第134話 妖精王パート4
「ポロン待たせたな」
「お父様、王族会議は終わったのですか」
「ああ。そして、雷光石をお前に譲ることに決定したぞ」
「ありがとうございます。お父様」
「ポロン、アラスター前国王はお前にとても感謝していたぞ。アビス叔父さんを救いドワーフとの和解の成立、お前の功績は雷光石を譲るのに当然の褒美だと言っていた。ダミアンは、最初は反対していたが、アラスター前国王がお前への感謝の気持ちを表明してからは、何も意見を言わなくなったから全員一致で可決されたぞ」
「お父様、アビスやドワーフの剣は私1人の力ではありません。ラスパのメンバー、サラちゃん、イフリート、みんなの協力のおかげでなし得たことであります」
「それはわかっている。ポロン、素晴らしい仲間に出会えて良かったな。ところで、獣人の襲撃の件は解決したのか?」
「はい。無事に解決しました」
「それは良かった。近いうちにアラスター前国王、アビスに会いに、ドワーフの国へ訪れる予定になっている。獣人の脅威がなくなったのなら安全に行くことができそうだな」
「問題ないと思います。獣人の国は平和を取り戻しました。なのでドワーフの国は安泰です」
「ポロンには雷光石を褒美として渡したが、仲間の皆さんにもエルフの王として、ぜひ何かプレゼントをしたいと思うのだが、何か欲しいものはあるのか」
「それなら、国宝級のブドウ酒が飲みたいぜ」
「トール!ライアー王子から、金ラベルのブドウ酒を頂いたでしょう。それで褒美の件は終わりにしましょう」
「金ラベルのブドウ酒?」
「私が説明いたします。ラスパのメンバーが応接室で国王様を待っている間に、私が金ラベルのブドウ酒をプレゼントしました。彼女らの功績を讃えるのには、ちょうど良いお酒だと思い振る舞うことにしたのです」
「ライアー!良い判断だ。確かにそれだけの功績を残したと俺も思っているぞ」
ライアーのナイスフォローのおかげで、ポロンさんが勝手に持ち出した金ラベルのブドウ酒を、うまく誤魔化すことができたのであった。
「せっかくなら、もっと国宝級のブドウ酒も飲みたかったぜ」
「トール君、まだ飲み足りないのかい?」
「もちろんだぜ。俺の胃袋は全く満たされていないぜ。それに、ライアー王子が以前飲んだ種類の国宝級のブドウ酒も俺にも飲ませて欲しいぜ」
「トール」
「トールお姉ちゃん・・・それを言ったら、いけないのでは・・・」
「ライアー、お前にはまだ国宝級のブドウ酒を飲ませたことはないはずだが・・・」
「それは・・・、あの・・・実は・・・」
「お父様許してあげて。実はポロンが旅に出た日の国宝級のブドウ酒を盗んだ犯人はライアーだったのよ」
ヘラは隠すことはできないと思って国王に真実を語ったのであった。
「そういうことだったのか」
「お父様、申し訳ございません。あの頃俺は本当にバカでした。どんな処罰でも受ける覚悟はできています」
「ライアーよ、気にすることはない。あのブドウ酒は偽物だ」
「どう言うことですか」
「お前が飲んだブドウ酒は、俺が17歳の頃に貯蔵庫に忍び込んで別のブドウ酒にすり替えた物だ。いつバレるかヒヤヒヤしていたが、泥棒に盗まれてホッとしていたのだよ」
「そうだったのですか」
「だから、あの事件の犯人は未解決事件として、このまま放置しておこうと思っていたのだよ」
ブドウ酒を盗み飲みするのは、親から引き継いだ血筋であったみたいである。ブドウ酒略奪事件の真相も解決し、国王も参加して宴会は夜中まで続くのであった。
次の日、私たちは雷光石を持って妖精王の住むダンドーク山に向かった。
ダンドーク山に入ると大きな木の扉がある。その木の扉を開けると妖精たちの住むティルナノーグの森へ転移されるのである。
テイルナノーグの森で王族の血を引くエルフは妖精と契約するのである。王族の血を引くエルフは、妖精の扉を16歳の誕生日の日のみ開くことができるのである。
本来なら聖霊神の加護を持っているポロンさんは、テイルナノーグ森へ自由に行き来できるのであるが、サラちゃんがオーベロン王と喧嘩したために出禁になってしまったのである。なので、オーベロン王とサラちゃんを和解させる為に雷光石を手に入れたのである。
「オーベロン王に、2つも渡す必要ありませんわ。1つは私がもらうべきですわ」
「サラ、おとなしく言うことを聞いてくれ。俺たちはオーベロン王に魔石の覚醒をしてもらうために、雷光石を手に入れたのだ。それを理解してくれ」
「ウーーーー」
サラちゃんは頬を膨らまして、怒っているんだぞ!アピールをしてきた。
「サラちゃん、後で、美味しい料理を出してあげるから、今日はおとなしくオーベロン王と仲直りしてください」
「私は雷光石が食べたいのよーーー」
サラちゃんはジタバタして、さらに怒っているんだぞアピールをしてきた。
「お願いサラちゃん。私たちにとって、とても大事な事なのよ。後で好きなものを用意してあげるから、オーベロン王と仲直りをしてね」
「私からもお願いするわ。召喚者として、今日はオーベロン王との仲直りすることをお願いするわ」
みんなで、サラちゃんを説得するが、なかなかサラちゃんは応じてくれない。
「サラちゃん、これを食べてみて、プリンのように甘くて頬が溶けるような甘ーーい食べ物です」
「プリンより、甘い食べ物ですって!!!」
さっきまでいじけていたサラちゃんの目が煌々と光だす。
「そうです。ふわふわの生地の中に、あまーいプリンを閉じ込めたような食べ物です」
「食べたいですわ」
「オーベロン王と仲直りしてくれるなら、あげてもいいです」
「する。すぐにするわ」
私はサラちゃんにバケツプリンを食べ尽くされてので、新しいスイーツの試作に入っていた。アカシックレコードを使って何度もチャレンジしてやっと完成したのであった。
「サラちゃん。これは、シュークリームという食べ物です。味見に1つあげるので食べてみてください」
「ふわふわして、とても美味しいそうですわ」
サラちゃんは、パクリとシュークリームを食べた。
サラちゃんのほっぺが溶け落ちるかのように、ダラーーーンと伸びて至福の笑みを浮かべて倒れてしまった。
「なんなんですか?この食べ物は。あまりの美味しさに倒れ込んでしまいましたわ」
「オーベロン王と仲直りできたら、好きなだけシュークリームを食べさせてあげます」
サラちゃんの目が赤く輝き全身から炎が上がり出した。
「やりますわ。オーベロンをコテンパンにして仲直りさせてみせますわ」
サラちゃんの闘志に火がついた。思っていた仲直りの展開とは違うが、サラちゃんがやる気を出したので、私たちはダンドーク山にある妖精の扉に向かったのであった。
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