は5名と人数が少ないので、有志の兵士が多数集まって門の警護についているのであった。
有志とは聞こえが良いが、実際はヴァンピーの美しさに惚れている兵士ばかりであった。
「ヴァンピー、女の子がこちらへ向かってきているわ」
魔法士団の1人シーシュが言った。
「手配書の女の子かしら」
手配書を確認しながら魔法士団の1人のグェイが言う。
「髪型が違うわよ」
シーシェも手配書を確認した。
「でも、女の子が1人で王都シリウスに訪れるなんて怪しいわ」
「そうね。手配書が完璧とは限らないしね」
シーシェとグェイはあきらかに疑っていた。
「ちょっと待って、あの子は問題ないわ」
ヴァンピーが確信を持って言った。
「どうしてよ」
シーシェとグェイは納得がいかない。
「私に任せて」
ヴァンピーはそういうと女の子の元へ駆け寄って行った。
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