第289話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート1
★主人公のルシス視点に戻ります。
私たちは馬車に乗りキャベッジの町を出発して、南の森付近まで辿り着いた。
「ここからは歩いて行きましょう」
ロキさんが、馬車から降りるようにみんなに言う。
「ルシス、馬車を収納ボックスにしまってくれ」
文句も言わずトールさんが馬車から降りて私に声をかける。
「わかりました」
私は馬車を収納ボックスにしまった。私の収納ボックスはなんでも入る優れものである。
「サラちゃんは、呼ばなくていいかしら?」
火の精霊神のサラちゃん(サラマンダー)は、住処であるイディ山から、ポロンさんの精印を通って自由に移動できるのである。
「今はいいわ。私たちだけで南の森を探索しましょう」
ロキさんが、サラちゃんの応援を断った。
「早くこのミョルニルを使いたいぜ」
ミョルニルとは、『神の子』であるバルカンが作った神剣である。
「トール、私たちは南の森を探索に来たのよ。もし、『ホロスコープ星国』の兵士に出くわしても、安易に戦ってはダメよ」
私たちの今回の依頼は、南の森の状況の確認である。噂通りに『ホロスコープ星国』が南の森を支配していれば、その状況を報告するのであって、決して、『ホロスコープ星国』と戦うのが目的ではない。なので、サラちゃんを呼ばないのである。サラちゃんは天真爛漫なので、何をするか分からないのである。悪く言えば制御不能なのである。
「わかってるぜ。俺たちが原因で戦争になるのは困るからな」
と言いながらも、ミョルニルを振り回して、やる気満々のトールさんである。
「ポロンさん、私の出番はあるのですか?」
ポロンさんに声をかけたのは、サラちゃんの体の一部であるイフリートである。イフリートは火の精霊であり、ポロンさんがサラちゃんの加護を受けた時に、ポロンさんに協力することになったのである。
「出番はなさそうよ」
「そうですか・・・」
イフリートは寂しそうであった。ポロンさんは、イフリートに強大なる力を借りた時は、お礼として美味しいお酒をプレゼントしているので、イフリートはそのお酒が飲みたいのであった。ちなみに、そのお酒は私が作っている『大魔王』と言うお酒なので、収納ボックスにはたくさんある。
「あれは、だれかしかしら?」
ロキさんが、南の森の入り口に、1人の女の子がいるのを発見した。
その女の子は、年齢は10歳くらいで、ボサボサの黒い髪のあどけない表情の可愛い少女であった。
「あれは・・・」
私は、その女の子に見覚えがあった。
「あーーーー!ルシスちゃんだぁ〜」
私に気付いた女の子は、私のところへ向かってきた。
「ルシスちゃんの知り合いなの?」
ロキさんが私に尋ねる。
私が返事をする前に、女の子は、私に抱きつこうと飛びかかってくる。
私は飛びかかってくる女の子をさらりと交わす。
私が、避けたので、後ろにいたトールさんに女の子は抱きつく。
『ぎゅーーー』
「イテテテテ」
トールさんは悲鳴をあげる。
「ゲリちゃん、力が入りすぎているよ!トールお姉ちゃんの背骨が折れてしまうます」
女の子は、軽くトールさんを抱きしめるが、その力はハンパなく強く、トールさんはかなり苦しそうだ。
「ごめんなさい。ごめんさい」
女の子は、トールさんから離れて、頭を下げて何度も謝る。
「ゲリちゃん、ちょっと来て」
私は、頭を下げて謝っているゲリの腕を引っ張ってみんなから少し離れた。
「なんで、ゲリちゃんがこんなところにいるの?」
「ルシスちゃんこそ、なんで人界にいるだぁ?」
この女の子の正体はゲリという狼の神獣である。私は、天使様との特訓の時に戦ったことのある神獣である。クラちゃん(クラーケン)と同様に、何度か戦っている間に仲良くなったのであった。
「実は、魔界を追放されて人界に来ているの。でもそのことは、人界では絶対に内緒にして欲しいのよ」
私は、詳しいことは説明できないので、簡単に説明した。
「もちろんだぁ〜私も人界に来ていることは秘密なので、お互いに内緒なのだぁ〜」
「ゲリちゃんは、何しに人界に来たの?」
「実は、お姉ちゃんを探しに来たのだぁ」
「ゲリちゃん、お姉ちゃんがいたの?」
「うん。でも、お姉ちゃんは、神獣ではないのだぁ」
「えっ・・・姉妹なのに神獣ではないとは、どういうことなの?」
「私たち姉妹は、どちらかが神獣になり、もう1人は天界から追放されて、人界で暮らさないといけないのだぁ。本当はお姉ちゃんが神獣になる予定だったのだぁ・・・でもお姉ちゃんは、私が天界から人界へ行くことを危険だと思って、代わりにお姉ちゃんが、人界行くことになったのだぁ。人界へ行ったお姉ちゃんは、天界に住んでいた頃の記憶を全て消去されたので、自分が何者かさえわからずに、人界で生活をしているはずなのだぁ〜。私はお姉ちゃんのことが心配になって、天界を抜け出して人界へ来たのだぁ」
「そうだったのね・・・それで、お姉ちゃんは見つかりそうなの?」
「うん。いろんな森へ行って、魔獣に声をかけて、お姉ちゃんらしき魔獣を探したのだぁ。この森にお姉ちゃんに似た美しい白い毛並みにウルフがいると教えてもらったのだぁ」
「それで、今から南の森に入ろうとしていたのね」
「うん」
ゲリは、お姉ちゃんに会えると思って嬉しそうに返事をした。
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