第136話 妖精王パート6

 


 「ルシスちゃん、さっきのものすごい量の溶岩はなんだったの」


 「・・・・」


 「また、サラが何かやらかしたのか」


 「・・・・はい。でも私がもっとしっかりとしていればよかったのです」


 「気にしなくていいのよ。それでダンドーク山はどこにあるのかしら」


 「おかしいですわ。さっきまで見えていたはずのダンドーク山が見当たりませんわ」


 「本当だぜ。どこへ消えたのだ」


 「ダンドーク山は幻影の山とも言われています。周りに結界が張ってあり誰も入ることができないのです。なのでもしかしたら、私たちが近づいたから消えたのかもしれませんわ」


 

 これはポロンさんの意見に賛同して、サラちゃんが溶岩で吹き飛ばしたことは無かったことにしようと私は思ってのであった。



 「オーベロンの住処のダンドーク山は私が消滅させましたわ」



 サラちゃんが自慢げに本当の事を言ってしまった。



 「サラ、なんてことをしてくれたんだ」


 「そうですわ。妖精の扉はどうなったのですか」


 「もちろん、ぶっ壊しましたわ。私との和解に応じない罰ですわ」

 

 「ルシスちゃん本当なのね」


 「はい」


 「先程の溶岩はそういう事だったのね」


 「私が付いていながら申し訳ございません」


 「済んだことは仕方にないわよ。それよりもこれからどうするの?」


 「もちろんシュークリームパーティーの開催ですわ」


 「俺はサラの意見に賛成だぜ。まずは、オーベロン王のことよりもシュークリームのが気になるぜ」


 「私もですわ」


 「そうですね。ダンドーク山の妖精の扉が消滅してしまったので、オーベロン王に会いに行く手段がなくなりました。ここは頭を切り替えてシュークリームを食べましょう」


 

 いつものロキさんなら、オーベロン王に会いに行く手段を探そうと言うのだが、ロキさんもシュークリームのことが気になっていたのであった。


 私は少し投げやりな気持ちになっていたのでみんなの意見に賛同した。そして、こんなことが、あることを想定していたのでピクニックセットを収納ボックスから出して、何もないダンドーク山跡地に、宴会の準備をしてお酒、ジュース、シュークリームなどを出したのであった。今、飲みたい気分なので、私はジュースをガブガブと飲み始めた。



 「ルシス、飲みっぷりが豪快だなぁ。俺も負けてられないぜ」


 「今日はとても飲みたい気分なのです」


 「ルシスちゃん。ジュースでも飲み過ぎはダメよ。妖精の扉がなくなったのはルシスちゃんのせいではないのだから楽しく飲みましょう」


 「はい・・・」



 クヨクヨしていても仕方がない。サラちゃんを止めれなかった私の落ち度はもう消えることはない。なので、ロキさんのいう通りに落ち込むのはやめて、気分を切り替えて楽しく飲むことにした。



 「シュークリームを食べたらほっぺが落ちそうになるわ」


 「本当だぜ。ふんわりとした生地の食感も良いが、生地から溢れ出る濃厚なソースは俺の体をトロトロにするぜ」


 「そのソースはカスタードクリームというのです。とても甘くて美味しいです」


 「ダメですわ。美味しすぎて体に力が入りませんわ」



 サラちゃんはシュークリームの美味しさに心を奪われて、極上の笑みを浮かべながら倒れ込むのであった。



 「もっと、もっと食べたいですわ」



 サラちゃんは倒れながらも、シュークリームに手を伸ばして、満足そうにシュークリームを食べるのであった。


 私もシュークリームは大好きなので、ジュースを飲みながら笑顔でパクパクと食べるのであった。



 「お嬢さん、とても美味しそうな物を食べているね」



 私が美味しそうにシュークリームを食べていると、見知らぬ男が声をかけてきた。



 「はい。美味しいですよ」


 「とても、甘い匂いがしますが、それは甘くて美味しいのですか」


 「甘くて、とても美味しいですよ」


 「それは、なんて言う食べ物なのですか」


 「シュークリームです」


 「シュークリーム?初めて聞いた食べ物です。どこで手に入るのかな?」


 「私が作ったので買うことはできません」


 「そうなのか・・・・。お嬢さん、よかったら私にそのシュークリームを食べさせてもらえないかな」



 私に声をかけてきた男性はエルフみたいである。このエルフの男性は、身長が190センチくらいある細身で背が高いイケメンのエルフである。エルフならポロンさんの知っている人かもしれないので、確認するとこにした。いくらイケメンでも見知らぬ人には、気をつけないといけないのである。



 「ポロンお姉ちゃん。エルフの方がシュークリームを食べたいと言ってますがお知り合いですか」


 「こんなところにエルフが来るなんて珍しいわ。誰なのかしら」


 「初めましてエルフの王女様」


 「???どこかで、お会いしましたかしら?こんなに身長の高いエルフは珍しいので、一度見たら、忘れることはないはずよ」


 「王女様に会うのは初めてです。でも私はあなたのことをよく知っています」


 「もしかして・・・私のファンの方ですか?それならシュークリームをたくさんあげてもいいと思いますわ」


 「それなら、私は王女様のファンになります。なのでそのシュークリームを私に食べさしてください」


 「ルシスちゃん、彼にたくさんシュークリームを渡してあげてね」


 

 私はポロンさんが許可を出したので、見知らぬエルフにシュークリームをあげることにした。



 「ここにたくさんあるので好きなだけ食べてください・・・・・あれ?さっきまで大皿にシュークリームが、たくさんあったはずなのに一つもないです」


 「私のシュークリームはどこにあるのですか!」



 エルフの男性はの顔が曇り出して少しキレ気味に大きな声を出した。



 「さっきまでたくさんあったはずです。トールお姉ちゃん、シュークリームが見当たらないです。まだ残っていませんか?」



 「シュークリームならサラがものすごい勢いで食べてしまったからもう残ってないぞ」


 

 私はサラちゃんの方を見ると、お腹が富士山のようになって、仰向けに倒れているサラちゃんの姿を確認することができた。残りのシュークリームは全部サラちゃんが食べたのであろう。



 「ごめんなさいエルフさん。サラちゃんが全部食べてしまったので、もうシュークリームはなくなりました」


 「・・・・・・」



 私の言葉を聞いたイケメンエルフが、鬼のような形相でサラちゃんを睨みつけている。



 「また、あのサラマンダーかぁ!!!俺の雷光石だけじゃなく、シュークリームまでも食べるとは、今度こそ絶対に許さんぞ!!!」



 イケメンエルフの正体は妖精王のオーベロンであった。

 


 

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