第132話 妖精王パート2

  


  次の日サラちゃんに頼んで、ティグレさんとスネークをバシャーから取り戻した獣人国の領地に連れて行ってあげた。そして、ブラカリの町に戻ってバニーを迎えに行った。


 バニーにバシャーを倒した事、そして妻が無事に保護をされていることを伝えると、バニーは涙を流しながら喜んでいた。


 バニーは感謝の証として、私のモフモフ攻撃を拒む事なく心地よく受け入れてくれた。


 私はバニーを連れてターニプに戻りブランシュさん、リオンさんを連れてティグレさんの元へ運んであげた。


 ランナーとワニパラ団は、自分たちで獣人の国へ戻って行った。ダーシャンの元で保護されていた獣人たちも内戦が終了したので自分たちの故郷に戻って行ったのである。



 「これで獣人の国も平和になりますね」


 「ありがとう。これもルシスちゃんが協力してくれたおかげだ。本当に感謝する」


 「ありがとにゃ」


 「ありがとう」


 「感謝します」


 「助かりました」


 「ところで、ティグレさんは3獣士としてこの国に残るのですか」


 「いろいろ考えたのだが、3獣士の座はリヨンに譲ることにした。俺は妻と一緒にブラカリの町に戻ることした」


 「そうなのですね。なら私が2人を連れて行ってあげますね」


 「助かるにゃー」


 「何度も往復させて申し訳ない」


 「大丈夫です」


 「大丈夫じゃないですわ」



 サラちゃんが怒り出したのであった。もちろん、移動するのが嫌なのではなくて、お腹が空いたのであろう。でもそうなる事はわかっていたのである。



 「サラちゃん。バニーちゃんが、豪華な料理を用意しています。その料理を食べてから出発しましょう」


 「豪華な料理ですって!!!仕方ありせんわ。獣人の王ですら私がいないと移動すらできないみたいなので私が運んであげますわ」


 「ありがとう、サラマンダー様。あなたの飛行能力は世界一です」


 「もちろんですわ、ティグレさん。きちんと私のことを理解してもらえて嬉しいですわ」


 私はティグレさんにサラちゃんの取り扱いを説明していたので完璧な対応をしてくれた。今後また獣人の国で何かが起こった時に、早急に運んで貰うためにサラちゃんのご機嫌を取ることは重要なのである。



 サラちゃんの食事を終えてティグレさんとブランシュさんをブラカリの町へ運び、そしてエルフの国へ戻ることにした。エルフの国へ戻ってポロンさんのお父さんに会い、雷光石が手に入るか確認するためである。なのでロキさん達は先にエルフの国へ向かっていたのであった。




 「雷光石は手に入るかな?」


 「大丈夫ですわ。お父様がなんとかしてくれますわ」


 「そういえばルシスちゃんの話しによると、オーベロン王用に念のために用意していた特性プリンを、全部サラちゃんが食べてしまったらしいのよ。なので、雷光石が手に入らないと困ると言ってましたわ」


 「そうなのか・・・。ポロンの父に期待するしかないみたいだな」


 「大丈夫ですわ。かわいい娘のためなら、お父様も側近の意見を押し曲げてでも手に入れてくれますわ」


 「それは、それで問題だと思うのだが・・・」



 ポロンさんはエルフとドワーフの長年にわたる冷戦状態を解決した当事者である。なので、その褒美として雷光石をもらえる可能性はかなり高い。しかし、アールヴ王とダミアンはものすごく仲が悪いのである。雷光石をもらえるかどうかは、ダミアンが賛成するか否かで決定すると思われる。




 「着きましたわ。私が一足先にお父様に会ってきますわ。お二人は応接室で待っていてください」



 ロキさん達は、メイドに案内されて応接室に向かった。


 私は少し遅れてお城についた。門兵はポロンさんから事情を説明されていたので私を応接室へ案内してくれた。



 「ルシス、今着いたのか」


 「はい。あちこち回ってやっと着きました」


 「お疲れさん。サラちゃんは帰ったのかな」


 「サラちゃんは、ブラカリの町でティグレさんにお礼の宴をしなさいと催促していたので、今頃、食べ過ぎでダウンしていると思います」


 「サラは、食ってばかりだな。あれで、聖霊神最強なのが驚きだぜ」


 「食欲が最強なのかもしれませんわ」


 「そうだな。食い意地が聖霊神最強なのかもな」


 「でも、オーベロン王はサラちゃんに雷光石を食べられて激怒して、精霊の神殿に入れなくなったのよ。妖精王もかなりの食い意地のはった王ですわ」


 「でも、雷光石は美味しかったぜ。怒るのも無理ないかもしれないぜ」


 「・・・・・」



 サラちゃん、オーベロン王に負けないくらい、食い意地のはった人物がここにいたのであった。




 「バタン」



 「ポロン、どうだった」


 「それが・・・・まだ、王族会議が終わっていないみたいですわ」


 「それほど雷光石が貴重なのか・・・」


 「いえ、違います。ドッレがドワーフ流の会議を提案したみたいで、お酒を飲みながら王族会議を開いてしまったのです。お父様はブドウ酒が大好きでなので、会議そっちのけで大宴会になったみたいですわ」


 「それは、困ったものですわ。それで会議はどの程度進んでいるのかしら」


 「お母様の話しによると、アビスの件は今日国民に知らせることになったみたいですわ。そして、ドワーフとの国交を再開するとのことですわ。雷光石の件は今協議中みたいですわ。予想通りダミアン王兄殿下が反対しています。しかし、アラスター先代王が味方になってくれているので、大丈夫だと言ってましたわ」


 「そうなのですね。それなら安心だわ」


 「俺たちも、ドワーフのしきたりを見習って、ここでお酒を飲んで待つのはどうだ」


 「素敵な案ですわ」


 「いえ、ここはポロンの家ですが王様のお城ですわ。応接室でお酒を飲むのは失礼だと思うわ」


 「かまいませんわ。王女の私が許可しますわ。地下の貯蔵庫に行ってお酒をとってきますわ。それと、メイドに指示して食事の準備をさせますわ」



 ポロンさんは普段とは違い適切な指示を出して、宴会の準備をする。


 ロキさんは注意するのを諦めて黙って椅子に座っている。


 トールさんは、目を輝かせてお酒が出てくるのを待っている。


 そして、ポロンさんの精印から、這いずりながらサラちゃんが現れる。



 「イフリートから連絡がありましたわ。私を除け者にするなんて許さないわ」



 応接室に全員が揃ったのであった。


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