第156話 妖精王パート26



 「サラは入れないみたいだぜ」


 「まだオーベロン王と和解ができていないので弾かれてみたいね」


 ティターニアは笑って答える。私たちは許可をもらってるので入ることができたのである。


 私は思った。ティターニアは、サラちゃんが入れないのを知ってて言わなかったのだろう。妖精界の妖精関係も複雑なんだと実感した。


 妖精の扉は大きな森につながっていた。ここが妖精が住む森ティルナノーグなのであろう。


 ティルナノーグの森に入ると、手のひらに乗りそうな小さな妖精のピクシー達が、私たちを出迎えてくれた。



 「妖精の森ティルナノーグへようこそ」



 私の周りに数体のピクシーが寄ってきて挨拶をしてくれた。



 「可愛いい」



 ロキさんがピクシーを見てキュンキュンしている。


 

 「先を急ぐぞロキ!」



 ピクシーを見てはしゃいでいるロキさんを、トールさんが襟首を捕まえて強引に連れていく。


 私たちは覚醒してもらうために来たのである。ピクシーと遊んでいる場合ではないのである。森の中を歩いていくと大きなピンク色の可愛いい神殿が見えた。あれが妖精の神殿なのであろう。



 「神殿がピンクなんてキュートだわ」



 ロキさんの目が爛々としいる。



 「そうでしょ。私がオーベロンに言ってピンク色にしてもらったのよ」



 神殿がピンクなのはティターニアの好みであった。


 神殿の中もハートマークや可愛いクマの絵などが描かれていて、まるで、子供の部屋のような可愛いデザインになっていた。



 「あっ、この熊さん可愛いわ。このうさぎさんも可愛いわ。このハートのお部屋も可愛いわ」



 ロキさんのテンションがダダ上がりである。ロキさんは普段は冷静沈着であるが、実際は可愛い物が大好きなのである。キュンウサギの時も、私の次に飛び出したのはロキさんである。



 「ロキさんは、この神殿の良さがわかるのね」


 「もちろんよ」



 ロキさんとティターニアは好みが同じである。


 ティターニア、可愛いものが大好きなので、オーベロンに命じて神殿をリフォームしたのであった。



 「ポロン、なんか落ちつかい神殿だな」


 「そうね、あまりにもピンクやハートが多すぎますわ」


 「仕方がないのよ。オーベロン王はティターニアには逆らえないのよ。私もこの神殿は苦手よ」



 ウンディーネも同意見であった。



 「ウンチャン、なんとかならないのか」


 「その呼び方はやめてよ」



 トールさんはNGワードを言ってしまった。



 「みんな、ウンチャンって呼んでいるぜ」


 「あれは、サラマンダーが勝手に呼び出したのよ。それがいつの間にか浸透してしまって困っているのよ」


 「そうなのか・・・ウンチャンも大変だな」



 全然理解していないトールさんである。


 どうでもいいやりとりをしているうちに、オーベロンが自宅軟禁されている部屋に着いたのであった。



 「この部屋にオーベロンはいるわ」



 ティターニアに案内されて部屋に入った。


 その部屋は、周り一面にイチゴの絵が描かれたとても可愛い部屋だった。イチゴの部屋で、オーベロンが正座をして私たちを待っていた。



 「待っていたぞ、ビッククラブは手に入れたのか?」


 「もちろんです。すぐに食べれるのようにきちんとカットしていますので、すぐに食べることができます」



 ビッククラブは、サラちゃんが海をお鍋の代わりにして茹であげたのを、私が調理用ナイフで食べれるところだけカットして、収納ボックスに保管していた。



 「それはありがたい」



 私の収納ボックスの料理はその時の状態のまま保管されるので、アツアツのビッククラブをオーベロンに皿に盛って渡してあげた。


 オーベロンは、嬉しさのあまり正座を崩して立ち上がって、ビッククラブに手を差し伸べようとした。



 「あなた!私の許可なしに立ち上がることは許しません」


 「ごめんなさい」



 オーベロンはすぐに正座をした。



 「美味しそうな、ビッククラブね。ウンチャン、私たちでいただきましょう」


 「私もいただいて、いいのかしら」


 「もちろんよ。あなたも被害者ですからね」


 「嬉しいわ」



 私が持ってきたビッククラブは、ティターニアとウンディーネが食べ出した。この場合はどうなってしまうのだろうか・・・


 

 「覚醒はしてもらえるのか?」



 トールさんはティターニアに聞いた。



 「もちろんよ。でも、オーベロンへのお土産は全部私がもらうわ。あなた、それでいいわよね」


 「もちろんです」



 オーベロンは浮気がバレたのでティターニアには逆らえない。


 オーベロンは私の方を見て、オーベロンの方へ来るように目くばせをした。


 私はティターニアにバレないようにオーベロンに近づいた。



 「妻にバレないようにシュークリームを渡してくれないか?」


 「あなた!何をしているの」


 「なんでもありません!!!」



 ティターニアは少しのスキも見せないのである。



 「ルシスちゃん、オーベロンに何か言われたのかしら?」



 ティターニアの顔が悪魔のように恐ろしい顔になっている。これは、ティターニアにバレないようにシュークリームをオーベロンに渡すのは不可能である。



 「ティターニアさん、シュークリームもお食べになってください。食後のデザートとして最適です」


 「あら、嬉しいわ。これが、オーベロンが欲しがっていたシュークリームね。とても美味しそうだわ」



 私はティターニアにシュークリームを渡すことにした。そして、オーベロンの方を見ると、オーベロンはこの世の終わりのような顔をして、瞳から涙を流しているのであった。これが浮気をした者の報いであった。


 『みんさん浮気は絶対にしてはいけません。オーベロンのようになってしまいます』


 と注意を促す小説ではないので、私はティターニアが美味しそうにシュークリームを頬張っているスキに、オーベロンに近寄ってシュークリームを一つ手渡したのであった。


 オーベロンはもう2度と浮気はしないと言ってこっそりとシュークリームを食べたのであった。



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