第130話 ターニプ防衛パート17



 「ダーシャン様、ジラーフがもうすぐこの町に到着すると思われます。どうか、考え直してください」


 「ヒッポパー、俺の気持ちは変わらないぞ。俺はここでジラーフの決闘を受けるぞ」


 「私も反対です。ジラーフは、ダーシャン様の負傷を知っています。馬鹿正直に決闘を受けることはありません。ジラーフは私たちで撃退します」


 「ラマス、それは無理だ。俺はティグレとの約束がある。3獣士はいかなる時も逃げることは許されない。負傷していようが、決闘を望まれたら応じるのが3獣士だ」


 「しかし、ティグレ様は赤ん坊を人質に取られてバシャーに勝利を譲りました」


 「そうだ。ティグレは決闘から逃げずに、バシャーに負けるという屈辱に耐えたのだ。俺はアイツは勇敢だったと思っている。赤ん坊のためにできる限りのことをやったのだ。だから、俺も負傷くらいで逃げるわけにはいかないのだ」



 ダーシャンは象の獣人である。体長3mで、獣人の中でもかなり巨漢である。大きな耳に長い鼻をもち、二本の鋭い牙を持っている。体型はかなりの大柄で、獣人の中でもトップクラスの力を持っている。武器は大きな斧を持ち、大木ですら草を刈るように、簡単に切り倒すことができる腕力がある。


 3獣士の中では最強を誇り、力比べではティグレさんですら敵わないのである。そんなダーシャンですら、長年によるバシャーとジラーフの攻撃で疲労がたまり、油断してバシャーの鋭き牙を、右膝に食らって負傷したのであった。


 バシャーとジラーフは、ダーシャンを恐れているので、決闘は申し込まずに、夜中に急に攻撃を仕掛けてくることがほとんどであった。


 しかし、今回は、ダーシャンが負傷していると知ったので、ジラーフは決闘を求めて、この町に部隊を送り込んだのであった。



 「スネークの情報ですと、ティグレ様がバシャーを倒しに、戻ってくると聞いています。ティグレ様が、戻ってくるのを待つのも一つの手だと思います」


 「私もそう思います。ティグレ様が戻って来られたら、ジラーフも退散すると思います」


 「ヒッポパー、ラマス、お前達が俺の体を気遣ってくれているのは嬉しいことだ。しかし、ティグレのためにも、俺が、ジラーフを叩きのめさないといけないのだ」



 ヒッポパーとラマスは、カバの獣人でありダーシャンの側近である。体長は、ティグレさんと同じで2,5とかなりの巨漢である。鋼鉄の皮膚も持ちどんな攻撃も弾き飛ばすほど硬いのである。また、ダーシャンほどでないが、かなりの腕力があり、ジラーフよりも強いのでは?と噂されるくらいの実力の持ち主である。





 「ダーシャン、俺と決闘ををしろ。長年の戦争も今日で終わらせてやるぞ」



 「ダーシャン様、ジラーフが着いたみたいです。もう一度考え直してください」



 ジラーフは、キリンの獣人である。体長は2mとそれほどデカくはないが、首を自在に伸ばすことができる。ジラーフの首は、最大3mも伸びると言われている。


 ジラーフの武器は、その自在に伸びる首をぐるぐると回して、頭の鋭いツノで、相手の体をえぐることである。また、ジラーフの脚力は獣人界でトップクラスであり、細長いスラっとした足での、キリンキックは、かなりの衝撃があると言われている。



 「珍しいな。お前が決闘を申し込むなんて、俺に勝てると思っているのか」


 「ダーシャン、いつまで、その強気の態度を維持できるかな。俺の本気をお前はまだ知らないぜ」


 「お前の本気は俺は知っているぜ。その自在に伸びる長い首で、いつでも、逃げれる場所を見つけ出して、その自慢の脚力で、あっという間に逃げるという、お前の本気の逃走劇が目に浮かぶぜ」


 「殺してやるぜ。この耳デカ野郎め!!!!」


 「ジラーフ。お前の相手は俺がしてやるぜ」


 「あーーーー。誰だ!俺の決闘を邪魔するのは!!!!」


 「久しぶりだな。ジラーフ。お前が、ダーシャンに決闘を挑む根性があるなんて知らなかったぜ」


 「・・・・・・なぜ、お前がここにいるのだ」


 「バシャーから、聞いてなかったのか?俺が戻ってくることを」




 私たちはギリギリ間に合ったのであった。ジラーフよりも、早くダーシャンの元へ着けると、予測していたのだが、途中でサラちゃんがお腹が減ったからもう動かないと、ダダを捏ねだしてしまった。なので、おやつ休憩を挟んだので少し遅くなったのであった。


 私たちが着いたときは、ジラーフがダーシャンに、決闘を申し込んでいたところだったので、ギリギリセーフである。



 「あれが、ダーシャンかぁ、ティグレさんよりでかいな」


 「本当ですわ。あんな大きな獣人は初めてみましたわ」


 「そうですね。敵じゃ、なくてよかったわ」


 「ゾウさんだぁーかわいい」



 私は、ダーシャンを見てキュンときたのであった。私は、動物の中でもゾウさんが1番好きなのであった。あの大きな体に、つぶらな瞳、そして、大きな耳に長い鼻がとても可愛く見えるのであった。あの大きな耳をバタバタさせて、一緒に空を飛んでみたいと思ったのであった。


 そんな私を尻目に、ティグレさんが、ダーシャンの危機を察知して、すぐにダーシャンの元に駆け付けたのであった。



 「ティグレ、バシャーはどうした」


 「あいつなら、昨日倒したぜ。次はお前の番だ。俺に決闘を挑むなんて、いい度胸じゃないか。ちなみに俺はどこも負傷していないぜ」


 「待て!俺はお前と決闘するとは言っていないぞ」


 「ダーシャンの代わりに俺が決闘すると言っているのだ。それで構わないだろ」


 「ちょっと待て。平和的に考えようではないか。俺はバシャーに頼まれてここに来たのだ。それで・・・・そうだ。バシャーがやられたのなら、俺はもうダーシャンと決闘する意味がなくなったのだ。そうだ。決闘する意味がないから俺は帰るぞ」



 そう言うと、ジラーフは自慢の脚力で全力疾走して逃げ出したのであった。



 「ダーシャンよ。あいつは逃げ足だけは、3獣士最強だよな」


 「そうだな・・・・・」



 ティグレさんは呆れた様子で逃げるジラーフを放置した。


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