第138話 妖精王パート8

  


 「サラマンダー、雷光石は、俺の物だ。お前には、絶対に渡さないぞ」


 「サラちゃん。雷光石は、オーベロン王に渡して、覚醒してもらうので、諦めてね」


 「嫌です。私が覚醒してあげます」


 「サラちゃんには、できないでしょう」


 「オーベロンにできて、私にできないことなど、ないのよー」


 「サラちゃん、嘘はダメです」


 「嘘じゃないもん」


 「オーベロン王、本当なのですか?サラちゃんも覚醒させることが、できるのですか」


 「悔しいが、俺とサラマンダーは、覚醒者を覚醒できる能力があるのは、事実である」


 「サラちゃん、なんで、今まで黙っていたのよ」


 「サラ、なんで、言わなかったんだ?」


 「だって、聞かれなかったからですわ」



 なんと、サラちゃんにも、覚醒者を覚醒させる能力があった。最初から言ってくれたのなら、すぐにでも、覚醒してもらったのに、いつもながら、サラちゃんには、困ったものである。



 「ルシスちゃん、私に雷光石を渡すのよ」



 私は、サラちゃんができるのなら、わざわざ、オーベロン王に雷光石を渡す必要はないと思った。これ以上無駄に、グダグダと揉めるのも、面倒なので、サラちゃんに雷光石を渡すことにした。



 「ちょっと、待ちなさい」



 次は、ティターニアが、割って入ってきた。



 「さっきから、話しを聞いていましたが、覚醒者を覚醒させるには、ルールがあるはずよ」


 「ルールがあるのですか」


 「そうよ。妖精法で、きちんと定められていますわ。覚醒者を覚醒させるには、試練を与えて、それを突破する実力があるものだけ、覚醒者になれるのよ」


 「オーベロン王、本当なの」


 「本当だ。後で話そうと思っていたのだよ。妖精法で定められた、試練を突破した者だけが、覚醒者になれるのだ」


 「サラも、知っていたのか」


 「も・・・もちろんよ。私もそれを、今言うところだったのよ」



 サラちゃんは、動揺している・・・たぶん、サラちゃんは、知らなかったのだと思う。



 「試練を受けずに、覚醒したら、どうなるのですか」


 「違反者は、神の裁きを受けて、命を落とすこともあると、言われている」



 サラちゃんに、覚醒できるか、聞かなくて良かったのであった。サラちゃんに、覚醒してもらっていたら、危うく、死の危険に晒されるところだったみたいである。



 「試練は、どのようなものなのですか」


 「妖精法で、定められた試練は、八岐大蛇を討伐して、草薙の剣を入手することだ。かなり、危険な戦いになるので、4人パーティでの討伐を認めている」


 「よし、その試練受けて立つぜ」


 「私もよ」



 ロキさん、トールさんは、闘志に火がついた。自分たちの力を、試したいのであろう。なので、試練を受けることに、乗り気である。



 「私も、協力させてもらいますわ」


 「私も、参加します」



 みんなで、試練に挑む事に決定した。



 「私も行くわよ」


 

 サラちゃんも参加を表明した。



 「俺も、行ってみようかな」



 なぜか、オーベロンまで、参加を表明した・・・・これは、何かあるに違いないと、私の探知スキルが、ビビッと反応したのであった。



 「あなた、付いて行くことは、私が許しませんわ。まだ、ウンディーネの件が、片付いていませんわ」


 「・・・・わかりました」


 「それと、サラマンダーが壊した、妖精の扉とダンドーク山を元に戻しなさい」


 「はい」



 オーベロンは、手から黒い霧を噴出した。あたり一体が、黒い霧で覆われて、何も見えなくなる。しばらくすると、黒い霧は、消えて無くなった。


 霧が消えた後には、ダンドーク山は、元に戻っていて、妖精の扉も復活していたのであった。



 「あなた、帰るわよ」


 「俺も、行きたいのに・・・・」


 「ちょっと待ってください」


 「まだ、何かようかしら?」


 「八岐大蛇は、どこにいてるのですか」


 「居場所なら、サラマンダーが、知っているはずよ」


 「サラ、知っているのか」


 「出雲山にいてるはずよ。出雲山は、海に面していて、そこの海に生息するビッククラブを茹でると、とても美味しいのよ」



 ビッグクラブは、海に住むカニの魔獣である。3mの大きなカニで、茹でるととても美味しいのである。サラちゃん、オーベロンが、ついて行きたい理由は、ビッククラブを食べたいからであった。



 「サラ、本当か?」


 「本当よ。ビッグクラブのプッりとした身は、味わい深いものがありますわ」


 「エルフの国でも、たまにビッククラブが手に入ることがあるわ。何度か食べたことがあるけど、ビッククラブの身も美味しいけど、脳みそも格別の味だったことを、覚えていますわ」


 「これは、楽しみだな」


 「そうですわ。久しぶりに、ビッククラブを食べてみたいですわ」


 「急いで、いきましょう。ビッククラブが私を待っていますわ」


 「俺も食べたいぞ」


 「あなたは、浮気の反省をすることが先よ」



 オーベロンは、妻に引きずられながら、妖精の門に入っていった。オーベロンは引きずられながらも、ビッククラブを取ってきてくれと嘆願していた。


 私たちは、結局は、オーベロン王に、覚醒をお願いすることにした。雷光石はサラちゃんが、もらう事になり、シュークリームとビッグクラブを渡すことで、オーベロンは了承したのであった。


 

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