第135話 妖精王パート5
サラちゃんは疾風の如くダンドーク山へ向かった。いつもなら、私のが飛行スピードは速いはずなのに、今日は付いて行くだけで精一杯である。
「サラ、俺らを忘れてるぞ」
本来なら、トールさん達はサラちゃんに運んでもらう予定だったのに、少しでも早く、シュークリームを食べたいサラちゃんは、トールさん達を運ぶのを忘れてしまったのであった。
「フワリンでは、サラに追いつくことは不可能だぜ」
「サラちゃんには困ったものですわ。でも、なぜあんなにやる気を出したのかしら?」
「ルシスちゃんが、シュークリームという甘い食べ物を用意したみたいなのよ」
「そうなのか?俺も食べたいぜ」
「私も食べたいわ」
「オーベロン王とうまく仲直りが出来たら、みんなで食べましょうとルシスちゃんが言ってたわ」
「それは、楽しみだわ」
「でも、大丈夫か?あのサラが素直に自分から謝ると思うか?」
「・・・・」
誰もサラちゃんが、素直に謝るとは思えないのであった。
「着きましたわ」
「サラちゃん、ロキお姉ちゃん達を連れてくるのを忘れています」
「あっ・・・・」
「ロキお姉ちゃん達が来るまで待ちましょう」
「ダメですわ。私の心はシュークリーム様に奪われましたわ。1秒たりともシュー様を待たせるわけにはいきませんわ」
サラちゃんはかなりシュークリームを気に入ったみたいである。でも、こんなにやる気を出したサラちゃんは初めてなので、すぐにでもオーベロン王と和解してくれそうな雰囲気を感じるのである。
「あそこに見える扉が、この世界と妖精の森ティルナノーグを繋ぐ妖精門ですわ。私は出禁を命じられているので、開けることはできないけど壊すことならできるわ」
「えっ、サラちゃんどういうことなの」
「簡単なことよ、私と仲直りをしないなら、この世界に2度と入れないぞと脅してやるのよ」
「サラちゃん・・・・」
「私はシュー様のためならなんでもするわ」
「サラちゃん、オーベロン王には雷光石を2つ用意しています。これをオーベロン王に渡して仲直りしましょう」
オーベロン王は妖精の王またはエルフの王とも言われれる妖精の森ティルナノーグの支配者である。オーベロン王は、エルフに妖精の力を与える代わりに、魔力をもらい永遠の命を手に入れたのである。なので、オーベロン王はエルフに妖精との契約をさせている間は死ぬことがないのである。オーベロンの年齢は1000歳とも言われている。
そして、そのことをサラちゃんは知っているのである。なので、妖精の門を壊すとオーベロンは、エルフから魔力をもらうことができなくなるので、永遠の命が途切れてしまうのである。
「あの食いしん坊王に雷光石をあげるのはもったいないですわ。私の扉ぶっ壊し作戦でいくのよ」
「サラちゃん・・・大丈夫なの?余計に揉めたりしないのかな?」
「ルシスちゃん、大丈夫よ。私は聖霊界で1番強いのよ。オーベロンにだって負ける気はしないのよ」
「サラちゃん。そういう問題じゃないのです。仲直りして欲しいのです」
「大丈夫よ。戦いの後に友情が芽生えると聞いた事があるわ」
「確かにそうかもしれません。サラちゃんの作戦にかけてみます」
私はこの時どうかしていたのだと思います。『戦いの後に友情が芽生える』と聞いて、サラちゃんの無謀な作戦を賛成してしまったのであった。
「扉を壊してきますわ」
「ばんがってね。サラちゃん」
私はサラちゃんにエールを送った。
サラちゃんはサラマンダーの姿になって大声で叫んだ。
「オーベロンよ。仲直りしに来てあげたわ。妖精の扉を壊されてくなかったら、潔く仲直りしてくださいと、私に嘆願するのよ」
「・・・・」
「返事がないということは仲直りは不成立ね。妖精の扉は私が壊してあげるわ」
サラマンダーは、大きく息を吸い込んで大きくお腹を膨らませた。
「これでもくらいなさい」
サラマンダーの口から火山が噴火したような、大きな溶岩の塊が無数に飛び出してきた。
溶岩の塊は、妖精の門を一瞬でぶち壊した。しかし溶岩の勢いは全く収まらずに、そのまま無数の溶岩の塊は、ダンドール山さえも瞬時に砕き跡形もなく消えてしまったのであった。
そして、ダンドール山が消えて無くなった後には、何もない土の大地になってしまったのであった。
「ルシスちゃん。これで解決ですわ。もうオーベロンはこの世界に来れないので、私の勝ちですわ」
「・・・・」
私が呆然としていると・・・
「ルシス、どうなっているのだ。さっきの溶岩はなんだったんだ」
「ルシスちゃん、大丈夫?何があったの」
「ダンドール山が無くなってますわ。何が起こったのかしら」
ロキさん達がやっと到着して私に声をかけきたのであった。しかし、もうダンドール山は跡形もなく無くなってしまって、妖精の扉も消えてしまったのであった。
サラちゃんの作戦を信じた私がバカであった。なんで、あの時サラちゃんを止めなかったのか、私は自分を責めるのであった。
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