第133話 妖精王パート3
トールさん達は応接室で宴会を始めてしまった。とても王様を待つ客人の姿勢とは到底思えない。なので、私とロキさんは交代で応接室の前に立ち、いつ王様が来ても失礼がないように、監視することにした。そんな私とロキさんの気持ちを全く理解せずに、トールさん達は大騒ぎをしながらお酒をジャンジャン飲むのであった。
「ポロン、ブドウ酒がもう無くなってきたぜ」
「本当ですわ。メイドに言ってすぐに取りに行かせますわ」
「ポロン王女様、これ以上ブドウ酒を勝手に持っていくと国王様に見つかってしまいます。もう辞めておいた方が良いと思います」
「大丈夫ですわ。私はドワーフとの争いに終止符を打った英雄よ。お父様も許してくれるはずよ」
ポロンさんはお酒を飲んでかなり気が大きくなっている。
「しかし・・・ポロン王女様、ブドウ酒は国王様の秘蔵のコレクションでもあります。間違って年代物のブドウ酒を持ってきてしまったら、私が職を失ってしまいます」
「えっ・・・全て同じブドウ酒ではないの?」
「違います。私はいつも国王様に指定されたブドウ酒を運ぶようにと命じられています。私が知っているのは、金のラベルを付いたブドウ酒だけは絶対に持ち出したらいけないと言われていることだけです」
「知らなかったわ」
「一度だけ何者かが貯蔵庫に侵入して、国宝級のブドウ酒を盗んだ者がいます。その時は、国をあげての大捜索になりました。しかし、未だに犯人は捕まっていません。犯人の特徴はわかっていませんが、未だに指名手配されて多額の懸賞金もかけられています」
「そんなことがあったのね。知らなかったわ」
「ポロン王女様が知らないのは、当然です。あの事件は、ポロン王女様が旅に出かけられた日に起こったのです。王様は大事な王女様の捜索よりもブドウ酒略奪犯の捜索を優先すると、王族会議で決まったので、とても悔しがっていたのを覚えています」
「そ・・・そうなんですね」
ブドウ酒略奪犯の犯人に、ポロンさんは心当たりがある。それはポロンさん本人である。ポロンさんは、妖精との契約する大事な日に全く眠れないので貯蔵庫に侵入して、ブドウ酒を飲んだであった。その時に飲んだブドウ酒が国宝級のブドウ酒だったのであろう。
「ポロン、このブドウ酒も金のラベルが付いているぞ」
「なんですってーーーー。それは非常にまずいですわ」
「どうするポロン、水でも入れて戻しておくか」
「名案ですわ。それしかありませんわ」
「トール、ポロン、そんなのすぐにバレるわよ。素直に王様に謝りにいきましょう」
ロキさんが最も正しいこと言う。
「ルシス、お前の魔法でなんとならないのか」
「そうですわ。ルシスちゃんならなんとかできると思いますわ」
「無理です。素直に謝ってください」
「嫌ですわ。せっかく私の評判が良くなったのに、ここで評判を下げるわけにはいきませんわ」
「早く追加のお酒を用意してよーーー」
「そうです。追加のお酒を飲ませてください」
ポロンさんとトールさんがアタフタしている時に、呑気にお酒を飲んでいるサラちゃんとイフリートであった。
私はとりあえず追加のお酒を収納ボックスから取り出して、サラちゃんを大人しくさせた。そして、ポロンさんとトールさんを説得することにした。
「素直に謝れば王様も許してくれます」
「俺は出された物を飲んだだけだ。俺は悪くないぞ」
「私も置いてあるのを持ってきただけですわ。意図的に選んだわけでないので、私も悪くはありませんわ」
2人は頑なに謝ること拒否をする。大人気ない2人である。
「何をしているのだ」
私たちが応接室でゴタゴタしていると、1人の男性が応接室に入ってきた。
「ライアーお兄様」
「ポロン帰ってきていたのだな」
「はい」
「それで、何をもめているのだ?」
「実は・・・」
ポロンさんは、ライアーに金のラベルのブドウ酒を勝手に飲んだことを説明したのだった。
「そんなことか」
「またヘマをしてしまったので、どうしたらいいのか困っていました」
「気にするな。俺が提供したことにしよう。ポロンには大きな借りがあるし、ドワーフとの交流再開の立役者だ。なので、俺が貴重なブドウ酒をご馳走したことにすれば良い」
「ありがとうございます。でもお兄様は怒られないのですか?」
「俺はお前と違ってそれなりの役職にもついているから問題はない。それに、ポロンの冒険者仲間の方々にも、エルフの国としてお礼をしてもなんの問題もないはずだ」
「それは助かったぜ。それなら、堂々と秘蔵のブドウ酒が飲めるな」
「トール、少しは反省しなさい」
トールさんは、ロキさんに怒られる。
「はい、はい。反省してまーーーす」
「ロキさん、気にしないでください。秘蔵のブドウ酒は無理だが、追加のブドウ酒を用意させる」
「さすがライアー兄貴。話しがわかるぜ」
秘蔵のブドウ酒を飲んだ件は無事に解決した。ライアーの許可が出たので私もロキさんも宴会に参加することにした。
ライアーから、ポロンさんが応接室で宴会をしていると聞いて、姉のヘラ、オーブリーも差し入れを用意して応接室に集まったきた。
私たちは王族会議が終わるまで宴会を楽しんだのであった。
ちなみに、国宝級のブドウ酒を飲んだのはポロンさんではなくライアーであった。ライアーはそのことは王様には絶対に内緒にしてほしいとみんなに懇願したのであった。
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