第249話 ホロスコープ星国 パート26


★スコーピオ視点になります



 「タラウスの様子が変でしたね」



 スコーピオが赤騎士団の兵士に言った。



 「そうでしょうか・・・いつもと変わりないと思いました」



  そっけなく兵士は答えた。



 「私には嘘は通用しません。タラウスは明らかに嘘をついていました」



 スコーピオの観察眼は鋭い。タラウスの嘘を簡単に見破ることはできる。



 「タラウス様はどんな嘘をついていたのでしょうか?」


 「関所で何かあったのかも知れません。しかし、兵士たちが負傷した様子もないので、何があったのかは検討もつきません」



 スコーピオはあらゆる展開を想定したが結論は出ない。



 「スコーピオ様考えすぎだと思います。」


 「そうかも知れませんね」



 スコーピオは、一抹の不安を残しながら先を進む。しばらくすると、カペラの町の近くまでたどり着いた。



 「あなた達は、ここで待機してください。カペラの町は特殊な町です。兵士が乗り込んでいくとトラブルになります」



 スコーピオは兵士たちに指示を出した。



 「わかりました。私たちはここで待機してます」



 兵士たちは、カペラの町の周辺で待機することになった。スコーピオは兵士たちを残してカペラの町へ向かっていった。


 スコーピオは、単独で馬に走らせてカペラの町の門まで着た。



 「私は赤騎士団団長のスコーピオです。ポルックス様に会いにきました」



 スコーピオは礼儀正しく門番に声をかける。



 「少しお持ちください。確認してきます」



 門番はスコーピオの姿に驚いていたが、スコーピオは『星の使徒』の中ではかなりの穏健派で有名なので、スコーピオは害をなさないと信じてポルックスの元へ向かう。


 しばらくすると、門番はポルックスと共にカペラの町の門に姿を現した。



 「スコーピオ、お久しぶりですね」



 ポルックスはにこやかに言った。



 「お久しぶりです」



 スコーピオも笑顔で答える。



 「私の屋敷へ案内します」


 「わかりました」



 スコーピオはポルックスに連れられてポルックスの屋敷に向かった。



 「ライブラの件ですね」



 ポロックスは見透かしたように言った。



 「そうです。ライブラがウルフキングを倒すと息巻いて、王都シリウスを出発して1週間以上が経過しました。しかし、未だに戻ってくる気配がありません。もしかしたら、カペラの町へ寄ったのではないかと思いまして・・・」



 スコーピオは真剣な表情でポルックスに問いかける。



 「ライブラはこの町で拘束しています」



 ポルックスは隠すことはしない。



 「ポルックス様が倒したのですか?」


 「私にはそんな力がないのは知っていますよね」


 

 ポルックスは笑いながら言った。



 「確かにそうですが・・・なら、誰がライブラを拘束したのですか?」



 スコーピオは困惑した顔で言った。



 「私が言わなくてもあなたなら想像はできているでしょう」



 ポロックスは見透かしたように言う。



 「やはりウルフキングですか」


 「違います」


 「では、誰ですか」



 スコーピオはフェニはただの子供だと思っている。



 「あなたは知らないのですね」



 ポルックスは、ウルフキングとフェニが手配書に載っているので、スコーピオ達はフェニの実力も多少は知っていると思っていた。



 「もしかして、あの子供の女の子ですか」



 スコーピオは驚きを隠せない。



 「そうです。あの子は強いですよ。私は、ホロスコープ星国の今後を左右するのはあの子だと思っているのです」



 ポルックスは嬉しそうに笑っている。



 「ポルックス様の悲願を叶えてくれる逸材なのですね」



 スコーピオも嬉しそうな表情でポルックスを見ている。



 「そうです。あの子はホロスコープ星国の希望です。私はあの子を全力で支援するつもりです。スコーピオも協力してください」



 ポルックスの瞳は子供のように輝いていた。



 「もちろんです。全力で協力いたします。それで、ライブラはどうするつもりなのですか?」


 「ライブラは、しばらくは拘束して、意識の変革をさせるつもりです。『星の使徒』だけが特別であると言う考えを改めさせないといけません」


 「それは難しいでしょう。私とポルックス様以外は、『星の使徒』は神に選ばれし特別な人間だと勘違いしています。『星の使徒』は、国民を守るために神から能力を与えられたのです。自己の欲望を満たすのではないのです」



 スコーピオは清々しい目をして言った。



 「その通りです。あなたはとても優秀ですね」


 「これも全て、ポルックス様に教えてもらったことです」



 スコーピオはポルックスに跪いた。



 「私の考えを理解してくれたのは、あなただけです。私と一緒にこの国を変えましょう」


 「もちろんです」



 スコーピオは即答した。



 「ところで、レジスタンスのアジトが、レオとキャンサーに見つかったとライブラから聞いたのですが、本当ですか?」


 「アダラの村が怪しいと目をつけて捜索しているところです。なので完全に見つかったわけではないのです。しかし、レオとキャンサーがアダラの村に滞在しているので、今はレジスタンスの行動は制限されています」


 「それで、私のところに報告がないのですね」


 「そうです。なので、私がライブラを探索すると言う名目でこの町に訪れたのです。大義名分がないと私はポルックス様に会うことは許されませんので」


 「これからどうするのですか」


 「ライブラは、見つからなかったと報告します。そして、引き続き、王都シリウスの動向を監視します」



 「スコーピオ、王都のことは任せました。あと、フェニちゃんのことも助けてあげてください」


 「ウルフキングと一緒にいた女の子ですね」


 「そうです。フェニちゃんは私の依頼でアダラの村に向かっているでしょう。レオ、キャンサーの2人の相手をするのは少し危険だと感じています」




 ポルックスは、不安を感じていた。



 「それなら、私もアダラの村に向かいましょう。共に協力して戦うことはできませんが、レオとキャンサーの邪魔をすることはできると思います」


 

 スコーピオは、新たな目的が出来たため、カペラの町を出て急いでアダラの村へ向かうことにした。


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