第295話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート7



 「ルシスちゃん、さっきの悪人顔の人が、『ホロスコープ星国』でお姉ちゃんを見たと言っていたのだぁ」


 「そうなのね。それなら、さっさと森を抜けて、「ホロスコープ星国」にいきましょう」


 「うん」



 私は、空を飛んですぐに森を抜けることができるだが、ゲリがいるので飛ぶことはできない。



 「ルシスちゃん、私の背中に乗るのだぁ」



 ゲリは人間の姿から、真っ黒な綺麗な毛並みの狼に変身した。



 「ありがとう」



 私はゲリの背中に乗って、森の中を颯爽と駆けだした。森を熟知していない者が、この森を抜けるのは2日間はかかると言われている。ジェミニ達は、森の中を彷徨っていたので、さっきの場所に来るのに3日間も費やしたらしい。しかし、ゲリの超高速のスピードと、木を押し倒しながら進む猪突猛進走行により、2時間後には森を抜けることができた。


 もちろん、私はゲリの背中に乗っているのは危険だとすぐに察知して、結局空を飛んで森を抜けたのである。



 「ルシスちゃん、なんですぐに降りたのだぁー」



 ゲリが不貞腐れている。



 「ゲリちゃんが、木を押し倒して進むからよ」


 「だって、木が私の邪魔をするのだぁー」



 ゲリは自分のスピードも制御できない。



 「ちゃんと避けながら走らないと危ないです」


 「私は平気だぁーーー」



 ゲリの体は、どんな攻撃も無効にする『鉄壁』とい神獣スキルを持っている。



 「私の肌はデリケートなので、木にぶつかったら痛いのです!」



 私はいつ攻撃をされても大丈夫なように、ライトシールドを張っているので、木に当たっても問題はないのだが、森を破壊するのに加担をしたくないのである。



 「ルシスちゃんの肌がデリケート・・・・面白いのだぁ」



 ゲリは大声で笑う。ゲリのどんな攻撃をも跳ね返す私の強さを知っているので、肌がデリケートで、木にぶつかりたくないという意見が面白いのである。



 「もういいです。それよりも先に進みましょう」



 これ以上無駄話をしても仕方ないので、私たちは先を進む事にした。


 

 「ルシスちゃん、何か見えるのだぁ」



 私は、ゲリに乗って平坦な道を進んでいた。すると道を外れた草原で、大きな穴から体を半分だけ出した大きな羊の魔獣の姿が見えたのである。



 「大きな羊の魔獣だね。あの大きな穴が住処なのかな?」


 「そうなのだぁ。あの穴に誘い込んで、私を食べよとしているのだぁ」



 ゲリは、戦闘モードに入った。



 「待って、ゲリ・・・なんか様子がおかしいよ」



 私は羊の魔獣をじっくりと観察してみた。すると羊の魔獣は大声で泣いているのであった。



 「本当なのだぁ。泣いているみたいだぁ」



 ゲリも気づいたのである。



 「ゲリは魔獣の言葉がわかるのよね」


 「うん」


 「ちょっと、様子を伺ってきてよ」


 「うん」



 ゲリは私を降ろして、羊の魔獣のところへ行った。



 「何をしているのだぁ」


 「やっと、魔獣が助けにきてくれたよ」


 

 羊の魔獣Aが言った。



 「助ける?どう行く事だぁ?」


 「ウルフキングに、この穴に埋められたのだよ」



 羊の魔獣Bが言った。



 「ウルフキング?」


 「お前は魔獣のくせに、ウルフキングをしらないのか?」



 羊の魔獣Cが言った。


 ゲリは、ジェミニとの会話中にウルフキングをいう言葉を耳していたが、もう忘れているのである。



 「どんな魔獣なのだぁ」


 「恐ろしい魔獣だ。目は鬼のように真っ赤に輝いて、手には鋭い刃のような爪を持ち、全身から悪魔のような黒いオーラで包まれている狼の魔獣だ。あいつは悪魔のようなずる賢い汚れた生き物だ。次に出会ったら俺たちが成敗してやるぜ」



 羊の魔獣Dが言った。



 「それは、恐ろしい魔獣だぁ」



 大羊王には、フレキの姿がそう見えたのである。しかし、あまりにも特徴に悪意があるので、ゲリはフレキだと気づく事ができないのである。



 「頼む。ここから出してくれ」



 羊の魔獣Fが言った。



 「ゲリちゃん、魔獣さんはなんて言ってるの?」



 私は、遠くで様子を見ていたが、ゲリが話し込んでいるので、気になって様子を伺いにきたのである。



 「羊さんは、狼の恐ろしい魔獣に穴に埋められたのだぁ」


 「狼の恐ろしい魔獣・・・」



 私は、ゲリの言葉にピンっときた。



 「もしかして、ゲリちゃんのお姉ちゃんじゃないのかな?」


 「お姉ちゃんは、恐ろしい魔獣じゃないのだぁ!」



 ゲリが頬を膨らませて怒る。



 「わかっています。もしかしたら、その羊の魔獣が悪さをしたから、ゲリちゃんのお姉ちゃんが羊の魔獣を穴に埋めたのだと思うのです」



 そのように考えるのが妥当であろう。



 「そうなのだぁ」



 ゲリが納得した。



 「ゲリちゃん。お姉ちゃんがどこに行ったか聞いてよ」


 「わかったのだ」




 「ウルフキングは、どこに向かったのだぁ」



 ゲリは大羊王に聞いた。



 「あの恐ろしい化け物は、南西の方に向かっていったはずだ」



 羊の魔獣Jが言った



 「お姉ちゃんは化け物じゃないのだぁ!!」



 ゲリは、お姉ちゃんを化け物扱いされて、怒りが込み上げてきた。



 『ドスン』



 ゲリは、怒りを制御できず地面を殴りつけたのであった。



 『ヒューーーーン』



 ゲリが大きく地面を殴りつけた反動で、大きな穴に埋まっていた大羊王が、穴から飛び出して天高く飛んで行ったのであった。



 

 


 

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