第137話 妖精王パート7


 「うるさいわねー。満腹だから後にしてよ」



 サラちゃんはお腹いっぱいで動けないみたいである。



 「相変わらず生意気なサラマンダーだな。俺は妖精の頂点にたつ王だぞ。態度を改めろと何度言ったらわかるのだ」


 「オーベロン何しにきたのよ。妖精の扉は壊したはずよ」


 「俺だけは妖精の森とこの世界を自由に出入りはできるのだ。あまりにもいい匂いがするから、人間界に来たらシュークリームという美味しい料理を食べているのではないか!俺にも一つ食べさせろ」


 「お前に食べさせるシュークリームはないのよ!ゲップ」


 「ふざけるな。お前が全部食べたからではないか!!!今度という今度は絶対にお前を許すことはできないぞ」


 「私を倒せると思っているのかしら。私は精霊神最強であり妖精界最強のサラマンダーよ。妖精王ごときが、私に歯向かうなんてちゃんちゃらおかしいわ」



 とサラちゃんはオーベロンに言うが、食べ過ぎで仰向けになって倒れ込んでいる姿で言っても、説得力がないのであった。



 「あの時の決着を今つけようではないか。今日は邪魔するものは誰もいない、俺のが強いことを証明してやるぜ」


 「いつも口だけは達者ね。私に勝ったことがあるのかしら」



 サラちゃんとオーベロンは、食べ物のことでよく喧嘩をするらしい。これまでの対戦成績は、サラちゃんの15勝1分である。オーベロンの前回の引き分けは、実は妻のティターニアの加勢があったのでサラちゃんが苦戦したみたいである。



 「今日はティターニアがいないわよ。1人で私に勝てるのかしら」



 とパンパンのお腹を抑えながらサラちゃんは言う・・・今なら一撃で倒せそうな感じがすると私は思う。



 「妻とは今は喧嘩中だ。頼れるはずがなかろう。俺は1人でも戦うぞ」



 オーベロンは素直に答えた。オーベロンは妻と何かあったのだろう。



 「オーベロン。また浮気をしたのね!」


 「何を言っている。そんなことあるわけないだろう」



 オーベロンは明らかに動揺している。これは浮気したのは確定であろう


 

 「ウンディーネに手を出したのね」



 ウンディーネとは4大精霊神の1人で水の精霊神である。ウンディーネはとても美しい女性でオーベロンは以前からちょっかいをかけていたのである。



 「何を言っているのだ。俺が妻以外の女性に手を出すわけがないだろう」



 オーベロンはおどおどしながらサラちゃんに答える。これは明らかに怪しいのである。



 「やっぱり浮気をしていたのね」



 ティターニアがオーベロンの目の前に現れたのであった。


 ティターニアは銀色の長い髪をもつ美しい妖精である。背中には透明の大きな羽を持ち自由に空も飛べるのである。


 ティターニアは上空より舞い降りてきてオーベロンの側に立ち、鬼の形相でオーベロンを睨みつけていたのであった。



 「なぜ、お前が、ここにいるのだ」


 「少し用事があって人間界に来ていたのよ。でも、戻ってきたらダンドーク山は消えてなくなっているし、どうしようか迷っていたところよ。でも、あなたが浮気しているのがわかったのは不幸中の幸いかしら」


 「私に感謝するよのよ」



 自慢げにサラちゃんが言う。



 「ありがとうサララマンダー。あなたのおかげで夫の不貞を突き止めることができましたわ」



 サラちゃんはたぶん適当に言っているのだろう。しかし、それがマトを得ていて真相を突き止めてのであった。



 「誤解だ。許してくれ」


 「あなたのごめんは聞き飽きたのよ。いつになったら浮気癖が治るのよ」


 「ごめんなさい」



 オーベロンは土下座をして妻に謝るのであった。


  

 「話しは帰ってからゆっくりと聞かせてもらうわ。妖精の門を復活させるのよ」


 「はい」



 オーベロンは妖精の門を作り直し妖精界へ戻ろうとした。



 「ちょっと、待ってください」



 私は慌てて声をかけた。



 「何かようかしら?」


 「実はオーベロン王にご相談があります」



 オーベロンは浮気がバレたショックで、死んだ魚のような目をして屍のように呆然としている。



 「オーベロンは、今は話しをできる状況ではないわ。今度にしてもらえるかしら?」


 「大事な用なのです。お願いします」


 「仕方がないわね少しだけよ。あなたこの女の子の話しを聞いてあげて」


 「は・・・い」



 オーベロンは浮気がバレたので妻が言うことには絶対服従である。


 オーベロンはゆっくりと口を開いて私に問いかけてきた。


 

 「俺に何か用があるのかな?」


 「私の仲間の魔石を覚醒して欲しいのです」


 「魔石の覚醒ですか・・・その者は覚醒者なのか?」


 「はい。間違いありません。疑うのであればご確認してください」


 「もし本当に覚醒者であったとしても、なぜ?私が覚醒をしないといけないのだ」


 「お礼の品は用意しています」


 「お礼の品だと!もうシュークリームはないだろう」


 「実は雷光石を2つ用意してきました。それをお礼の品としてオーベロン王にお渡しします」


 「雷光石2つかぁ・・・」


 「ご不満でもあるのですか」


 「そういう訳ではないが、シュークリームも食べてみたいなと思ってな」


 「それなら、後日シュークリームを持ってきます」


 「よし、それなら魔石を覚醒してあげようではないか」


 「ちょっと待つのよ。その雷光石は私がいただくわ」



 オーベロン王から魔石の覚醒を約束したのだが、それに対して、サラちゃんが雷光石を渡すのを阻止しにきたのであった。


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