第131話 妖精王パート1

  


 「ティグレ、久しぶりだな」


 「長い間迷惑をかけたな」


 「気にするな。必ず戻ってくると俺は信じていたからな」


 「ありがとう」



 ティグレさんとダーシャンは、お互いを強くだきしめて感動の再会を果たした。



 「ところでティグレよ、さっきから俺の頭上にいる女の子は誰なんだ」


 「・・・すまない。その子は俺の大事な友達ではあるのだが、その・・・何をしているのか、俺にもわからないのだよ」



 「ダーシャンさん。パオーーーンをしてください。パオーーーンです」


 「ティグレよ、パオーーーンとはなんなのだ?」


 「すまない。俺にも理解不能だ」


 「パオーーーーンが無理でしたら、耳を羽ばたかせて飛んでください」


 「ティグレよ、俺にそんな能力があったのか」


 「すまないダーシャン・・・無理かもしれないが耳を羽ばたいてくれないか。その子には、いろいろとお世話になったので力になってあげたい」


 「お前が言うならやってみるか」



 ダーシャンは全身の力を耳に集中した。そして、耳を羽ばたかせてみた・・・・・・


 しかし、何も起こらない。3mもある巨漢が耳を羽ばたかせてくらいで、飛べるわけがないのであった。



 「ルシスちゃん。もう勘弁してやってくれ。ダーシャンは足を負傷している。立っているのも大変なのだよ」


 「そうでしたね。私としたことがついゾウさんを見て、舞い上がってしましました。すぐに治療してあげます。なので、もう一度耳を羽ばたかせて飛べるか最チャレンジしてください。私の記憶が正しければ必ず飛べるはずです」



 私は、子供の頃に見たことがある。大きな耳を持ったゾウが、耳を羽ばたかせて、飛んでいるアニメを・・・。ここは異世界ファンタジーの世界だ。なので、ゾウさんは必ず空を飛べると私は確信しているのである。


 私は回復魔法でダーシャンの治療をした。



 「なんだこの治癒魔法は!バシャーの鋭い牙で負傷した足を瞬時で治したぞ」



 ダーシャンの側近のヒッポパーが驚いている。


 獣人は魔法が苦手である。獣人は他の種族に比べて強靭な肉体とパワーがある代わりに魔法は苦手なのである。なので、魔法は簡単な魔法しか使えない。それに、ダーシャンの傷はかなりの重傷であり、私の高度な治癒魔法だからすぐに治ったのであり、ヒッポパーが驚くのは当然である。



 「ルシスちゃんは、かなりの高度な魔法が使えるのだよ」


 「確かにこの治癒魔法の効力は絶大だ」


 「私は魔法が得意なのです。なので、お礼にダーシャンさんの耳で空を飛んでみたいです」


 「治療のお礼は・・・・してあげたいのだが、俺は空は飛べないのだよ」


 『ガーーーーーーーン』

 「・・・・そんな・・・バナナ・・・」



 私の異世界に行ったらやってみるぞリストの一つがゾウさんの耳で空を飛ぶことだったのに・・・。


 


 「私はなんの為にここにきたのだろう・・・」



 私は絶望して膝から崩れ落ちて座り込んでしまった。



 『ガツン』



 ロキさんが私の頭を殴りつけた。



 「ティグレさん、ダーシャンさん。申し訳ございません。ルシスちゃんは普段は頼りになるとてもいい子なのですが、たまにおかしくなってしまうのです。今、その悪い病気が発症しています。私が責任を持って対処します」



 ロキさんが、ティグレさんとダーシャンに何度も謝るのであった。


 私はその横で空を飛びたいと駄々をこねてゴロゴロとローリングするのであった。




 「ルシスちゃん、諦めてくれたかな?」


 「まだ諦めきれません」


 「ダーシャンさんは飛べないのです」


 「私の国では飛んでました(アニメで)」


 「また、別の種族なのかもしれないわ。なので今回は諦めなさい!」


 『シュン』



 私は仕方なく諦めることにした。


 

 私がショックで落ち込んでいることを尻目に、ティグレさん達は、ダーシャンの屋敷に案内されて、再会の宴を始めていたのであった。


 もちろん、ロキさん、ポロンさんも楽しく飲んでいる。しかし、ロキさんは、私を慰めるためにずっとそばにいてくれたのであった。



 今日は、獣人の国が以前のような平和を取りも出した特別な日である。なので、ダーシャンの住む町では、夜遅くまで祭りのようににぎやかな夜になったのであった。





 「ジラーフ様、どうしますか」


 「バシャーは、やられてしまった。そして、ティグレが戻ってきた・・・。俺の獣人国家統一の夢が終わってしまうのか」


 「ジラーフ、困っているみたいだな」


 「シャークじゃないか!今日は何のようだ」


 「麻黄薬が完成しそうだ」


 「本当か!」


 「これが、完成すればお前は獣人の王になれるはずだ」


 「いつ手に入るのだ」


 「そう、焦るな。完成したらお前に最優先に渡してやるさ」


 「頼むぞ。これで、俺はあの2人を超えることができるぞ」


 「ジラーフ様危険です。麻黄薬は、精神を崩壊して化け物になってしまうと言われています。おやめ下さい」


 「問題ない。それは失敗作の話しだ。精神崩壊の副作用がなくなれば、麻黄薬はこの世界を大きく変えるだろう。麻黄薬をたくさん手に入れた者がこの世界の覇者になるのだ。俺は獣人の国だけでなく、全ての種族の頂点に立ってやる」



 ジラーフの野望は大きくなるのであった。


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