第294話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート6



 「あっ・・・」



 カプリコーンは、やってしまったと後悔した。



 「カプリコーンは、緊張すると笑うクセがあるのです。あいつのことは気にしないでください」



 ライブラが、必死に誤魔化そうとする。



 「そうです。私たちは本心を言っているのです」



 ジェミニも必死である。



 「ロキ、こいつらの話は信用できないぜ」



 トールさんは、完全にジェミニ達の話は嘘だと判断した。



 「そうね・・・私もジェミニ王を信用したかったのですが、カプリコーンさんの態度を見ると、明らかにあなた方の証言は嘘だとわかりました」



 ロキさんはジェミニ達の言葉を信じた事を後悔した。



 「申し訳ない。あまりにも似合わない事を言ってるので、笑いを堪えることができなかったです」



 カプリコーンは潔く笑った理由を答えた。



 「お前のせいで、俺たちの作戦が失敗したではないか!どうやって責任を取るのだ!」



 ライブラがキレた。



 「やっぱり悪人だったのね!」



 ポロンさんが指摘する。



 「俺の国をどう支配しようと文句を言われる筋合いはない。あのガキさえいなければ、こんな事にはならなかったのだ」



 ジェミニも似合わない態度に疲れていた。なので、本来の姿に戻ったのである。



 「あなたの国で何が起こったのかは知りませんが、あなたの亡命を見過ごすわけにはいきません」


 「ロキ、こいつらをどうするのだ?」


 「私たちでは判断できないわ。3人を拘束して、ディーバ様のところへ連れていきましょう」



 相手は元国王である。どうのような経緯で、国を追われたのか不明であり、何を企んでるのか分からないので、このまま放置することはできない。ロキさんは、3人を拘束して、『オリュンポス国』に何しにきたのか?理由を明らかにしないといけないと判断した。



 『メンタルクラッシュ』



 私は7大天使様から絶大なる能力を授かった。その7大天使様の1人カマエル様の能力(精神を解放できる力=相手のステイタスを変えることできる)の応用魔法のメンタルクラッシュをジェミニたちにかけた。メンタルクラッシュは、戦意を喪失させておとなしくさせる魔法である。


 ジェミニ達は『メンタルクラッシュ』をかけられて、戦意を失いポカーンとしている。



 「ルシスちゃん、何かしたのかしら?」



 3人が急におとなしくなったので、ロキさんが私に尋ねる。



 「戦意を喪失する魔法をかけました。1日くらいはおとなしくしていると思います。その間にサラちゃんを呼んで、ディーバ様のところまで運んでもらったらいいと思います」


 「助かるわ」



 ロキさんが笑顔でお礼を言った。



 「ルシス、えげつない魔法を使えるのだな!」



 トールさんは軽蔑の眼差しで私を見ている。



 「いろんな魔法を使えます」



 私はニコッと笑った。



 「ルシスちゃんを怒らせないようにしないと・・・」



 ポロンさんは小声で呟いた。



 「ポロン、サラちゃんを呼んでくれるかしら?」


 「わかったわ」



 ポロンさんは精印にささやく。



 「サラちゃん、おやつの時間よ。ルシスちゃんが美味しいプリンを用意してくれたわ」


 「わーーい。わーーい。おやつの時間だぁーー」



 サラちゃんがポロンさんの精印から、嬉しそうに飛び出してきた。



 「ルシスちゃん、あとは任せたわよ」



 ポロンさんは、さっとロキさんの後ろに隠れた。私は、いつからそんな呼び出し方に変わったのかポロンさんに尋ねたかったが、そんな時間はないのである。それは、サラちゃんが、目を爛々と輝かせてプリンを待っているからである。


 私は、収納ボックスからプリンを取り出した。



 「サラちゃんどうぞ!」


 「ヤッタァーーー」



 サラちゃんは嬉しそうにプリンを食べる。



 「サラちゃん、お願いがあるのです」


 「何かしら?」



 サラちゃんはプリンを頬張りながら私の方を見た。



 「今から、ラディッシュの町まで、人を運んで欲しいのです」


 「1人プリン3つで手をうつわ」



 サラちゃんは、懲りずに運賃を請求してきた。



 「サラ、運賃は取らないはずでは?」



 トールさんがサラちゃんに物申す。



 「仲間からは運賃は取らないわ。でも、私が運ぶのは、そこにいるヘンテコ3人組でしょ」



 サラちゃんはプリンを頬張りながら、周りの状況を瞬時に判断した。サラちゃんは、なぜ自分が呼ばれたか、確認を怠らないようにしている。それは、命を左右する冒険者の旅に同行するには当然のことである・・・と言いたいところだが実際は違った。ただ単純に食い意地が張っているので、難癖をつけてたくさん美味しい食材を食べたいだけである。精霊神最強のサラちゃんに、危険な場所などないのである。



 「わかりました。3人分なのでプリン9個を用意します。そして、特急便で対応してくれたら、『大魔王』を3本お渡しします」



 私は、くだらないやりとりに時間をかけたくないので、サラちゃんの要求を許諾した。そして、できるだけ早く運んで欲しいので、追加報酬も出す事にした。



 「私に全て任せてよ!」


 

 サラちゃんは満面の笑みで了解した。



 「ロキお姉ちゃんに、『大魔王』を渡しておきますので、ラディッシュに町に着いたら、サラちゃんに渡してください」


 「わかったわ。サラちゃんがサボらないように私が監視をすればいいのね」


 「俺たちは『ふわりん』に乗って後を追いかけるぜ」



 『ふわりん』とは、鬼の島で手に入れた雲の乗り物である。



 「ルシスちゃんは飛んで行くのかしら?」


 「私は、ゲリちゃんのお姉ちゃんを一緒に探したいと思います」



 私はゲリを1人にするのは危険だと思った。もちろん、ゲリ本人ではなく、ベアハッグの犠牲者を食い止めるためである。



 「それがいいと思うわ」



 ロキさんも理解してくれた。



 「ロキさん、しっかりと3人を縛っておくのよ。私の全速力で落ちないようにね」



 ロキさんは3人をカゴに縛り付けて、サラちゃんのカゴに乗った。



 「行くわよ」



 サラちゃんは、全速力でラディッシュの町に向かった。



 「俺たちも行くか?」


 「そうですね」


 「ルシス、気をつけるのだぞ」



 トールさんが私の事を心配してくれている。



 「はーーい。気をつけます」



 こうして、ロキさん達は、ジェミニを連れてラディッシュの町へ向かった。そして、私とゲリは『ホロスコープ星国』へ向かうのであった。

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