第279話 ホロスコープ星国 パート56


 「重いですぅ〜。重いですぅ〜」



 ヴァンピーがテーブルの下を覗き込むと、悪夢にうなされている私を発見した。



 「フェニちゃん、何をしているのよ!」



 ヴァンピーは呆れた顔で私を見ている。



 「フェニさんに何かあったのですか?」



 スコーピオも真っ青になって、テーブルの下を覗き込んだ。



 「フェニちゃんのお腹を見てみなさいよ。ただの食べ過ぎで、苦しんでいるだけよ」



 ヴァンピーは、冷めたい目で、私が悪夢でうなされている顔をじっとみている。



 「フェニさん・・・あなたはそこまでして、ジェミニ王達の食事を邪魔をしたかったのですね」



 スコーピオの瞳からは涙がこぼれ落ちるのであった。私の勇気ある行動に感動しているのである。



 「ただの食いしん坊よ」



 ヴァンピーの私に対する評価はブレない。



 「あなたは何も理解していないのです。フェニさんは、胃袋の限界を顧みず、ジェミニ王達の食事を全て完食したのです。あんな小さな体でたくさんの食事を食べるのは、かなり危険であったと思います。フェニさんの勇気ある行動に、私は賛辞を送りたいです」



 スコーピオの私に対する評価もブレないのであった。



 「食事を邪魔するのなら、食べなくても捨てれば良いのですわ」



 ヴァンピーは、スコーピの私への評価を真っ向から反論する。



 「あなたは何もわかっていないのです。フェニさんは、料理人が精神込めて作った料理を、粗末に扱うことなどできないのです。なので、自分の胃袋を犠牲にしてでも、料理人が作った料理を食べ尽くしたのです」



 スコーピオもヴァンピーの意見を真っ向から反論する。



 「もう、いいわ。それよりもフェニちゃんを起こしましょう」



 ヴァンピーは、いくら言ってもスコーピオの考えは変わらないと諦めたのであった。



 「フェニさん起きてください」



 優しく私を起こそうとしてくれるスコーピオ。



 『パチ・パチ』


 「早く起きなさい!」



 私の頬を叩きながら起こそうとするヴァンピー。


 ヴァンピーは、私がすぐに起きないの事を知っている。しかも、ライトシールドを張って、完全安眠体制を取ることも知っている。なので、素早く起こさないといけないので、乱暴に私を起こすのであった。


 私は、悪夢にうなされているので、ライトシールドを無意識に張ることはしなかった。なので、ヴァンピーの平手打ちの効果によって、目を覚ましたのであった。



 「ベガちゃんが私をいじめるのですぅ〜」



 私は、まだ悪夢が続いていると思って、ヴァンピーに助けを求めたのであった。



 「フェニちゃん、しっかりするよ。ベガちゃんはフェニちゃんをいじめたりしないわよ」



 ヴァンピーは悪夢で泣いている私に、優しく声をかけてくれた。



 「私がダイエットと言って、ベガちゃんに過酷ことさせたから、怒っているのですぅ〜」



 私は、ベガちゃんを怒らせる原因に心当たりがあった。



 「フェニちゃん、しっかり目を覚ますのよ。あなたは、食べ過ぎで悪い夢を見ていたのよ」



 ヴァンピーは、まだ寝ぼけている私の肩を揺さぶって、目を覚まそうとしているのである。



 「はっ、ここはどこなの・・・」



 私の意識ははっきりとした。



 「あなたは、地下牢を抜け出して、今は食堂にいてるのよ」



 ヴァンピーは状況を説明した。



 「そうです。私は楽園にいたのですぅ」



 私は、ばっちりと目を覚ましたのであった。



 「フェニさん、ご無事で何よりです」



 スコーピオは安堵の笑みを浮かべる。



 「ここにいては危険だわ。一旦私の屋敷に戻りましょう」


 「はーい」



 私は元気よく返事をした。しかし、私はたくさん食べ過ぎたので、思うように動けないのであった。



 「フェニちゃん、何をそんなにぐずぐずしているの!」



 ヴァンピーは一刻も早く屋敷に戻って、王都の門に戻らないといけないのである。なので、膨れたお腹を抑えながら、トロトロと歩いている私に、少しイライラしているのであった。



 「お腹が重くて、うまく歩けないのですぅ」



 私は、お腹の重みでフラフラなのであった。



 「フェニさん、私の背中に乗ってください」



 スコーピオは、私に身を案じて、私をおぶってくれるのであった。



 『ズドン』



 スコーピオの背中に激しい衝撃がのしかかる。



 『スター』『剛腕』『倍倍』



 スコーピオは、私のあまりの重さに耐えきれないと判断して、『スター』を発動して、筋力を最大限に強化したのであった。



 「急ぎましょう」



 スコーピオは、鉛の塊のように重くなった私をおぶって、ヴァンピーの屋敷まで、全速力で移動したのであった。


 ヴァンピーの屋敷に着く頃には、スコーピオは、激しい戦闘をしたかのように、ズタボロの体になっていたのであった。



 「スコーピオ、ご苦労様です」



 ヴァンピーがスコーピオの労をねぎらう。



 「ありがとうございます。フェニさんを無事に届けることができたので、私は満足しています」



 スコーピオは、そう言うと、その場に倒れ込んでしまったのであった。


 スコーピオが、こんなに激しく体力を消耗しているのには原因があった。それは、私が、スコーピオの背中の上で、激しく暴れたからであった。私はまた競争魂に火がついて、ヴァンピーよりも早く屋敷に辿り着きたくなったので、スコーピオの背中の上で、激しく腕を振り回しながら、スコーピオに1番でゴールするように、けしかけたのであった。



 スコーピオは、追手が来ていると勘違いして、全力で走った。そして、私の指示を聞いて、激しく飛び上がってり、壁をよじ登ったりして、追っ手を巻こうとしてくれた。しかし、本当は、私は最短距離を通りたかったので、無謀な道を選んでいただけである。


 そんな無茶振りを全て答えてくれたスコーピオは、屋敷にたどり着く頃には、体力を消耗しきって、体力の限界を超えていたのであった。


 それを後ろから見ていたヴァンピーは、スコーピオの頑張りに感銘を受けて、労をねぎらったのであった。



 


 

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