魔王の子供に転生した女子高生、悪魔が怖くて魔界から追放される。しかし天使様に助けられて、人間界で無双する。

にんじん太郎

第1話 魔王の子になる



 魔界にて魔王の子供が生まれた。


 魔王は200歳になると子供を作り、子供を作り終えると魔界から冥界へと旅立つ。魔王の子供は必ず3つ子が生まれ、その中の1人が15歳になると魔王として魔界に君臨する。この魔王不在の15年の期間は、魔王妃が魔王補佐官として魔界の秩序を守りながら3人の子を育てる。

 

 

 私は魔王の長女としてこの魔界に転生した。3つ子のうち1番上の子が、魔王の強大なる魔力を受け継ぐので私が魔王最有力候補であった。私は3歳の誕生日の日に、突然前世の記憶を思いだした。



 私は17歳の時に、異世界小説の定番である道路に飛び出した子供を助けた時に、車に跳ねられて死んでしまった。しかし、良い行いをしたはずなのに、私が死後に連れて行かれたのは地獄であった。思い出しただけでも恐ろしい顔の閻魔大王の裁きによって、私の地獄行きが決定した。


 閻魔大王は死者を大きな鏡の前に立たせて、生前の悪行を鏡に写し出す。そして、それを死者に見せて真実か問うのである。閻魔大王に嘘は通じない。そこでいいわけでもしたら、地獄でも過酷な場所に送られてしまう。


 鏡が写し出した私の悪行は・・・・なんと、お姉ちゃんが楽しみに冷蔵庫に保管していたプリンを食べている姿だった!!!



「お前は姉が大事に冷蔵庫に保管していたプリンを食べたのだな?」



 閻魔大王に言い訳をしてはいけない。



 「はい、そうです」



 私は素直に真実を述べる。



 「鬼卒ごくそつ、こいつを無間地獄へ連れて行け!この地獄で1番の苦痛を与えてやるのだ!」



 閻魔大王は顔を真っ赤に染めて怒号を上げて判決を下す。

 鬼卒とは閻魔大王の配下であり刑罰の執行官である。私は鬼卒に引きずられながら閻魔大王の広間から連れ出された。



 「お前も運が悪いよな。閻魔大王様はプリンが大好物なんだよ。だから、プリンを黙って食べるなんて許せなかったのだろう」

 「私はそんな理由で地獄へ行くのですか?」


 「そうだ。閻魔大王様の判断は絶対だ。しかし、お前は書類によると事故から子供を救った善人なので、天国に行くはずだった」

 「・・・・・」



 言葉にならない。



 「でも安心しろ、今回は閻魔大王様に内緒で、お前の地獄行きはなかった事にしてやる」

 「ありがとうございます。」


 「しかし、問題がある。いまさら天国へ送ることはできないのだ。そこでだ、お前を異世界へ転生してやろう」

「本当ですか!」



 異世界の小説が好きな私にとって、異世界への転生は天国に行くよりも嬉しい事だ。もしも私のわがままを聞いてもらえるならば、お貴族様に転生して、チート能力を授かり異世界の勇者になりたいと思った。



 「あの~転生先はお貴族の令嬢で、時を止めれるようなチート能力が欲しいです」



 私は思い切って鬼卒に自分の要望をお願いした。



 「無理だ。転生先は魔界になる。その代わりに魔王の子に転生してやろう」

 「・・・・・」



 言葉にできない。

 私は勇者じゃなくて魔王の方だった。


 

 「なんだ、その驚いた顔は。ここは地獄だ。人間へ転生させるのは不可能だ。嫌なら無間地獄で永遠に苦痛を受け続けるか?」

 


 私は地獄で苦しみ続けるよりマシだと思い渋々了承する。



 「転生させてやるが、生まれてすぐに記憶があるといろいろ大変だろう。なので、3歳になったら記憶が蘇るようにしといてやる」


 

 そして私は魔王の子として転生したのであった。

 


 

 魔王の子は3歳から5歳までの間に、魔界のあらゆる知識、戦闘訓練、魔力操作など、魔王になる為の英才教育を受ける事になる。特に魔王に1番近いと言われる私には、魔王妃直々から教育をうけ、弟2人とは雲泥の差をつける知識、魔力、教養、戦闘力を身につけてしまったのである。


 そして、魔王の子は5歳の誕生日の日に、悪魔と契約して絶大なる能力を手に入れることができる。その為どれだけ大きな能力を持つ悪魔と契約する事が、魔王になるためには重要なのであった。


 私のお父様、すなわち先代の魔王は3人の悪魔と契約していた。そして、その中には悪魔の王サタンがいた。




 そして5歳の誕生日を迎えた。悪魔と契約するこの運命の日、私は魔王城の地下にある魔王書庫に幽閉される事になる。



 どうしてこうなった!





 「ルシスちゃん、ついに悪魔と契約する日がきたわね、あなたの魔力量なら、お父様より偉大な魔王になれるはずよ」



 お母さまは、私に優しく微笑みながら言ってくれた。


 私の名はルシス。3人の魔王の子の長女であり、魔王最有力候補である。お母さまは、女系が魔王になることを望んでいたので、私には対する期待感は、かなり大きいのである。



 「はい、お母さま。素敵な悪魔様と契約して、私が魔王の座につきますので安心してください」



 ・・・とは言ったものの、私には不安しかない。私に悪魔と契約なんてできるのかしら?魔王の子に転生したが、前世の記憶があり、悪魔との契約はとても緊張してしまう。



 「天使なら嬉しかったのになぁー」



  と心の中で呟いていた。



 「カァラァ、リプロ、お姉ちゃんに負けないように、偉大な悪魔と契約するのよ」


「はい、お母さま。お姉ちゃんには敵わないので、お姉ちゃんの力になれるように、偉大なる悪魔様と契約してきます」



 カァラァ、リプロは私の二人の弟である。私より魔力量は少ないが、二人ともかなり魔力量の持ち主である。この二人のどちらかが魔王になっても、魔界をバランスを保てるだけの能力は持っている。


 悪魔との契約の儀式は、魔王城にある【契りの間】で順番に行われる。順番はリプロ、カァラァ、そして私である。



 「最後は嫌だなぁー」



  とまた心の中で呟いた。私は嫌なことは、最初に済ませたい派である。


 

 「お母様、いってまいります。」



 リプロは、自信溢れる表情で契りの間に進む。偉大なる悪魔様と契約して、お姉ちゃんの力になることを望んで。



 「いってらっしゃい。がんばってくるのよ」



 

 「はぁー」



 私はついついため息がでる。悪魔との契約ってどんな事をするのだろう。お母さまに聞いても儀式の内容は他言できないらしくて教えてくれない。簡単なものとは、お母さまは言ってはいたが、不安でしかない。だって悪魔だよ!


30分後、リプロは契りの間から出てきた。



 「お母さま、3人の悪魔様と契約できました。この能力を自在に使えるように、これから日々訓練し、お姉ちゃんの配下として頑張ります」


 「よくやったわ。3人の悪魔様の能力を自分のモノにして、ルシスの力になれるように、頑張るのよ」


 「はい。お母さま」



 次はカァラァの番である。カァラァもリプロと同様に3人の悪魔との契約に成功する。



 「僕もお姉ちゃんの力になれるように頑張ります」



 と嬉しそうにカァラァは答えた。


 2人の弟は、お姉ちゃん大好きっ子に育ってしまっている。魔王はお姉ちゃんになってもらって、2人はお姉ちゃんのサポートするのが、2人の弟の目標になっているのである。


 それは、そうなるように、お母さまが育てたというのが、正解なのかもしれないが。




 そしてついに私の番が来てしまった!



お知らせ・・・ルシスのイメージ画像が近況報告で見ることができます。

    ・・・カクヨム等で連載している世界ファンタジーの紹介動画を作成しています。よろしければ、一度ご視聴してください。近況報告でリンクを貼っています。

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