第292話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート4
「ごちそうさまです」
ゲリは満足そうに言う。
「・・・」
ジェミニたちは、ゲリの存在に気付いて呆然としている。ジャミニたちは、幼い女の子にはトラウマがあるので、不用意に怒ることができない。
「カプリコーン、真意を確かめろ」
ジェミニは、フェニのような化け物のように強い子供の存在を知っているので、慎重に事を構える。
「お嬢さん、何をしているのですか?」
カプリコーンもジェミニからフェニの強さを聞いているので、高圧的な態度はとらない。
「美味しい料理をありがとうございます」
ゲリはにこやかに返答した。
「その料理は私が作りました。美味しいと言われてとても嬉しいです」
ライブラは料理を褒められて満更でもない。
「食後のデザートも食べたいのだぁ」
ゲリは本能のまま行動をする。
「それなら、私の作ったフルーツの盛り合わせを食べてください」
カプリコーンは、ライブラの料理が褒められて、対抗意識が芽生えたのである。
『クンクン・クンクン』
ゲリはフルーツの匂いを嗅いだ。
「これは、まだ熟していないフルールだぁ〜。食べるには少し早いのだぁ。それに、食べれないフルーツもあるのだぁ」
ゲリは素直な性格である。なので素直に感想を述べた。
「やっぱりな・・・」
ジェミニは、カプリコーンの出す食べ物は一切手を出していない。それは、ジェミニの鋭い防衛本能が、カプリコーンの食事は危険だと察知しているのである。
「そんなはずはない」
カプリコーンは自分が集めてきたフルーツを食べ出した。
「歯応えもあり、渋みも多い、しかも全身が痙攣するほど美味しいではないか!」
カプリコーンは自分が集めたフルーツの盛り合わせを大絶賛した。
「カプリコーン・・・顔色が悪いぞ」
カプリコーンの表情がどんどん紫に変色してきた。
「少し、疲れが溜まっているみたいです。なので少し休ませてもらいます」
カプリコーンは、その場に倒れ込んだ。
「あんな物を俺に用意していたのか・・・」
ジェミニの顔は真っ青になる。
「あーあ、だから食べれないフルーツだと教えたのにぃー」
ゲリは倒れたカプリコーンの頭をナデナデしている。
「お嬢さんは、何しにこの森に訪れたのですか?」
ジェミニ達は、カプリコーンの体調よりもゲリの正体のが気になるのである。この森は魔獣の住処である。そんな危険なところに幼い女の子が1人でいるなんて、怪しすぎるのであった。
「お姉ちゃんを探しているのだぁ」
「ここは魔獣が住み着く危険な森です。もしあなたのお姉ちゃんが、この森に1人で訪れたのなら、もう生きていないでしょう」
ライブラは正体を掴めないゲリに丁寧に対応する。
「お姉ちゃんは強いので問題ないのだぁ」
ゲリは元気よく返事をした。
「そうなのですか。お姉ちゃんはどのような方なのですか?」
「綺麗な白い髪の背の高い美しい女性なのだぁ」
ゲリの姉の姿は、ゲリとは真逆なのである。
「・・・」
ジェミニたちには、その女性に心当たりがあった。
「ウルフキングではないのか・・・」
ジェミニが思わず口にした。
ゲリの姉はウルフキングことフレキである。
「知っているのだぁ?」
ゲリは嬉しそうに聞いた。
「噂でしか聞いた事ないのですが、私が以前住んでいた『ホロスコープ星国』で姿を見た者いるそうです」
実際はカプリコーンはフレキと遭遇している。しかし、ジェミニはフレキの妹であるゲリに関わり合うのは危険だと判断した。
「『ホロスコープ星国』はどこにあるのだぁ?」
「『ホロスコープ星国』は、この森を南に抜けるとたどり着くことができます。まずはカペラの町へ行って、情報を集めるといいと思います」
ジェミニはゲリを危険人物と判断したので、すぐにでもゲリと離れたいのである。
「ありがとうございます」
ゲリは、姉の情報を得ることができて、とても嬉しかった。そして、嬉しさのあまりにジェミニに抱きついた。
『ボキボキ・ボキボキ』
ジェミニは、ゲリのベアハッグの餌食になってしまった。ジェミニは悲鳴をあげることなく失神したのである。
しかし、ゲリはジェミニが失神したことに気付いていない。
「ジェミニ王・・・」
ライブラは、ジェミニの骨が砕ける音を聞いて、ゲリの恐ろしさにビビって動くことができない。
ゲリは、ジェミニを手放して、次はライブラに向かってハグをしようと駆け寄ってきた。
ゲリはあくまで、美味しい料理を食べさしてくれたライブラにお礼の証として、ハグをしようとしている。しかし、ゲリが両手を大きくあげて、ライブラに走り寄ってくる姿は、ライブラにとっては恐怖しかないのである。
「あ・・・ああ・・・あ」
忍び寄ってくるゲリを前にして、ライブラは恐怖のあまり言葉にならない悲鳴をあげる。
ゲリには全く悪意はない。なので、無邪気にライブラに抱きついた。
『ボキボキ・ボキボキ』
ライブラもジェミニと同様にゲリのベアハッグによって倒れ込んだ。
「ゲリちゃん!ゲリちゃん!」
ロキさんがゲリの名前を叫んでいる。
「ゲリ!ゲリ!」
トールさんの声も聞こえた。
私たちは、姿を消したゲリを探しているのである。
「あれ〜なんでみんな寝てしまったのだぁ?」
ゲリは、自分のせいで倒れ込んだことに気付いていない。
「おい!ゲリがいたぞ」
ライブラの横でちょこんと立っているゲリにトールさんが気付いた。
「ゲリ、先に行くなよ。みんな心配していたんだぞ」
トールさんがゲリを注意する。
「ごめんさい」
ゲリは素直に謝る。
「ゲリちゃん、無事でよかったわ」
ロキさんはゲリの姿を見て安心する。
「人が倒れていますわ」
ポロンさんが大声で叫んだ。
「ゲリ・・・ここで何があったんだ?」
トールさんは、周りを見渡すと3人の兵士が倒れていることに気づいたのであった。
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