第157話 妖精王パート27



 「素敵な食べ物でしたわ。それでは約束通り夫に覚醒をさせるわね」


 「お願いします」



 主導権はティターニアにあるみたいなので、私はティターニアにお願いした。



 「あなた2人の魔石を覚醒させなさい」


 「わかりました」



 オーベロンはシュークリームを食べれたので元気よく返事した。



 「あなた・・・何かあったのかしら?みょうに嬉しそうね」


 「そ・そ・そんなことはありません。お二人を覚醒できるのでついテンションが上がっただけです」


 「そうなの・・・・」



 ティターニアはオーベロンをジーーーと見つめる。


 オーベロンの額から滝のように汗が流れる。



 「まぁ、いいわ。早く2人を覚醒してあげて」



 オーベロンはホッとした。しかし、ティターニアは気づいていたのであった。オーベロンがシュークリームを食べたことに。それはオーベロンの口元にカスタードクリームがついていたからであった。


 ティターニアは私に目くばせをして、一個くらいは許してあげるわと合図をしてくれた。


 私はホッとした。オーベロンの口元にカスタードクリームが付いているのに気付いてた時は冷や汗ダラダラであった。しかし、ティターニアが許してくれてたので助かったのであった。


 これでやっとロキさんとトールさんの魔石を覚醒することができるのである。



 「ティターニアさんどこで覚醒をするのですか」


 「このイチゴちゃんの部屋でおこなうわ」



 そのままのネーミングでありかなり恥ずかしい名前の部屋であった。



 「このイチゴちゃんの部屋でできるのですか?」



 私は魔石の覚醒は、もっと神秘的で厳かな台座のある部屋でおこなわれると想像していた。



 「この部屋が最適ですわ」


 「なぜですか?」


 「だって、可愛いいお部屋だからよ」



 ただのティターニアの好みであった。



 「今からオーベロンに準備をさせるわ。それまでイチゴちゃんのお部屋でゆっくりとしといてね」



 私たちはイチゴちゃんの部屋で待つことになった。



 「ポロン、この部屋は落ち着かないな」


 「そうね。可愛すぎて落ち着かないわ」


 「2人とも何を言っているのよ。とても素晴らしい部屋じゃないのよ。私はイチゴに囲まれてとても幸せな気分よ」


 「さすが、ロキさんね!本質がわかる人にはこの部屋の良さがわかるのよ」



 ティターニアが、自慢げにこの部屋の説明をする。



 「一見、全て同じイチゴに見えるけど全て大きさが違うのよ。私はイチゴのリアリティを出すためにあえてそうしたのよ」


 「わかりますわ。イチゴも生物と一緒で、一つとして同じ形の物は存在しないわ。同じイチゴをただ描いただけでは、イチゴの美しさ可愛さは表現できませんわ」


 「そうなのよ。それが誰もわかってくれないのよ。ロキさん、あなたのような人が訪れることを、私はずっと待っていたのよ」



 ロキさんとティターニアは、オーベロンが戻ってくるまで、イチゴちゃんの部屋の話しで盛り上がっていた。




 「お待たせしました。オーベロン特性ジュースをお持ちしました」



 オーベロンは大きなグラスを二つ持って現れたのであった。


 オーベロンの持ってきた大きなグラス中には、キラキラと輝くピンク色をしたジュースが入っていた。



 「ジュースなんて頼んでいないぞ」



 トールさんが面倒くさそうに言う。



 「素敵な色のジュースですわ」



 ロキさんが目を爛々として言う。



 「2つしかないのですか?」



 ポロンさんが私の分はないのかしらと言いたげに言う。



 「これは覚醒ドリンクのミラクルイチゴちゃんジュースです」


 「これを飲むのか?」



 トールさんはとても嫌そうだ。




 「素敵ですわ」



 ロキさんはすぐにでも一気飲みしてしまいそうな勢いである。



 ポロンさんは、自分の分がないのでしょんぼりとしている。



 「これを飲めば魔石を刺激して、覚醒者なら魔石は覚醒して2色の魔石に変わります。もし、覚醒者でなければ、魔石は白く濁り無属性になってしまいます」


 「ルシス、危なくないか!!!俺は本当に覚醒者なのか?」



 トールさんはかなりビビっている。



 「いただきまーーーす」



 いつもは冷静沈着なロキさんが、躊躇いもなく一気に飲み干した。



 「うーーーん・・・とてもまずいですわ。でもピンク色なので許してあげますわ」



 ロキさんのジュースの味の感想は、とても飲めるような味ではないというものであった。


 見た目はピンク色で、イチゴジュースみたいで美味しいそうである。しかし、その実態は生臭くて、変な味のするジュースであった。


 しかし、ロキさんは大好きなピンク色なので、簡単に全て飲み干したのであった。



 ポロンさんは、本当にまずいのか、トールさんのミラクルイチゴちゃんジュースを一口だけ、飲もうとしたが、強烈な匂いがした為慌てて逃げ出した。



 「私は覚醒者じゃなくてよかったわ」



 ポロンさんはホッとした。



 「こんなの飲めるわけないだろう」



 トールさんが発狂している。



 「トール、味は最悪ですが、あの可愛いピンク色を眺めながら飲むと簡単に飲めるわよ」



 ロキさんがアドバイスするが、トールさんには絶対に無理なアドバイスであった。


 トールさんは、何度もグラスも持って飲もうとするが、グラスに顔を近づけると強烈な匂いがして、グラスに口をつけることさえできない。



 「ミラクルイチゴちゃんジュースには何が入っているのですか?」



 私はオーベロンに聞いてみた。



 「このジュースには私の魔力が込められているのだよ。本当は透明な水のような感じだったのだが、妻のアドバイスでいろんな果物や液体のなどを入れて、やっと綺麗なピンク色のジュースに仕上げることができたのだよ」



 私は思った。余計な物をたくさん入れたからこんな不味いジュースになったのではないかと・・



 「すごくいい色だと思わないかしら」



 自慢げにティターニアは言う。


 ティータニアには、余計なことを言わない方が良いと思って、私は指摘することができなかった。



 結局、トールさんは何度もチャレンジをしたが、ミラクルイチゴちゃんジュースを飲むことができなかったのであった。






 

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