第154話 妖精王パート24
「これだけかよ」
「やっぱりサラちゃんね」
2人はサラちゃんの性格がわかっているので納得する。
「これが幻魔のコアの味なのか・・・今までの苦労が忘れるくらいに美味しいぜ」
「ホントね。虹蛇の体内にきて正解だったわ」
2人は幻魔のコアがとても美味しかったので、虹蛇の体内に来て大正解だと感じたのであった。単純な2人である。
「幸せですわ」
ほくほく顔のサラちゃんは、幻魔のコアを堪能して愉悦の笑みを浮かべていた。
今回の幻魔のコアはヒュドラの10倍くらいの大きさだったので、サラちゃんは非常に満足していた。
「村長、大変です」
私達がヤミークラブ鍋パーティーをしていると、1人の女性が血相を変えてやってきた。
「どうしたのだ」
「虹蛇の動きが止まりました。そして、虹蛇の体が崩れています」
「何があったのだ」
村長は慌てて家を飛び出した。私とロキさんも村長の後に続いた。
外に出ると巨大な虹蛇の体が音を立てて崩れ落ちていく。あまりの衝撃のために、周りの家は大きく揺れる。
「村長、これはどういうことですか」
ロキさんが村長に尋ねた。
「もしかしたら、誰かが虹蛇を倒したかもしれない」
「あんな大きな蛇を倒すことなんてできるのかしら?」
ロキさんが疑問に思う。
「言い伝えによると、虹蛇を倒すには虹蛇の体内に潜んでいる本体を倒すと良いと言われていますが、誰も体内に入る勇気がある者などいないのです」
私は思った。体内に入って倒すとなると攻略はヒュドラと同じであると・・・それならあの虹蛇も幻獣なのかもしれないと。そして、誰かが幻魔のコアを砕いたか、もしくは作り出した本人を倒したから、虹蛇の動きが止まって崩れだしたのだろうと。
私がそう考えていると、私を呼ぶ声が聞こえた。
「ルシスちゃーーーん。虹蛇にも幻魔のコアがあったわよ!」
私を呼ぶ声の正体はサラちゃんであった。サラちゃんは嬉しそうに私に近づいてきた。
「あの虹蛇の中には、すごく大きな幻魔のコアがあったのよ」
サラちゃんはとても興奮している。
「ルシスちゃんのおかげで、大きな蛇の中には美味しい幻魔のコアがあるとわかったわ」
たまたま虹蛇の体内に幻魔のコアがあっただけであり、大きな蛇には必ず幻魔のコアがあるわけではない。サラちゃんは間違った情報をインプットしてしまった。
でも結果として虹蛇を倒したので結果オーライである。
「サラちゃん、すごいですわ。あんな大きな虹蛇を倒すなんて!」
「私にかかれば楽勝よ。私は精霊神最強ですからね」
サラちゃんは誇らしげに言う。
虹蛇は直接人を襲うことはないが、虹蛇の移動時にはかなりの損害がおきるので、村長は虹蛇が退治されたと聞いてホッとしている。
「サラ様、ありがとうございます。あなたのおかげで虹蛇の脅威がなくなりました」
「そうよ!私のおかげよ。もっと感謝しなさい」
サラちゃんは感謝されて天狗になっている。
「そういえば、報酬のヤミークラブをいただけるかしら」
サラちゃんは食べ物のことは絶対に忘れないのである。
「もう、お渡ししましたが・・・」
「えっ・・・どういうことなの」
「ごめんなさいサラちゃん。さっきみんなでヤミークラブ鍋パーティをしたので、もうヤミークラブはないのです」
私は素直に伝えた。
「ウソだぁーーーーーー」
大声で叫んだのはトールさんだった。
「ルシス、今の話しは本当か?」
「本当です。トールお姉ちゃん達がなかなか戻ってこないので、先にヤミークラブ鍋パーティーを開催しました」
「そんな・・・・」
ポロンさんがこの世の終わりかと思えるくらいの表情で倒れ込む。
「俺たちは、何しに出雲山にきたのだぁーーー」
トールさんは絶望的な顔をして大声で叫んだ。
「あなた達は自分たちだけヤミークラブを食べようと、八岐大蛇の家に戻ったのだから当然の結果よ」
ロキさんはきつい口調で2人に言った。
2人は自業自得だと認めて放心状態になる。
「もう、鍋は残っていないのかしら?」
サラちゃんは、まだ食べ足りないみたいなので、鍋が余っていないか確認する。
「もうほとんど残っていません。あとは残った汁を使って雑炊をするだけです」
ミコトさんが、申し訳なさそうに答えた。
「雑炊って何かしら」
「鍋の残った汁にご飯を入れて食べるのです」
「ご飯?」
私はこの世界に来て、まだ白いご飯を食べたことがなかった。なので、ご飯と言う言葉に敏感に反応してしまった。
「ご飯ってなんなのよ」
サラちゃんも知らないみたいである。
「何と言われても説明に困ります。一度食べてみてはどうですか」
「はーーーーい」
サラちゃんは何か食べれると思って素直に返事をした。もちろん私も気になったので食べることにした。
村長の家に戻ると雑炊の準備がされていた。
「すごくいい匂いですわ」
ヤミークラブを茹でた汁を使った雑炊である。これは美味しいのは間違いないのである。
雑炊の匂いに反応して意識が飛んでいた、トールさんとポロンさんが復活する。
「いい匂いがするじゃないか!」
「この香り、素敵ですわ」
「みなさん。雑炊が出来上がりました」
鍋の蓋をミコトさんが開ける。鍋からは、ヤミークラブのほんのり甘ーい香りが漂っている。トールさん達の目が爛々と輝きだす。
「この匂いでわかるぜ。美味しいのは確定だ」
「私もそう思いますわ」
「私もよ」
食欲の3魔王の意見が一致した。
私は日本で食べたことのなる雑炊と同じだと思って。この世界にはお米があるのだ。私は米がないと思って諦めていたので朗報である。
食欲の3魔王は、村長の家族を押しのけて雑炊に飛びかかる。あまりの迫力のため誰も雑炊に手をつけることができなかったのであった。
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